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ある曇天の日のこと

いつ雨が降り出してもおかしくない、曇天の5月末に片道2時間半かけて、埼玉県東松山市へ行ってきました

普段あまり縁のない東武東上線に乗り、東松山駅で下車

そこから目的地の美術館(正式名称:原爆の図 丸木美術館)の最寄りのバス停まで、バスに乗りたいのですが、本数が少ないため、時間まで東松山駅周辺を散策

駅前の居酒屋さんが、お店の前に、りっぱな顔出しパネルや、見たことのないほど大きいやきとりのオブジェを置いてくれており、観光してる感を味わえました
(もし足を運ばれる方の、現地でのたのしみの半減を避けるため、写真は割愛します、ぜひここで写真を撮っていただきたいです)

もう少し歩いていくと沼(正式名称:下沼公園)が現れました
紫陽花や蓮がゆたかに咲いていたり、水が勢いよく噴出する泉があったり、とてもいい公園でした

何度か妙なタイミングで水を噴出させた泉

下沼公園を進んで行った先に図書館(正式名称:東松山市立図書館)がありました

玄関先にはコバトン(2005年から現在に至るまで〈埼玉県のマスコット〉という重責を長年担ってきておられる)が鎮座

コバトン、上品なライトグレー

この図書館は絵本のコーナーが充実していて、子どもとその保護者が安心して本を選べるだろうな、という空間がありました

いただいた図書(うち1冊は友人の選書)

リサイクル資料コーナーも充実の冊数でした
こういうときリュックを背負ってきてよかったと思う

そんなこんなで、あっという間にバスの時刻が目前に近づいていることに気付き、少し小走りで、再度、東松山駅へ

バス(正式名称:東松山市内循環バス)はどのバス停で降りても運賃100円のシステム(ありがたい)で、発車してから約15分ほどで、丸木美術館東というバス停に到着

なのですが、ここで「さあ美術館に着いたぞ」と思うのは早いのです

この丸木美術館東というバス停から、丸木美術館まで、徒歩15分ほどかかります

夏だとしたら500mlのペットボトル1本は確実に飲み終わる距離です
もし夏に徒歩で向かわれる際には、特に飲み物を事前に確保してほしいです
(この道中、たしか、自販機、見かけなかったと思います)

「梅が落ちてるね〜」という説明的な1枚
(あと友人の足の爪かわいい)

バス停から美術館に向かっている道中は、ピーマンや茄子がなっていたり、ねぎが生えていたり、梅の木に梅がたくさん実っていたり、薔薇をきれいに手入れしているお宅があったり、見どころ満載ロードでした

わりと歩くのでついに辿り着いたという感がある

やっとこさ目的地の美術館(正式名称:原爆の図 丸木美術館)に到着

丸木美術館(正式名称:原爆の図 丸木美術館 -Maruki Gallery For The Hiroshima Panels-)は、

丸木さんご夫妻(丸木位里さん Iri Maruki ,丸木俊さん Toshi Maruki)が共同で長い年月をかけて描かれた《原爆の図》(現在は第一部から第十四部までの展示)をいつでもだれでも見に行くことができるように、という思いから建てられた美術館だそうです
(*第十五部〈ながさき〉は長崎原爆資料館に所蔵)

今回、わたしが丸木美術館に行こうと思ったきっかけは、Twitter(かたくなにXと呼びたくない TwitterはいつまでもTwitter)で、企画展「松下真理子 人間動物」のお知らせ(下記をご参照ください)をみかけたからです

そのとき、かねてより「小旅行でもしたいね〜」と話していた友人も「ちょうどそれ気になってた!」とのことで、友人と小旅行がてら、行ってみようという運びになりました



丸木美術館のHP(https://marukigallery.jp/)を調べてみると、とても丁寧に、各作品とその解説が掲載されていますが、個人的には、実際に丸木美術館で作品を見終わったあとの、振り返りとして活用することをおすすめします
(スマホやPCの画面で見る作品は、美術館で実際に見た作品とは、また別の性質を帯びているように感じたからです)

