あさりのパスタ

フライパンに、オリーブオイルとあさりを入れて少し炒める。お酒を入れてフタする。5分。あさりを取り出して、フライパンを手前に傾け、砂が入らないようにダシをすくうのが美味しくできるコツ。あとは、お好きなパスタと、あさりとダシを絡めて完成。お醤油とコショウはお好みで。

文字にしたらややこしい。だけど、作ってみたら結構簡単。そんなパスタを作っている僕を祖父はダイニングテーブルから「じっと」見ていた。今年、祖父は101歳になる。

小学校の頃、僕は大阪、祖父は明石に住んでいた。会いに行ったら、いつも2階の部屋で将棋をしている。口数は少なく、頑固というより、厳格な祖父。「明石といえば蛸だろ。」と、一度だけ蛸を食べに連れて行ってくれたことがある。蛸のお寿司と、あさりのみそ汁。

そんな祖父に、僕は、思い切って将来について話してみた。

僕:「先生になろうと思います。」
祖父:「すごいな〜、諦めずに頑張れ!」

そんな返答を予想していた僕にはこと言葉は衝撃だった。

「やめとけ先生なん」、、、

今まで僕のことに関心がなさそうに見えていた祖父が、急に厳しい顔になった。まさに厳格。僕は沈黙したまま、心の中で「絶対、先生になってやる」というのが精一杯だった。

祖父は、戦争から帰ってきてクリーニング店をしながら僕の父を育ててきたらしい。警察官をしていた時もあったらしいが、7人家族を食べさせていくために、勤務時間に融通がきき、働けば働いただけ、稼ぎが増えるそんな自営業を選んだそうだ。そんな祖父からみた「先生」ってどんなイメージだったんだろう。

僕は今、祖父にパスタを作っている。祖父はそんな僕をダイニングテーブルから「じっと」見ている。「できたよ!」とテーブルに運んだパスタ、食べる祖父。「あさりのパスタ」を食べて、祖父が少しうなずいたように見えた僕。

その時、「腕相撲しよう」声が聞こえた。記憶の中の声。そうだ!祖父と会ったときはいつも腕相撲をしていたんだ。「前より力、強くなったな」その時の祖父の顔は優しかった。

#おいしいはたのしい