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無人駅にて

上り電車を待つホームに人影はなかった。改札にも駅員の姿はない。無人駅。ベニヤで塞がれた駅窓口が、昔この駅にも駅員がいた時代があったことを教えてくれる。かつて駅窓口だったあたりには小学生ぐらいの背丈の切符販売機が置かれているだけだ。

ホームから西の方角、200メートルほど向こうにある踏切の警報機が鳴りはじめる。もうすぐ上り電車が来る。音のする方にまっすぐ延びる線路をぼーっと眺めながら電車を待つ。しばらくしてこちらに向かって来る車輌が見えはじめる。2両編成。しかもワンマン。電車が定位置に止まり扉が開く。降りる人はいない。ホームにいたひとりを乗せたら扉はすぐに閉まり動き出した。

駅はまた誰もいない場所になった。

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