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やきもきしながら見る予算審議

 28日、令和5年度政府予算案が国会で可決された。

 過去最大規模の予算であり、報道ぶりも様々、それに対する世論も様々で、「無駄な投資はないのか」という声も聞こえてくる。

 行政の現場から言えば、従来予算の執行残(つまり使い切らなかった分)が出れば、次の予算要求では、その分は不要だったのだろうという査定当局の指摘からスタートするため、安易に減額・事業廃止することは難しい。

 ましてや、変化のスピードが激しい昨今にあっては、いつどんな時に予算が必要となるかわからないため、将来に向けていわば「キープ」するために要求するといった風潮すらある。

 さて、各省庁には国会対策の部署というのがある。今まさに自分がいる部署だが、その観点から言えば、今回の予算案に関する国会の状況というのは、概ね順調だったと思う。

 実は、予算案の審議は、可決までに必要とされる審議時間が暗に決まっている。「概ね順調」というのは、大体その審議時間前後で審議が終了したということだ。

 そもそも衆議院を通ってしまえば、憲法第60条第2項の定めによって、30日後には自動的に国会で可決されてしまうため、過去にはこの”30日ルール”を戦略的に活用した政権もあったようだ。

 公民の授業では全く勉強の意義を見出せなかった国会に関する憲法の条項も、こうして意識するときがあるから不思議だと思う。

 政府としては予算案がスムーズに可決されるというのは極めて重要で、それは新年度からの予算執行につながるということもあるが、法案審議のスケジュールにも大きく影響するからである。

 予算審議中は原則として法案審議はできないため、国会に提出した法案が全て可決されるために、やきもきしながら審議の様子を見つめているというわけである。

 時々、あれもこれも法整備が必要だ、という声を聞くが、それは行政側も整備したいものの、この国会審議スケジュールを前提としたら優先順位を付けざるを得ない。国会法第10条より、原則として常会の会期は150日間だからである。

 中身が注目される予算成立も、また違った観点で見ることができたのではないだろうか。

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