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いまいる場所から 4

月刊まるネコ堂がハガキになって届く。霜月号とある。ハガキの通信面、左半分がでっかいアラタくんの顔で占められている。はじめ、笑っているのかと思ったがよ~く見るとそうでもないようだ。大きなふたつの黒い瞳がじっとこちらを見ている。まっすぐ。つよい。口は少しだけあいているというかぴたりととじられてはいない。顔全体、何かこちらに訴えているようにもみえる。そんな顔というか表情だ。思わず見入ってしまう。

文章は「お弁当日です。」からはじまっている。最初。お弁、当日です。というふうにも読めた。それがおかしかった。ブロッコリーのはなしだ。どうやらお弁当のブロッコリーをアラタくんは食べたかったのに食べられなかったような。けどそのはなしは最後まで「たどり着きませんでした。」で終わっている。だから僕も当然はなしの最後まではたどり着けなく。終わった。

返事を書いた。もらったハガキに書いて返したからこれは一応返事ということになる。いやなるのか。でも求められてはいないよ。けど返事か。それでも返事というのか。わからない。いやしかし返信にはなる。そうだ。返信を書いた。んだ。

返信。いつも月刊まるネコ堂が届くたびに返そう返そうと思いながら今日まで出来なかった。それが今日は出来そうだ。

昨日、使っていない古い年賀状が出てきたので今年の年賀状を買いに行くついでがあるなら使っていない古い年賀状を郵便局で新しい年賀状に交換してきてねと妻に言われ郵便局へ持っていったら古い年賀状は未使用でも新しい年賀状には交換できませんと窓口で言われでも切手またはハガキとなら交換できますけど切手とハガキのどちらにしますとたたみかけるように聞かれ一瞬迷ったがそうだまるネコ堂へハガキを書こうと思っていたんだということを思い出してハガキを希望しますと返したら古い年賀状が新しい普通ハガキ6枚になって返ってきたんだ。

そしたら普通ハガキを6枚手に入れたその夕方に月刊まるネコ堂が届いてそのタイミングのよさにちょっと驚き今朝はそのときを待ちかねて書いた。

白いハガキの通信面に思うがままに横書きで書いたらちょうど上から下までいっぱいになるところまで書けて最後の最後に「完」という一文字まで書けてちょっとうれしかった。


まるネコ堂.大谷隆様.美緒様

おはようございます。今日は12月17日です。朝の9時32分です。いつも、月刊まるネコ堂ありがとうございます。楽しみに読んでいます。昨日、vol5の霜月号が届きました。アラタくんの大きな顔がよかったし、お弁当日のブロッコリー・・・のはなしもおもしろかったです。アラタくんとの日々のことをこうして文にしたり、絵にしたりできることは幸せなことですネ。そんなことを思いながら読ませていただきました。月刊まるネコ堂のハガキをもらうたび、届くたびに、折り返しのハガキを書こう、書きたいといつも思ってはいたのですができませんでした。今度こそはとこうして書いています。それに、そのタイミングが合宿中であるというのもおもしろいです。合宿中に合宿先にハガキを出す。合宿の参加者でありながら参加している合宿先にハガキを出す。合宿が終わらぬ内に合宿中に届くといいのですがね。合宿本来でやるべき文章作成ができないのにハガキには、いっぱい書けました。完

2020.12.17 山野カエル

合宿中の合宿参加者が合宿先にハガキを出すという、ちょっとおもしろいこともやっている感があってひとりで盛り上がる。ハガキを書きあげて、さっそく歩いて5分少しの郵便局まで行く。

すぐ帰るからとリビングの灯りは消したけどエアコンの暖房だけはつけっぱなしにして玄関の鍵だけかけて外へ出た。

左手にハガキ1枚だけを持って歩く。寒波が来ている。寒い。郵便局へは道を西へまっすぐだ。マスクにサンダル履き。途中、正面から大きなトラックと軽自動車に出会う。それぞれ1台ずつ。すれちがう。

郵便局の前には赤いポストもあるがポストには投函せずに中まで入って受付カウンターの前にある郵便物受付の投函口にするりと流し込むように入れた。

受付カウンターの奥にいた郵便局員のお姉さんと目があったので投函しましたよろしくと目配せしたらお姉さんもはいわかりましたと目配せで返してくれた。それから少しだけ遅れてありがとうございますとお姉さんの声もしたが僕はすでに振り向いて出口を目指していたので背中でそれを聞くことに。

合宿中に着くといいな。おもしろいな。たぶん着くだろう。そんなことを思いながら帰り道を歩いた。

歩きながら自分の書いた文章だけどハガキだから相手に出してしまったら手元には残らないんだなと当たり前のことをふと思い笑った。

宛先のある文章は相手に届けられるために僕のところを出たら最後僕の手元には残らないんだ。そんなことをなぜか繰り返し繰り返し僕のなかのどこかでつぶやきながら家に帰ってきた。

>まるネコ堂言葉の表出2020冬合宿「いまいる場所から」より 1999文字

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