【ニューヨーク滞在記】⑧規格外のメトロポリタン美術館。お土産探しに奔走、最後の晩餐はエリックたちと

 フルで堪能できる最後の日。残された時間の中で選んだスポットは、世界三大美術館の一つ、メトロポリタン美術館だった。ニューヨークには、数多の博物館や美術館があり、そのほとんどが巨大だ。観覧した方々のブログを見ていると、どんなに早く見ても、メトロポリタン美術館を回るには2~3時間はかかるとのこと。そのため、世界遺産に登録されたばかりのグッゲンハイム美術館はあきらめざるを得なかった。

 朝8時ごろ起きた私はまず、ホステルの自動販売機でおやつ用のプレッチェルを買った。

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 セントラルパークを横切り、歩みを進める。都会の喧騒から離れた空間は、やはり気持ちがいい。いつか特派員にでもなったら、毎朝歩いたりするのだろうか。

 公園を抜けたところでスタバを見つけたので、朝ごはんを買った。もう、スマホで「コーヒー 買い方 英語」と検索しなくても買えるのが、少し成長した気がしてうれしかった。

 ちなみに、下の写真。カップのふたがコーヒーで濡れているのは、歩きながら撮影したためである。

スタバ

グッゲンハイム

 これが、名建築で知られるグッゲンハイム美術館。入りたい気持ちを抑え、写真撮影で我慢する。

 グッゲンハイム美術館から10分弱歩くと、メトロポリタン美術館に着いた。開館の30分前、すでに100人ほどが入場待ちの列を作っている。

 自然史博物館のように重厚感がある建物だ。

メトロポリタン外観

並んでる

 事前に調べた情報では、シティパスの入り口が通常とは異なるそうだ。そこで、辺りをうろうろして探してみたものの、よくわからない。

 行列を作っていた正面玄関の左に、小さなドアを見つけたので、そこにいたおばあさんに話しかけてみると、同じシティパスユーザーらしい。が、同じように場所が分からないとのこと。それでも、「たぶんここじゃないかな」と言ったので、そのおばさんにくっついていくと、無事入ることができた。

 中で別れる間際、軽く会釈すると、彼女は笑顔で去っていった。

 荷物をまず預ける。コートや手荷物と引き換えに、数字の書かれたカードをもらった。スマホや財布など最低限の私物をポケットに入れ、いよいよ陳列ゾーンに足を踏み入れた。

 そこは、冷たい空気が張り詰めていて、教科書で見るようなギリシャ彫刻がずら~っと並べられている。まるで、世界中のアート作品を独り占めしているような感覚に陥る。

入った直後

アジアの民族

 脇にそれると、アジアゾーンのようなところだった。地図は手元にあるのだが、図面が広すぎて自分の居場所を把握するのに10分はかかった。

 それからは、地図と格闘しながら駆け足で作品を鑑賞した。

 途中、大声が聞こえるので近寄ってみると、子供たちが校外学習か何かでメモを取ったりスケッチをしたりしていた。

こどお

 対照的に、エアーポッツを耳に着けたおじさんは黙々とスケッチ。

おじさん

 だいたい、どんなにゆっくり見ても2時間ぐらいで見終えるのが日本の博物館。

 早足で歩き回ったところで、洋画ゾーンに突入。社会の授業中に眺めていた、資料集で見たような作品が散りばめられている。

くも

エ

 すると、一番見たかった作品、ゴッホの自画像が現れた。だいたいの絵が壁に掛けられていたが、これはアクリルケースの中で展示されていた。

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 アジアゾーンには日本の仏像も。うん、やっぱりかっこいい。

