3.期待

久しぶりにスーツを着ている。
六年前に合わせたスーツを、ほこりかぶったケースから取り出す。
昔と変わらず、キラキラしていた。

就職活動をする中で、職場見学をさせて貰う機会を頂いた。

久しぶりの経験で緊張しながら、準備を怠らないようにと、
髪を切り、スーツを取り出しているのだ。

キラキラしたスーツを着るとズボンのボタンが閉じなかった。

「ふぅー」とおなかに力を込めて、
無理矢理着る。
文字通りはちきれそうだ。

六年前に比べると体重も20キロ程増えているのだ。

当時大きめに作って貰ったことが功を奏したのか、よく着れたなと感心した。

ふと、鏡に映る自分を見て
今を元気、ひたむきに、懸命に生きている事に感動して、うれしさがこみ上げた。
思わず、深呼吸をし、力を抜く。

ズボンのボタンはしまらないし
パンパンなスーツは今にもはちきれそうだが、今はまだこれでいいのかも知れないと。
身丈を合わせていこうと。
一歩を踏み出した。

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