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読書日記223 【汝、星のごとく】

 凪良ゆうさんの作品。2023年の本屋大賞とを獲得している。愛媛県の今治市の瀬戸内海にある小さい島に住む17歳の高校生井上暁海 いのうえあきみは父親が今治市の本島に移り住んだ刺繍作家の女性と不倫をしている。母親は暁海に父親が何とか家に戻るようにと、寄りかかってプレッシャーをかける。噂の絶えない家族関係に暁海はこの島に住みづらくなっている。

 京都から転校してきた青埜櫂 あおのかいは、母親がスナックで働いていて、男性を慕って今治市にやってきた。母親が男に捨てられる度に転校するような人生の中で、母親のわがままに翻弄されて、時には思ったものを食べれない人生を歩んでいる。

 この二人が恋を始める。大人びた二人はすぐに肉体を求め合い。そして夏の花火大会で花火を見に行くがてら、櫂が我慢が出来ずに防波堤で行為に及んでしまうほど愛し合う。それは、たちまち島じゅうの噂になっていく。櫂は自分の生活の糧として漫画を描いている。漫画原作をしながらメジャーデビューも目指せる位置にいる。

 それに憧れる暁海。高校を卒業すると同時にメジャーデビューをして東京にいく櫂。暁海は理由があって(母親の事で)島に残る決断をする。それから遠距離が始まって…。15年間の二人の愛を書いた作品。交互に二人の視点から書かれている。高校の先生である北原先生やその娘のゆいなどの重要な登場人物もあらわれる。

 独特というか、前の作品もそうだけど、プロローグに結末じみたものを書いてしまうというのは、流石というかストーリーテラーとはまた違った文章の書き方というか、文章の力だけで読ませてしまう圧倒的な文章の上手さがある。

もう少しすれば西の空に上がる宵の明星をわたしは待っている。
夕星ゆうづつやな
目を閉じて、鼓膜に残る言葉に耳をすませた。

汝、星のごとく プロローグ

 朝に見えるのが明星で夜は夕星というらしい。この言葉が少し重要な意味を示している。

 普通は大人がケアをしなければいけないのに、家族構成のために若い時からケアが当たり前になっている子供をヤングケアラーと呼ぶらしい。その割合というのは増加傾向で、母子家庭のために家事をしなければとか、おじいちゃんおばあちゃんがいて介護が必要でとか、僕らが生まれた時代より若者は見えないところで負担を強いられているという。

 暁海と櫂は二人の母親に翻弄される。それを読みながら切なく胸をしめつけられていたら、あっという間に結末になっているような恋の作品。

 凪良ゆうさんのロングインタビューを読んでいると、どういう風に作品と向き合っているかを少し理解できる。

 後、すごく上手いレビューが書かれていて、書店員さんだと思うのだけど「すごいな」と感心してしまった。これ読めば読まなくてもいいかもというぐらいw

 Audibleでながら聴きをしていて、面白くて読んでしまった。

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