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マルチビタミンゼリーとカロリーメイトと

食欲がないけど最低限栄養は摂らないと、という考えからコンビニでマルチビタミンゼリーを買おうとしたら、ふと昔の記憶を思い起こした。高校1年生の7月、俺が不眠症になった時期。母親のしつこく俺を呼ぶ声で早朝に目を覚ます。中途覚醒が酷いのと短い睡眠時間のせいで体はフラフラだから無理やり体を起こして顔を洗って歯を磨いて、ひんやりとした制服に袖を通す。暑いから袖を捲って細い腕を出す。鬱で食欲が奪われたのと夏バテもあって朝食は何も食べない日が多かった。電車の中では受験期に好きになったsyrup16gとART-SCHOOLとBUMP、他にも神聖かまってちゃん、挫・人間、やくしまるえつこ、アーバンギャルド、石風呂などの何処か鬱屈としたものを感じる曲ばかり聴いていた。俺はどうしようもないくらい根暗な人間だから暗い曲しか聴きたくなかった。だけど色々事情があって父親に車で学校まで送ってもらった時、ken yokoyamaの明るい曲が無限に流れていて、メロコアは別に嫌いじゃないし全然好きだけど当時は精神が参っていたから、元気な曲を聴くのは耳が痛かった。夏の日差しが容赦なく俺を照りつける登校中、不眠で体がふわふわしていて「白昼夢みたい」と友達に言った覚えがあるけど、どんな返事が帰ってきたのかは全然思い出せない。きっと様子のおかしくなった俺を見て引いていただろう。クラスメイトに髪切った方がかっこいよ、モテるよとかなんとか執拗に言われていたから、押しに弱い俺は藤原基央とシノダに憧れて伸ばしていた前髪を目が見えるくらいまで切った。目に前髪がかかってないのがとても不安でビクビクしながら毎日登校していた。授業は鬱で頭が回らないから全部ぼーっとしているだけ。とりあえず脳死で板書をして、偶に好きな歌詞や曲名を書いてみたり。クラスの男子の輪に最初の3ヶ月ぐらいは入れていたし、修学旅行の班作りも一瞬で決まって余り者にはならなかったけど、作り笑いをしてまで自分の地位を獲得したり素の自分を出せないことが本当に虚しくて自分から話しかけるのを辞めたら孤立した。だから休み時間はとても苦痛だった。昼休みになるとクラスのみんなが一斉に弁当やらコンビニのパンなどを食べ出す。興味のないJ-popが昼の放送で流れる中、食欲がなかったのと元々ガリガリなのに醜形恐怖症由来のもっと痩せなきゃいけない、という強迫観念の元、マルチビタミンゼリーやカロリーメイトばかり食べていたあのクーラーで冷えた教室の情景。今日、マルチビタミンゼリーを買おうとしてこんな記憶を思い出した。

結局、マルチビタミンゼリーも買わなかったしコンビニすら素通りで昼食は食べなかった。体重計に乗ってみたら身長の割に軽い体重が2キロ減っていた。

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