仏像

 ちょうど入ってから3時間が過ぎようとしていたので、(時間もあるが、歩き回ったため足も相当来ていた)展示室を引き上げ、お土産ショップに入った。

 どんなものを買おうか悩んでいると、ちょっとした事件が起こる。Wi-Fiが突然、機能しなくなったのだ。Wi-Fiが無ければ手元のスマホは意味をなさない。

 20分ほど様々なボタンを押してみる。どうにもこうにもいかず、汗も出てきた。参ったな…。

 すると、突然復活!! 一人胸をなでおろした。

 家族や友人へのお土産も手に入れ、美術館を後にする。昼過ぎに出たが、朝と同じように長蛇の入場列ができていたので、早朝に足を運んで良かったと思った。

 続いて向かったのは、マンハッタン南部のソーホー地区。大学のゼミ(地域社会学)の先生に、アートで再生した場所として紹介された場所だ。

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 電車を降り、地上へ出ると確かに雰囲気が違う。中心地の忙しさは和らぎ、どこかヨーロッパの中小都市のようでもある。まず入った店は、紅茶の店、ハーニーアンドサンズ。「ニューヨークのお土産10選」的なサイトで見かけて良さそうだったので寄ったという次第である。

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 店内には紅茶缶が山のように並べられていたり、ティーカップなどのハイセンスなグッズが売られていたりしていた。

 まず、家族へのお土産に2缶購入。ちょうど飲み物を切らしていたので、レモネードティーのペットボトルも買ってみた。味は、濃いめのレモンティーのようで、すっきりしているのでゴクゴク飲んでしまう。ちなみに、紅茶缶は日本で買うよりも数倍安いそうだ。

 続いて入ったのは、現代美術館・MoMAのお土産ショップ。行きたいリストにMoMAは上位でランクインしていたが、運悪く閉館していたので、ミュージアムショップだけでも行っておこうと思ったのである。

 「MoMA」の黒い旗がかっこいい。

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 文房具からキッチングッズ、洋服など様々な商品が並べられていたが、特に面白かったのがこの帽子。ヤンキース×MoMAである。 

 すでに、ヤンキースの帽子を手に入れていたので買わなかったものの、もしその時点で持っていなかったら買っていただろう。これを見て、ヤンキースのブランド性の高さも感じた。例えば、日本の巨人軍の帽子を私服で被ったりはしないだろう。(帰国後、日本でこの帽子を被っている日本人を見て驚いた)。

 ソーホーを離れ、向かったのは2日前にも訪れたチェルシーマーケット。ファットビッチベーカリーというチョコレートショップで買いそびれていたお土産があったので、急いで購入し、さらなる目的地へ…。

 実はこの時、私は1分を争うぐらいのダッシュで地下鉄へ滑り込んでいた。なぜかというと、17時から、トップオブザ・ロックの入場を予約していたからだ。

 入場はシティパスでカバーしているのだが、現地で時間の予約が必要とのことが分かり、ナオコさんが予約しておいてくれたのだ。前夜、ナオコさんから受け取ったチケットを手に、17時ぎりぎりに着いた。

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 トップ・オブ・ザ・ロックは、ロックフェラーセンターの展望台のこと。70階(約260メートル)の高さからマンハッタンを望む。地上で入場すると、まずエレベーターに乗った。

 エレベーター内では、天井に映像が映し出される。

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 高速で上昇した後、動きが止まる。ドアが開くと、屋上へ向かうロビーだった。夕焼けのための時間調整をしているのか、30人は座れるであろう椅子が、全て埋まっていた。

 扉を開け屋外へ出ると、強風に帽子が飛ばされそうになる。慌てて抑え、景色を堪能する。思わず、「お~~」と声を出してしまった。

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 長方形のセントラルパークもよく見える。

 周りの人はだいたい友達同士で自撮りなどをしているが、自分は1人。かといって写真を撮らないのはもったいないので、近くにいたマダムに写真をお願いした。

 だいたい30分ぐらい滞在したところで、エリックからメッセージがきたので下に降りた。実は、最後の晩餐を一緒に過ごそうと言ってもらっていたのだ。

 到着初日。空港からエリックの家に向かう車の中で、私がピザが好きだと言ったとき、彼は「おすすめの店があるから連れていくよ」と言った。最後の夜、そこに連れてくれて行ってくれるのだという。なんとうれしいことだろう。偏見で申し訳ないが、海外の人はポジティブなことを言う反面、全てをうのみにしてはいけないと心のどこかで思っていた。だから、私の願望を叶えてくれたエリックの人間性にとても感銘したのである。

