85歳の父が運転をやめない
高齢ドライバーの運転による交通事故のニュースを知るたび耳が痛い。
なぜなら私の85歳の父は日常的に運転しているから。
これまで何度も試みた免許返納の説得に、父は怒りだし、まったく聞く耳を持たなかった。
周囲に話すと、その歳で運転しているだけで罪のような言い方をされる。
「うちは無理やり返納させた」と言う人もいるが、無理やり返納ってどうやって?
まさか幼稚園に行きたくないとダダをこねる幼児を自転車の後ろに乗せて連れて行くようにはいくまい。
父なりに理屈がある。
「高齢者だから事故が多いのではない。事故は若い人の方が多い」。
事故が起きる問題は、父いわく
「年齢ではなく運転に向き合う姿勢」なのだそうだ。若くたって不真面目な運転をしていたら事故を起こす。
それも一理あるなどと考えてしまう。
しかし父に事故の当事者になって欲しくない。
私も、なぜ返納させなかったのかと世間から非難されるのが怖い。
この世代の人にとってタクシーは贅沢品、バスは時間通りに来ないから使い物にならない代物だった時代。自家用車を運転することが成功のステータスなのだ。
どうしたら父は運転をやめてくれるだろう。
父は年寄り扱いされたくないのだ。どこへ行っても何をしても年寄り扱いされるが(そりゃ当然と思うが)運転だけはは対等、それが気持ちいいのだろう。
しかし私が公平に努めて見ても、やはり父は歳相応。私たちが同じ年齢層に抱くイメージに比べれば若いかもしれないが、やはり耳は遠いし反応はひと呼吸遅い。
この世代の人はお上の言うことには従う。
国が免許更新条件を厳くして、上限年齢を設定してくれたら、同様な心配から解放される家族は多いだろう。
池袋で起きた幼い子どもと母親が亡くなった痛ましい事故により、高齢者の運転を規制する世論は高まったかに思える。
けれども70歳以上の免許更新は3年毎。
心身ともに健康な人が変わっていくのに数ヶ月もあれば充分だ。
なぜ国は厳しくしないのだろう。
高齢者にサポカーを推奨している。父もサポカーに変えた。しかしだからといって「安心だね!」などと思うにはのん気すぎるというものだ。
不幸な事故が起きないためにも、個人の問題にせず、国が高齢者の免許保持条件を厳しくすることを望む。
追記
結構重要なことを書き忘れた。
父は独居。最寄り駅から徒歩10分。イオンモールまで徒歩3分の便利な場所に住んでいる。