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あいつ

ずっとあいつのことが気にかかっている。あの頃からずっと。

あいつに近づきたいけど近づけない。あいつのことを見かけたこともあったが、やっぱり私の意地っ張りな性格なせいで、あいつを遠ざけてしまう。この性格をなおさないと、いつまでたってもあいつとよりを戻すことはできない。


これは、あいつと私が同棲していた頃の話だ。

あいつは私を裏切った。あいつが浮気をするような奴だったなんて。

ある日、いつものようにあいつが話しかけてきた。例の件で腹が立っていたわたしは、いつものようにあいつを遠ざけた。普段はこの辺で諦めるあいつが、今日はしつこく近寄ってくる。何かを訴えるように…。今思うと、あいつはわたしに告げたいことがあったのだろうと思うが、今さらそれに気づいても、もう遅い。

そんなことにも気づかなかった私は、ついカッとなってあいつを家の外へ追い出した。

あいつは、あれから家に戻ってこない。


あぁ、今頃あいつは何をしているのだろう。例の女の部屋にでもいるのだろうか。









「ねえねえ、明美!きいて!
  この間ね、長年うちに住みついてたGを追い出したの!
  ずっと住みついてたやつだから、変な愛着湧いちゃった〜」

「何言ってるの〜Gに愛着って!私なんか最近また家にGが出ちゃって
   困ってるんだから〜!最近多いのよね〜」