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【01Night】POST COVID-19のための事業創造のアンラーニング思考 Day1

今回は、COVID-19という大きなインパクトの下で、事業開発はどう変化するか、その時に必要な「アンラーニングとは?」を中心にお伝えしていきます。

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星出 祐輔 様 
株式会社博報堂 ディレクター/ 慶應義塾大学SFC非常勤講師
企業のマーケティング、メディア戦略構築、ブランド戦略構築、新商品開発、新規事業開発支援に従事後、博報堂生活総合研究所で生活者研究を行なう。現在は全国各地をフィールドに「創造性を引き出す」発想教育プログラムを開発実践中。博報堂BID未来構造発見プロジェクトメンバー。

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守屋 実 様
株式会社守屋実事務所 代表取締役
ミスミを経てミスミ創業者田口弘氏と新規事業開発の専門会社エムアウトを創業。複数事業の立上げと売却を実施後、2010年守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動し、ラクスル、ケアプロなどの創業に副社長として参画。2018年、ブティックス、ラクスル、2か月連続上場。博報堂、JAXAなどのアドバイザー、内閣府の有識者委員、山东省の人工智能高档顾问を歴任。近著、「新しい一歩を踏み出そう! 」(ダイヤモンド社)

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東小薗 光輝 様
H.I.F.株式会社 代表取締役
陸上自衛隊退任後、複数の金融機関に勤務。2011年にHIS入社後、法人営業部に配属。
2016年HIS代表の澤田秀雄氏が運営する澤田経営道場に入門し、起業ノウハウを学ぶ。
2017年11月に売掛債権の保証を行うH.I.S. Impact Finance株式会社(現:H.I.F.株式会社)を設立。
2019年4月にHISから出資を受け入れてHIS子会社に。2020年2月にMBOして再び独立企業とする。
BaaSプラットフォーム事業が急成長中。

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鈴木 規文 
株式会社ゼロワンブースター 代表取締役
カルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱に入社し、コーポレート管理室長を経て、2006年アフタースクール事業「キッズベースキャンプ」を創業、取締役に就任するとともに、兼務にて㈱エムアウト新規事業開発シニアディレクター。2008年同事業を東京急行電鉄㈱に売却し、その後3年間における東京急行電鉄㈱子会社でPMI業務に従事。2012年3月㈱ゼロワンブースター創業し、起業家支援、企業向け新規事業開発支援事業、投資事業を行っている。

0.COVID-19のインパクト、そして「アンラーニング」とは?

まず初めに、星出さんよりCOVID-19の影響、そして「アンラーニング」とは何か、レクチャーをいただきました。

パンデミックは既存の価値観、ルールを大きく変え、今回の場合は”DX”といった社会基盤のパラダイムシフトの必要性、重要性を再認識させる機会となりました。

この場面ではこれまで変化ができなかった教育、行政、医療といった分野だけでなく、「衣食住」の様な生活に密接した部分も大きく変化を遂げます。

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「衣」の分野では、「過ごす場所・時間」の変化によって、必要な衣類が変わり、それに合わせてシェアリングサービスが発展したり、あるいは衣類の他の業態から軸を残しながら「伸びる業態」に進出するなどの変化があるかもしれません。

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「食」では「外出」から「デリバリー」に軸が変化せざるを得ませんでしたが、その変化を残しつつ、「自らの持つ強み」をシフト先でも活かすことが重要になってきます。

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「住」についても、今回戸建てが重要視されたように、大きな変化があり、これからその在り方が変化する領域です。
今回導入された「新常態」に合わせ、働き方や住み方といった大きな部分も変わっていくでしょう。

衣食住の例をみて、もしかしたら「そんなの簡単に想像つくじゃないか、アンラーニングとは何だったのか?」と疑問を持たれるかもしれません。
しかし「新しいアイディアを求める」には、できる限り現状、想定できる未来を把握し、そこから「さらに何かできないか」と伸長していくことが重要である、と星出さんは語ります。

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1-1.人や会社が「アンラーニング」できるようになるには?

新規事業を生み出す際に大切な「アンラーニング」。
結局どうすればできるようになるのでしょうか。
この章では「アンラーニング」し、「新規事業を生み出す」ためには何が必要か、登壇者様の声を抜粋しながらご紹介していきます。

HISでは「世界平和を叶える」という澤田さんの強い意志の下で、旅行代理店業そのものが変化する中で、澤田さん自らがエネルギーや食品などで新規事業を進めていらっしゃるそうです。

そしてそんな澤田さんの周りには、様々な新規事業の提案が集まり、コンペティションや社内ベンチャー制度を通じて、アイディアが新規事業になる仕組みが明確化しています。

東小薗さんは、「HIS内の事業部として、HIFを始めていたら、できなかったと思う。」と振り返ります。鈴木さん曰く、会社が大きくなると本業のオペレーションが強くなります。
そして、守屋さん曰く、そのように本業のオペレーションが大きなウェイトを占める状態では、「本業の汚染」により、新規事業が枯れてしまう傾向にあるそうです。

ごく単純なことですが、新規事業が軽視され、「失敗を繰り返し、成功に近づいていく」性質の強いものが、組織の中で身動きが取れない状態であれば、いくら良いアイディアを生み出す人がいても、それを形にすることはできません

これを防ぐために、JAXAやJR東日本、デンソーなどは「出島」といって新規事業を促進するための組織を「本業の汚染」の届きにくいところに作ります。
本来であれば、社内リソースへのアクセスがしやすい「社内」での新規事業創造が好ましいので、「出島」という手段は「しかたなく」という面が強いかもしれませんね。

