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読書日記250【アンテナ】

田口ランディさんの作品。主人公である裕一郎ゆういちろうは東京の大学院生で15年前に妹の真利江まりえが行方不明になり、そのおかげで母が新興宗教に嵌っている。7年前に父は他界していて、真利江が行方不明なった翌年に生まれた弟の裕弥ゆうやは精神疾患を患ている。

この異様な世界観の中で物語が始まる。最初の作品である『コンセント』とは違い入りから嫌な感じがする。怪奇小説の入り口でつまずくというか、異世界(霊界なのかそれに近い世界)が物理的なのか心理的なのかで違うというか……

コンセントがエロスに突き抜けた作品だったのに対し、恐怖を冒頭においた作品になっている。主人公も女性から男性に代わり、綴られる文章も相当に違う。ただ、この中で主人公の普通さというか冷静さのみで物語は保っている。綱渡りをしているような文章で繋がる冒頭は平均台を歩いているかんじがする。

主人公が大学院の知り合いから、ネットで「人生相談」をしているサイトがあることを知る。そこから物語が緩やかに始まっていく。最初の作品である「コンセント」に後半繋がっていく。続編といってもいい作品


物語を紡ぐ人のがうまい人の特徴って「リズム」だと思っている。人気バンドの『BUMP OF CHICKEN』(バンプ・オブ・チキン)の藤原基央さんが「曲をらららで作ってしまうとそれ以上の歌詞ができない」とインタビューで言っていた。まさにそれで、読んだ時にほとんどの人は「音読」をするために「音読化」された時のリズム感っていうのがすごく大事になる。


田口ランディさん自体は盗作問題でこの作品も絶版になり、今あるのは改正版らしい。ネットの欠点でもあり僕らも気をつけているつもりだったのだけど、無限にある情報をうまく利用しているつもりでも、盗作というか引用というかの線引きがすごく難しいということ。特に商業作家という点ではすごく難しいのが理解できる。

これだけ文章が上手く、「ネット文学の女王」であった田口ランディさんがこうなることは想像していなかった。そういわれてしまったらもう小説家としては上手くいかないだろうなとは思う。ただ、『コンセント』『アンテナ』『モザイク』の三部作はオカルトや呪術的が現代のネットと融合した初期の作品だと思ってしまう。




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