2022/6/1『コーリング』

奇妙な測量が行われている
わたしの街のはずれ
古代の都市が発掘されている高台のあたり
東の空に向けて銀色のアンテナが立てられて
昇り来る朝日から受け取る
「非線形の暗号」が果たして何を意味するのか
王族たちは華麗な馬車から降り立ち
科学者たちの説明を聞いている
ワインを片手に、ご当地自慢のソーセージを頬張りながら
けだし民族の未来について、わたしは考えることもない
それでも宇宙船の岩に刻まれた形は
かつての来客を示すのだろう
言葉からも我々に示されているのは
植物をはじめ、水中の生命体の進化と関わる
暗号の存在と遺伝子の分析から見えて来る
知的生命体の輪郭・もしくはアンドロメダからの送信
ガルバー光線は五次元の時間的制約を越えて
この街の迎賓館の磨かれて光る窓
そこからわたしが見るものは海とそのはるかな先に浮かぶ
ステーション、やがて星は華麗な墨汁の夜とともに
飲んだくれてベッドに倒れ込む王族たちの
香水は「カシオペア」と呼ばれているもの
わだかまりを捨てて
愛らしいペットの「生物」とともに
眠ることとしよう、朝日が昇るまで
わたしの街の不可思議な
夜の声は今夜も
ピアノのように
奏でる。