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読書日記243【最後の相場師】

津本陽さんの作品。歴史小説が有名なのだけど、こういうルポルタージュみたいな作品もよく書いている。是川銀蔵という本当にいた『相場師』の話がモチーフになっている。主人公の名前は佐久間平蔵となっている。

是川銀蔵さん自身が書いた『相場師一代』という作品がAmazonAudibleにあったので、聞いてみたら読んでみたくなった。戦前の100年近く前からの話から、僕らが生まれてバブルがはじけ「失われた30年」といわれる不況までを生きた人の話しで波乱に富んでいる。

兵庫県赤穂市で漁師の末っ子として生まれる。尋常小学校卒業をしたあと14歳で商館の丁稚奉公をする。商会が倒産をして、ロンドンに行って勉強しようと中国に渡った後に第一次世界大戦が始まりイギリスに行けなくなる。日本軍にうまくついていき算盤(ソロバン)の技術を認められて軍の主計を任される。

そこらへんから波乱なのだけど、会社を若いころに作っては時代の影響で倒産をさせられている。世界恐慌があって銀行が倒産したあおりをくらって倒産した後に3年間、資本主義に懐疑的になって図書館で世界の経済学や投資学を勉強する。ここらへんがすごくて無職で子供もいたのに京都の嵐山で貧困の中で子供たちはちゃんと育ち、息子はドイツの大学の教授にまでなっている。

40代に韓国に鉱山開発を第二次世界大戦時に行い敗戦をして無一文になる。その時にはもう50歳近くになっていた。是川銀蔵さんが表舞台に出てくるのは1970年後半から1980年の前半だった。もう80歳を超える年齢になっていた。

仕手といって株を気づかれないように安く買い集めて、高値になってから売るという株の運用で何百億という資産を手に入る話がベースになっている。住友金属鉱山(5713)の株を安値で買い進めていく。それは菱刈鉱山から金に埋蔵されているという新聞記事からだった

「儂は極秘の特別な情報は何もつかまへんし、そんなルートも持ってへん。新聞は日経、テレビはNHKだけや。あんたらが誰でもしっていなはる情報を、この粗雑な頭で分析して、推理しとるんや」

「最後の相場師」

仕手というか大きな資金をもったファンドがどうやってお金のない人たちからお金を巻き上げるかということに関して、小説家というか物書きならではの上手い説明が書いてある。

株式に狙いをつけた買占め屋がいたとする。(省略)現金担保の信用取引で買いをおこなうのである。(省略)信用取引の仕組みは、買い方の残高が増えることなる。買い残がふえることは、将来の売り株がふえることなので、株価は下落にむかうと投資家たちは判断する。
そのため、空売りするものがふえてくる。買占め屋は、一週間ほど経つと、信用取引で買った株を信用で売って決済せず、現金を持参して、買い立てた株の全部を株を全部を、現金で引きとってしまうのである。(省略)そうすると、信用取引の取り組みは、買い残が減少し売り残がのこる。
売り残がふえるのは、将来に買い戻さねばならない株式の数がふえることであるから、買いの要因になり株価は値上がりする。

「最後の相場師」



津本陽さんの作品で『下天は夢か』が好きで、これでNHKの大河ができるじゃんと真剣に思っていたところがある。

その当時はキムタクが主演で濃姫が松たか子でいいかな……ぐらいに思っていた。もうそんな話はないだろうけど、如何せん大河ドラマは何をしているのか?ぐらいに思ったこともある。

古い作品群を読み返すのも楽しい季節になってきた。

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