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喜多村やすは
2021年12月7日 22:16
近藤に風呂場をかりて血と汗をおとし、土方の着古しを借りて家にたどり着くころには、すでに高くなった陽光にこうこうと庭が照らしていた。「……さて……」 ――一応、源三郎さんに、家のものにうまく言い繕ってくれ、とたのんでおいたが。 忍び足で、うら口にまわる。 ――母に騒がれでもしたら、かなわない。 先程の襲撃よりも、よほど慎重にことを進めていく自分に、はじめは苦笑いする。まるで、いたずらが発
2021年12月4日 16:20
「ひゅうっ……!」 のど笛に突きを喰らった男の口から、木枯らしの季節のすきま風のような音がもれた。 総司の目から、ぬら……、とあわい光がゆれ、大の男たちが、そろいもそろって後じさる。 その速度の何倍もの速さで、総司の剣は突き進む。相手に断末魔の叫び声さえあげさせず、一気に三人を屠った。深々とささった剣がぬけると、びゃっ、と赤い飛沫が周辺に飛ぶ。まるで、豪雨のように。「ひぃぃ!」 使い古し
2021年12月1日 21:59
玖やくざ者たちの居場所は、わりあいとすぐに割れた。「わかったぞ」 ――そこいらの密偵なんかより、余程、早い。 父親と祖父の仕事と比較して、はじめ少年は改めて、土方という男を見直した。 薬売りの姿をとく土方は、至って冷静だ。 土方の長兄は盲目なのだが、なぜか裏社会に広くゆうずうがきくという、なかなかに面白き男であるのだが、そのつてを使い倒したようである。 加えて、上から数えて三番目の