1-2.「褒められるより怒られろ。」

上記の言葉は30年前に「社内起業家=イントラプレナー」という言葉を生み出し、その成功の10戒を提言したギフォード・ピンチョーの言葉です。

HIFの東小薗さんは、HIF立ち上げの際、HISの名前を勝手に使い、CFOの方にとても怒られてしまったそうです。しかし、その後は勢いを評価され、動きを手伝ってくれるようになったそうです。

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守屋さん曰く、多くの会社で、意欲的な社長・役員とは対照的に、事業部長などが「責任取れないし、自分の利益にならないよ」ということで拒絶することが多いそうです。

そしてその拒絶に対しては「何を言っても無駄」だそうで、とにかく小さな成功例を積み上げ、「この人たちの言っていることもあながち間違いではないかもしれない」と思わせることが重要だ、と守屋さんは説きます。

HIF立ち上げ時の東小薗さんの事例はまさに「とにかくやってみる」というものではないでしょうか。
HIFをMBO(Management Buyout)される際も、しっかりと4桁万円の利益を単月で出すような成果を上げてから澤田さんにMBOのお話を恐る恐る持っていかれたそうですが、その時澤田さんは「やってよ!」と10秒で返事をされたそうです。

良い会社ほどMBOしにくいものですが、しっかりとした実績、そして澤田さんの作る環境が、現在のHIFの躍進のきっかけとなっていることは間違いないのではないでしょうか。

1-おまけ.「コンサルにプランを作らせる」?

近年では新規事業を生み出す手段として、戦略コンサルにプラン作成を依頼する企業も増えていますが、守屋さんはミスミでの戦略コンサルの活用事例について、このように振り返ります。

「コンサルの提案は間違ってはいなかった。しかし、実践する私たちの解像度が低いままでは、成功はあり得なかった。」

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当時、ミスミは「ヒト用医療用カタログ通販」での新規事業創造を、戦略コンサルの立てたプランの下、進めていました。しかし数度のピボットを重ね、実際には「動物病院向け」で軌道に乗ることになります。

新規事業を生み出す手段として、外部のコンサルティングを活用するのは有効な手段です。しかしながらそれはあくまでも「外部」の意見でしかありません。外部から受けた指摘をそのまま実行するのではなく、「自分たちはどうしたいのか」と自分本位で考え、解像度を高め実行しなければ、新規事業は成功しません。

2.これからの新規事業開発

今回のイベントでは、「アンラーニング」よりは「良いアイディアを持った人をどう活かすのか」という話題が多く展開されました。

そしてここまで、そういった人たちを活かすにはどういった環境が必要か見てきました。

守屋さん曰く、「アンラーニングできるようになるには、そういう人と一緒に仕事をしてみればいい。」そうです。以前「オリジンベースド・アートシンキング」の記事でもお伝えしましたが、「アンラーニング」「新しいアイディアを生み出す」ことができるようになるには、結局のところ、トレーニングしかないのかもしれません。

しかし、いざ「さぁ、トレーニングするか」と思っても、なかなか先が見通せないのではモチベーションも上がらないのではないでしょうか。

そこで、COVID-19の影響も含め、今後の新規事業開発の世界の状況へと目線を移していきます。

守屋さん曰く、「同じ業種間の戦いから、使用言語の全く違う、異業種間の戦いへ」という変化が、今後起こるそうです。

これまで、たとえば部品会社は部品会社同士、その質や料金で競争をしてきました。しかし現在、例えば車では「輸送機」から「家電」へと変化しているように、これまでの枠組みから大きく変化し、全く言語の通じない異業種同士の競争に移行していきます。

2-1.「新常識」を与えたパンデミック

東小薗さん曰く、今回の事態を受けてHIFの事業の一つである、売掛金の信用保証に対する問い合わせが一気に増えているそうです。

「売掛金を掛ける文化はこれまでなかった。しかし今回のことで、一気に常識になり始めている」と東小薗さんは語ります。

すでに新しいルールの上でのビジネスは始まっています。守屋さんは「これまで動かなかった産業を動かすとても良い契機になる」と語ります。

2-2.COVID-19で新規事業への投資は減るのか?

ここまでお読みいただければわかる通り、世の中の常識、価値観といったスタンダードが大きく変わるときこそ、新しい枠組みでの事業創造のチャンスが生まれます

Sli.doにていただいた質問には、「COVID-19で新規事業への投資は減るのではないか?」というものもありました。
東小薗さんはこれ対して、「減らす会社も多いと思います。しかし、ここで減らさない会社が生き残っていくのではないでしょうか。」と語ります。

そして鈴木さんからは、「実は01Booserへのお問い合わせは減っていないんです。どの会社も新しいことをやらないと生きていけない状況なので、逆に今後増えるのではないでしょうか。」という状況のシェアがありました。

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近年様々な手段を通じて新規事業創造へ取り組む会社が増えているからこそ、それ以前ではリスクを目の前にして「投資は減らす」ことが当たり前だった一方、今になってようやく「新規事業」の重要性を認識している会社が増え始めている証拠かもしれませんね。

3.終わりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。
「事業創造のためのアンラーニング」から始まり、最後は今後の人、企業、そして日本を支えるような「新規事業の重要性」にまで話が膨らんだ回でした。

Sli.doではたくさんの質問をいただき、登壇者様からもここに掲載した以上の具体的なエピソード、経験談を交えたとても密度の高い会でした。

登壇いただいた星出さん、東小薗さん、そして守屋さん、ありがとうございました!

01Boosterでは、このように「新規事業」にまつわる配信【01Night】を定期的に開催しております。

様々な領域のテーマを取り上げ、配信を行っておりますので、是非ご興味の近いテーマがございましたら参加してみてはいかがでしょうか。

また今後は01Boosterの運営するコワーキングオフィス、SAAIでのイベントも開催していく予定です。ご興味のある方は是非一度内覧にお越しいただければ幸いです。


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Writer:王 翔一朗
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