ダム穴
Twitterにアップしている創作【モテる男とモテない男】シリーズの小説です。
漫画や絵についての裏話とか、細かい話とか。
その男はいつも、ゴミ屋敷のような車で来る。 コンビニ弁当のトレー、腐った中身が残ったカフェオレの紙パック、何に使ったのかも分からないティッシュの山が、宝物のように車内に埋め尽くされていた。 ところどころ謎のシミがあるシートに、手垢がべったりのハンドルに、砂埃や鳥の糞でやや見づらいフロントガラス。 大きな体を窮屈そうに精一杯小さくして、異臭を放つゴミだらけの車内に乗り込んで、その男はやってくる。 その男はいつも、おかしな臭いがする。 酸っぱいような、甘いような、ワキガとも違う
人生最悪の目覚めだった。 私はその日、夢を見た。 夢の中の私は、コンビニおにぎりのパッケージになっていた。 商品棚の、おにぎりの棚に陳列されていた。 私は、私より何倍も大きな生き物に乱暴に掴まれた。 痛い! と喚いても、それを伝える口はない。 私はおにぎりのパッケージなのだから。 大きな生き物は、コンビニを出て車に乗り込むと、先ほどと同じように粗暴に私を掴んだ。 背中の、真ん中の辺りをまさぐられて、ぞわぞわした悪寒がした。 その瞬間。 これまで経験したことないくらいの激
僕は、昔からおじいちゃんっ子だった。 というよりも、身寄りがおじいちゃんしかいなかった。 おじいちゃんは、いつも僕にお菓子をくれた。 サクサクした生地をチョコレートで包んだお菓子や、甘いスルメのようなお菓子に、プリンやおまんじゅう。 おじいちゃんは、毎日お昼ごはんと晩ごはんの間に、僕にお菓子をくれた。 お菓子を頬張る僕を、おじいちゃんは優しそうな目を細めて、ニコニコしながら見守ってくれていた。 おじいちゃんは、毎日僕と遊んでくれた。 僕には難しかったけれど、将棋や囲碁を教
恋人と同棲している今の賃貸マンションには、上の階の方に子持ちの一家が住んでいる。 でも、面識はない。 そして、顔も知らない。 それなのになぜ、子供がいるのが分かるのか。 それは、平日の朝から夕方までの間。 週に何度か――子供の尋常じゃない叫び声が聞こえるから。 僕の仕事は、いわゆるフリーランスだ。 在宅の仕事がメインだから、平日も休日も関係なくほとんど家にいる。 恋人の仕事はスポーツジムのインストラクター。 恋人、と聞くと、女性をイメージするかもしれないが、僕の恋人は