順路のとおりに足を進めながらも、初めて読む文章や、初めて見る作品群の、ひとつひとつに衝撃を受けながら、たまに意識して深呼吸をしたり、たまにベンチに座って休憩を取ったりしながら、みてまわりました

作品に使われている色彩は基本的に墨の色だけで(要所要所で赤などが使われていたり、色とりどりの作品も中にはありますが)必要最低限の色彩に留められていました

作品の色彩が、
特定の色に限定されていたからこそ、
わたしは、作品と向き合いながら、自分で色を想像し、彩色を試みようとしたりする中で、よりじっくりと、作品で展開されている状況に自分の身を置いて、考えることができたのではないかと思います

急に話が脱線しますが、
少し前に、
虚構の世界の中ではありますが、
人が人をあやめていく場面や
人がくるしみながら亡くなっていく場面を、
思いがけず、不意打ちで目撃しました

そのあまりの“リアルさ”に打ちのめされ、
その“リアルさ”の度合いについてや、
その受け渡し方・受け取り方について、
悩んでいたところでした
(「あくまでも虚構の世界のことだから」
「お話だから」と割り切れたらいいと思うのですが、うまく割り切れない自分がいます)

美術館で作品と向き合うことは、自分自身について向き合うことに繋がっていきました
悩みはまだまだ消えませんが自分の気が済むまで悩もうと思います

それから、常設展の展示は《原爆の図》だけでなく『水俣の図』『アウシュヴィッツの図』『南京大虐殺の図』の展示もされていました

それぞれの作品の制作に至った経緯について、
掲示されている文章を読みながら知りました

また、それぞれの事柄に対する自分自身の無知、何も知らなさ、を自覚する時間になりました

そして、これもひとそれぞれだとは思うのですが、作品と向き合う中で、かなりの衝撃を受ける場合があると思います

ひとりで受け止めたいという方は、もちろんおひとりでいいと思いますが、もし不安な方は、ご友人やご家族などとご一緒に足を運ばれることをおすすめします
(わたしは友人とみてまわることができてよかったです、友人が近くにいるということが、とても支えになりました)

それから、もうひとつ、心の支えになったのが、丸木スマさん(丸木位里さんのお母様)の絵画です

美術館の2階に常設で展示されています

丸木スマさんの絵画は、美術館のHP上でも、みることができます

植物や動物にたいする、
スマさんのまなざしのあたたかさが、
スマさんの絵から、
じんわりと伝わってきました

そのあたたかさに、人間が本来持っているであろう道徳心のようなものを感じることができて、とてもすくわれました

《原爆の図》第六部〈原子野〉の屏風の上部
原爆の図 丸木美術館 2階 にて撮影

《原爆の図》や、その他の作品で描かれている、くるしんでいるひとたちの姿は、けっして過去の図ではなく、丸木さんご夫妻の意に反して、現在進行であり、きっとこのままいけば未来そのものになります

人間がつくりだしたもので、
人間がくるしんでいる、、、、、、

作品と向き合いながら、まず、この事実と向き合わなくてはと感じました

そして、この美術館に足を運ぶきっかけをくださった、企画展「松下真理子 人間動物 -MARIKO MATSUSHITA exhibition Human Animal-」についても忘れないうちに書いておこうと思います

松下真理子さんは昨年2023年の7月から8月のあいだ、パレスチナヨルダン川西岸地区に滞在されていたそうです

企画展の題は「人間動物」、、、
なので、人間と動物について考えながら、
作品群をみていったですが、

今、“あの土地”を巡って起きている惨虐な行為について、
ガザ地区が“天井のない監獄”という表現をされることについて、
人間が人間を人間としてみつめていないことについて、など、
ぐつぐつと、ぐらぐらと、思う時間でした



