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たいがい「年齢」で片付く

 健康診断の「結果」には「産業医に要相談」が。
 まぁ、半世紀以上生きていれば、何かしら「異常」値が出るものだから仕方ない。諦めて人事部に予約して、いざ面談。

「確かに高いですねぇ。この一年で太ったとか?」
「体重はほとんど変わらないです」
「あぁ、そうですね。でも、体重が変わらなくても、50歳を過ぎると筋肉が落ちたり、基礎代謝も変わりますから」
「年齢ってことですか?」
「まぁ、たぶん。いずれにしても、基準値は超えていますが、まだ薬を飲む必要はないですよ。年齢だと思います」
「年齢なんですね。なら、仕方ないですね」
「まぁ、年齢なので飲み過ぎ、食べ過ぎに気をつけて下さい」

 僕よりも少しだけ年齢が上の産業医は優しく笑う。

「こっちは低いんですね」
「えぇ、まぁ。どちらかと言うと、こっちの方が気になるんですけど」
「検査日に風邪気味だったとか?」
「いえ、特に」
「風邪とかウィルス感染していると、低くなるんですよ」
「そうなんですか。でも、風邪ではなかったと思います」
「まぁ、どちらかと言うと元々低い傾向なので、基準値を下回っていますが、許容範囲だと思います。こちらも年齢ですかね。疲れも影響しますし」
「疲れはあります。年齢なら、仕方ないですね」
「まぁ、年齢なので無理しないようにして下さい」

 僕よりも少しだけ年齢が上の産業医は再び優しく笑う。

 たいがい「年齢」で片付くらしい。「年齢」で片付く「異常」値でひとまずホッとした。

「ビールは控えた方がいいですね」
「ハイボールならいいですか?」
「ハイボールの方がいいですが、飲み過ぎないようして下さい」

 買い置きしてあるビールは一日一本と決め、二本目からはハイボールにしよう。年齢が年齢なので、飲み過ぎないように気をつけて。

 自分よりも年下の産業医だったら頭にくるけれど、少し先を行く先輩から言われると、不思議と説得力があり、安心する。

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