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この気持ちの正体は

彼氏に腹が立つ。友達に腹が立つ。
こんなに腹が立っているのに、
いっそ嫌いだと切ってしまえばいいのに、
それができない。
上り調子の時は良いところしか見えないからそれが崩れた時に嘘つきだ、裏切られたと思ってしまう。はじめから期待をしなければ良いと言うのは簡単だけど、どうしてもできない。腹が立つけど諦めたくないし諦めてほしくない。


この春から高校生になる私は、中学校3年間の中で一度だけ人と付き合ったことがある。中学生あるあるですぐに別れてしまったけれど。その人は私にすごい勢いで言い寄って来た。言い寄られる経験があまりないあたしはふらふらと嬉しいな、と思いながらすぐに付き合った。でも彼は付き合ってしばらくしたら素っ気なくなり、まだ彼を好きだったあたしには「なんで?」という気持ちと裏切られたという感情だけが残った。あたしが彼の気持ちを取り戻す方法を考えている間も彼は友達と遊んだり、新しい女の子に言い寄ったりしていたのかもしれない。今思えばばかばかしくて嫌になったし、当時友達にも別れれば良いのにと言われた。でもどうしても終わらせるのは怖かった。彼は他の人がくれない言葉をくれたし、どうしてもまだ最初の頃の記憶を過去のことにしたくなかった。大好きで腹が立つから彼を責めるような気持ちだった。でもあたしは気づいていた。この時のあたしは段々と大好きな彼と別れたくないという気持ちより、彼がくれた言葉の良い面だけに目を向けてふらふらとついていった挙句に振られたばかな女の子になるのが嫌で、彼にしがみついているような感覚だった。「大好きだからもう一度振り向いて欲しい」という正しそうな理由で悲しんでいる振りをして、ださい自分を必死に隠そうとしていたあたしは嘘つきなのかもしれない。別れた後に悲しくはなかったけど、他人から見た自分が悲しく見えないように過ごしていた。今もそうだ。その人を見たら私は貴方がいなくても充実しているんだよ、と見せようとしてしまう。どこまでもかっこうが悪くて嫌になってしまうけど心のそこからどうでも良いと思えるほどあなたは多い数のうちのひとりじゃないし、あたしは嬉しかったから。他人から見られる目にも無関心になれない。でもこれがあたしだから仕方ないと思ってしまう自分もいて更にかっこうがつかない。

別れてから時間が経った時にクリープハイプのウワノソラを聴いて、「大好きと大嫌いの間でのたうち回っている」という歌詞が、彼が素っ気なくなった最初の頃の、好きだから腹が立って大嫌いになって、でも好きだから突き放すことが出来なかったときの気持ちに重なって一時期ウワノソラばかり聴いていた。でもそれが悲しさから怒りに変わって相手のことを否定して心の中で責め立てることが、自分が器の小さい人間ですごく恥ずかしかったし、相手の気を引こうと無駄な駆け引きをして必死な自分も恥ずかしかった。そんなあたしに「いっそこのまま消えてしまえよ」「息してるだけで煩いし」「嘘つきだ 嘘つきだお前嘘つきだ」「だからこのまま消えてしまうよ?」というウワノソラの飾っていない、腹が立つ気持ちや責める気持ち、でも相手の気を引きたくもある、難しいけど誰もが経験したことがある感情をそのままぐちゃぐちゃに丸めて投げつけるかのような歌詞が刺さった。特にサビの部分はこんな薄っぺらい言葉で褒めるのは申し訳ないけど天才かと思った。本当に天才かと思った。尾崎さんがこの気持ちを歌詞にしてくれて、それに出会えたことが嬉しい。綺麗でかっこいい感情ばかりじゃなくても良いと思えて、大好きなクリープハイプの作品の中にこの感情を歌ってくれた歌があるなら良いやと思えてあたしは少し救われた、気がする。

もしまたこんな感情を抱くことがあれば
ウワノソラのMVの最後のように
腹が立つ気持ちを激重ボールにして
相手に全力で投げつけます。

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