パレスチナイスラエルウクライナロシア、それから、その他の地域でも、今もなお、くるしみの連鎖が続いています

たまたま比較的安全で平穏な地域に生まれたというだけで、今、生活を続けることができているひとたち/たまたまその地域に生まれたというだけで、危険な状況に追いやられ、今、生活を命を脅かされているひとたち

わたしは、今、たまたま前者の側であるという事実に、言語化をするのが難しい感情なのですが、日々、罪悪感に似た何か、申し訳なさに似た何かを感じています

大袈裟だよと思われるかもしれませんが、
ただ生きているだけで生じうる、
わたしの“加害性”について、
考えています

たとえば、わたしが「今日はいい日だった」と感じても、わたしが「いい日だった」と思った今日この日にもあの土地で亡くなったひとたちが大勢いる、と思ったりすること、なども含まれます

(この気持ちの伝えたいニュアンスが、このことばで、今、読んでくださっているあなたにどのように伝わるか不安ですが、書きました)

時間がかかってしまうと思うし、思うように本が読み進められない日だってあるし、そもそも調子がよくない日だってあるだろうけど、わたしなりに知ろうとすることを諦めずに、学んでいきたいと思います

丸木美術館の玄関に貼られていた
おふたりのことば

写真(左側):丸木位里さんのことば

「一日も早くやめてもらいたいのは戦争です。このくらいばかなものはありません。ばかなものと知りながらいつまでもくりかえしまきかえし、戦争というものは世界のどこかでやっています。このことがなくならないかぎり、この地球で心地よく生きてゆけないのです。」

写真(右側):丸木俊さんのことば

「戦争やめよ。この瞬間にも人が死んでいるのです。今すぐに戦争やめよ。戦争が長びくと原爆を使いたくなる。地球は。子供は。大人は。命あるものすべてが危い。平和を愛する世界中の人人と手をつなごう。戦争やめよ。と、叫び合おう。」

限りあるいちどきりの人生の時間を《原爆の図》などの作品制作にあて、亡くなっていった多くの人間たちの魂を宿らせたおふたりのことばは、重く重く響きます

この地球で生きているひとたちが、それぞれ心地よく生きてゆくためにも、わたしは平和を求めます、戦争やめよう、虐殺やめてくださいと、わたしはわたしなりの方法で、祈りつづけ、叫んでいきたいです

美術館の中の図書室兼休憩室
(自由に絵を描いたり本を読んだり休憩できる場所)に置かれていたクレヨンの箱

いろんな色のクレヨンがひとつの箱に入っている、、、

この目の前の事象が、何か訴えかけてきているような気がして、この写真を撮りました


気がついたら、長々と書いてしまいました
ここまで読んでくださり、ありがとうございました



丸木美術館についての事前に知っておきたい情報】
開館時間:午前9時〜午後5時(12月・1月・2月は午前9時〜午後4時半)
休館日:毎週月曜日
入場料:900円(一般・大人)*各種割引あり

企画展「人間動物」についての事前に知っておきたい情報】
入場料:丸木美術館の入場料で企画展もみることができます
会期:2024年5月11日(土) から 7月7日(日) まで
*企画展の詳細は下記をご参照ください




さいごに
最近聴いているお気に入りのアルバムを3つ
ご紹介して終わろうと思います

・Christian McBride & Edgar Meyer /『But Who's Gonna Play the Melody?』


塞ぎ込みそうになった心に、風穴を開けて風を運んできてくるような音楽です

・Pat Metheny /『One Quiet Night』

塞ぎ込みそうになった心に「ま、塞ぎ込むときもあるわな」とだけ話しかけてきて、あとはひとりにさせておいてくれる系の音楽です

・Luca Mundaca / 『day by Day』

塞ぎ込みそうになった心に「とりあえず寝たら?」とやさしく眠りに誘ってくれる音楽です



外の気温と室内の温度の寒暖差がたいへん激しい季節がやってまいります
まもなく梅雨もやってまいります

読んでくださったあなたに、もし、よくないことが訪れたら、そのあとに、それを払拭するほどのよいことが訪れますように

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