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手に伝わってくるもの

ネジの溝にドライバーがしっくりとはまると 金属同士が触れ合う柔らかい音が聞こえる。
ドライバーを握る力をクッと強めると、木の部品は乾いた声で「締まりました」と合図する。
この瞬間が僕は好きだ。
特に古い良いピアノのそれは、手に伝わる感触と枯れた木の音がたまらない。
ピアノのアクション「打鍵機構」には400本くらいのネジがついているだろうか。
でもこの緩くなったネジを締めなおす「増し締め」はものの数分で終わってしまう。 もっと楽しみたいのに残念。
こんな単純で退屈そうな作業でも、自分の手に伝わった心地よさは、
最終的に弾き手にも伝わるはずだと僕は信じている。
「心をこめて」などと職人気取りの悦になるほどの作業ではないけれど、
弾き手が喜ぶ姿を目に浮かべながら、楽しみながら… そうありたい。
チンタラやってたんじゃ仕事にぁーならんけど
でもね やっぱり スピードよりも大切なこやと思う。    ーまー

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