なりたい私になるために

なりたい私になるために、何かをしている時間が好きだ。

なりたい私になるために、本を読んだり、映画を観たり、美術館へ行ったりするのが好きだ。
どんな内容でも、テーマでも、例え全く知見のないものでも、新しいものが自分の中へ流れ込んでくる感覚が。

触れている最中はまるで水へ潜っているみたいに息が苦しくても、それをすべて観終わったとき、ようやく息継ぎができる感じ。

みる前では吸えなかった新しい空気を、胸いっぱいに吸い込める感じ。

お菓子を自分で焼いたりするのも好きだ。
自分の手から甘くて香ばしくて美味しいものが生み出されていく感覚。

なんとなくその日ある果物や材料をつくろって、なんとなくの感覚で焼いてみたり。

焼き上がりを待つ間に、珈琲をいれる準備をしてみたり。
可愛いカップやお皿を探してみたり。

自分だけの時間を、甘く、濃く、ゆっくり、特別に過ごせる感じがするから好きだ。
漂う匂いに気づいて、フォークを分けながら家族が集まってくるところまでがセット。

それから、好きな音楽を聴きながら、入浴剤のはいった湯船に浸かること。少しだけ香水を忍ばせて、木靴のような足音になる古着のヒールで、背筋を伸ばして歩くこと。

お風呂上がりはストレッチや筋トレをして、たまの贅沢で丁寧なスキンケアをして、でも週末はスイーツをたくさん食べながらごろごろ過ごして。

それでどうなる訳でもない。
目に見える変化がある訳でもない。仕事の役に立つ訳でもない。

でも、そうやって時間を重ねることで、「自分」を構成する要素がより密になるような気がして、深く、あたたかく、豊かな人間になれるような気がする。

仕事が忙しくなって、心身ともに疲れ果てても、そういう自己投資は続けていたい。
ある日の私のそういう時間が、いつかの自分を救えたらいいし、しらない誰かをあたたかくできるようになっていたらいいと思う。

人生をそうやって紡いでいきたい。
つらいことも、やらかした失敗も、思うようにいかないことも、惨めなことも、すべて自分にかけた時間の表れのように思いたい。

来月から本格的にOJTが始まって、きっと思うようにいかないことも悔しいこともたくさんたくさんあるだろうけど、

「豊かさ」の中にすべて取り込んで、まるっと愛せる人間でありたい。