「法律の答案に模範解答なし!」法学部入学者が初めてつまずくポイント。
高校時代までは専ら決まった1つの答えをいかにして導き出すかという勉強をしてきたかと思います。それに対し、法学部では学期末に課される論述試験にて成績が決まりますが、その論述試験の正答は1つではなく、人の数だけ存在します。この”コペルニクス的転回”こそ法学部に入学した1年生が初めて感じる高校とのギャップだと思います。
恐らく多くの人は法律学についてこのように考えているのではないでしょうか。
「法治主義が定められたのは時の為政者の恣意的な政治を防止するため。それゆえ、法律によってあらゆる場合の対処法が定められており、何かトラブルが起こった場合は法律に記載された通りに処理される仕組みになっている。ゆえに、法律によって恣意的判断が絡むことなく、答えは機械的に1つに決まるようになっている」と。
しかしながら、法律はあらゆる場合を想像して網羅的に定められていますが、逆に言えば個別具体的な事例への対処法については逐一記載されていません。また、法律に書かれている文言それ自体の理解も人によって異なります。(例:「害意」とは何か?)
より学問的に言えば、これらの理解を巡って学者が論戦を交わしており、様々な学説(学者の考え方)が存在しているのです。
そのため、同じ法律・条文を使ったとしても思考過程が異なるゆえに、学生それぞれで答えがバラバラになるのです。
(学部試験レベルだと民事系を中心に最終的な解は一致する傾向にありますが)
しかし、何を書いても単位認定してもらえるわけではありません。自分なりに頑張ったとしても、学説の理解や事例の処理に担当教員の目で見て誤りがあると、バツとつけられてしまいます。
それゆえ、何を書いても正解だと言われる一方で、思うがままに答案を作成するとペケをくらうというジレンマにハマる1年生は少なくないと思います。
こうなってくると、一部の学生は期末試験の予想問題を用意して先輩に模範解答を作成してもらい、試験当日に多少の問題の相違にすぎないならば予め準備した模範解答で押し切ろうとします。
当然、先生からは「予め用意したと思われる解答文の吐き出しが多い。自分なりの論述をしなさい。」とお叱りを受けるのですが、一方で、自分で考えようにも先生は「模範解答は存在しないから自分で考えなさい。」の一点張りで、果たして何が先生から評価されるのか分からないといった事態に陥るのです。
申し訳ないですが、いまだに私もこれに対する明確な対処法は分かっていません。先輩からは場数を踏むことが結局「急がば回れ」になると言われますが、これも抜本的な解決策ではありません。
何を書いても良いけど、筋は通っていないとダメ、という学生に裁量があるようでないフワッとしたこの感じこそ法学部で出会う最初にして最大の難関だと4年生になった今思います。
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