 降りたところで待ち合わせる。見つけると、見覚えのある女性の姿も。ヤンキースの試合を見た後、エリックの家に戻った時に一瞬だけ挨拶を交わしたドイツ人の女性・ジェシカだった。立教に留学に来ていた方で、私と入れ替わりでエリック家に宿泊しているのだ。

 電車で向かうので、道中、つたない英語で会話を試みた。好きな食べ物は、広島のお好み焼き。趣味はディズニー。他にも、頭をフル回転させて会話をしたが、中身は忘れてしまった。ちなみに、日本語はエリックの倍以上上手だった。

 そうしているうちに、店に到着。ニューヨークでは色々なところでピザが食べられるが、窯で焼いているのは、あまりないという。その中でも、エリックが長年通う店がここ、「Patsy's Pizzeria」。

 ピザ以外にも、パスタやサラダなどのサイドメニューも豊富だった。とりあえずピザが食べたいと伝え、注文はエリックに任せる。

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 混んでいたこともあり、20分ほど待ってようやく運ばれてきた。ピザに、パスタに、(確か)はまぐりに、サラダに、ポテトに…。一人で過ごす質素な食事が多々あったので、贅沢の極みである。

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 素直に、全部が美味しかった。まさか出てくると思わなかったはまぐりは肉厚で、出汁が出ていて、30個はいける味。

 そして、目当てのピザ。生地は薄めで、耳はパリパリのタイプ。まず一つ食べてみると、これまた「うま!!!」と声を出してしまった。すると、エリックは大笑い。

 続けて2枚目を手に取ろうとすると、エリックが「ストップ」という。なぜかと聞くと、彼はおもむろに、テーブルに置かれた唐辛子とコショウを手に取り、ピザにどさっとかけたのである。曰く、彼が小さいころから食べてきた中で見つけたレシピらしい。

 首をかしげながら私もかけてみると、確かに旨味が増大した。

 食事の間は、私以外が英語で会話するのを、つたないヒアリング力をフル回転させて理解を試みる。しかし、全てを解釈することはできないので、そこはナオコさんが翻訳して伝えてくれた。話しは主に、アイスホッケー部のこと。エリックとジェシーが日本にいた時も、エリックが話すのはアイスホッケー部の話題だったという。

 「本当に、この人は立教ホッケー部が好きなんだな」。

かべ

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 さすが名店といったところか、壁には各種メディアに取り上げられた際の写真や、表彰状のようなものが一面に掛けられていた。 

 最後は、陽気な店員さんにお願いして写真を撮ってもらった。

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 帰りは、4人でウーバーに乗った。初ウーバーだったので、少しうれしかった。その車内。ラジオから何気なしに最新の洋楽が流れているのを聞き、当然ではあるが、洋楽がそこら中にあふれていることがうらやましく思った。

 しばらくして先に私が泊まるホステルに着いた。エリックとは翌朝会うが、ナオコさん、ジェシカとはここでお別れ。これまでの感謝を伝え、そして、いつの日か再会できることを心に誓った。

 エレベーターで上がろうとすると、何やら人ごみと音楽が聞こえる。覗いてみると、ライブが行われていた。

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 シャワーを浴び、荷物を整理すると、そのまま寝るのはもったいなかったので、ホステルを散歩する。ビリヤードに、おしゃれな屋外ベンチに、カフェに…。廊下では、どこからか、大部屋で騒ぐ女子たちの声が聞こえる。

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 本当に、英語の扱いがもっと上手なら、他の人に話しかけたりできたのに…。この日の悔しさと言えばいいのか、煮え切らない感情を糧に、英語の習得に励もうと決意した、最後の夜だった。

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