本をつんだ小舟によせて       ~さくらももこ著 もものかんづめ ~

 僕が介護福祉士を取得した当時、合格するには筆記試験と実技試験を受ける必要があった。ただ、実技試験については、事前に所定の講習を受ければ免除された。今回はその免除講習のお話。

 免除講習の会場は、隣の隣の町であった。距離的にはそんなに遠くなかったが、山を越える必要があるので自転車で行くのは難しい、車もってない。そうなると公共交通機関となるがこれがかなしいことに、本数が少ないので10時開始の講座に始発で挑む、という図式となってしまった。

 免除講習の会場は、昔学校だったところを改装したような建物だった。そのためか、部屋数が多く休み時間など一人で探検していた。ある日いつものようにいろんな部屋を探検していた時、ふと本棚が目に入った。 学校であった時は学級文庫のような役割をはたしていたのだろうか、などと思いながら最初に手にとったのがさくらももこ著の“もものかんづめ”である。読み始めてすぐにこれはおもしろい、となり探検は即中止。階段でもくもくと読む日々が続いたのである。