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LOOPの果てで会いましょう~グノーシア感想~


ネタバレ無し 友達付属の人狼ゲーム

 今の界隈に行きついた経緯を思い返してみると、人狼ゲームが大きな転機だったと思う。ニコニコ動画で参加者を版権キャラクターに置き換えた動画を視聴したことで、関連動画を辿りに辿って、今の場所へとたどり着いたのだ。当時に比べかなりメジャーなゲームになってきたので、細かいルール説明は割愛させていただこう。
 ハラハラする駆け引き、無事に朝を迎えられるかどうかという緊迫感。それらに憧れたオタクがすることと言えば、もちろんゲームの開催である。しかしここで問題が一つ。

 参加者がいない。
 
そう!

参 加 者 が い な い の で あ る !

 街中ならいざ知らず、うさぎ(概念)を追いかけ、小鮒(概念)を釣り、野山に混じりて遊ぶ以外に娯楽らしい娯楽が無い田舎では、後方100mからのクラウチングスタートを強いられる。どの世代もムシキング(物理)がトレンディだった。
 時を経て、過去を思い返した時、人狼ゲームへの燻りを抱え始めた。もっと気楽に遊べないものだろうか。オンラインのものは普及しているが少し敷居が高い。一日目「とりあえずお前吊りでいいかw」枠の自分でも、最終日までバシッと生き残れないものだろうか。そんなことをぼんやり考えていた頃、グノーシアとの出会いを果たした。
 

 グノーシアは元々PSvita用ソフトとして2019年に発売された作品だ。様々な賞を受賞している1人用SF人狼ゲームであり、2020年にSwitch、2022年にSteamへ移植された。購入すればノリノリで人狼をやってくれる14人の友達がついてくる、何ともお得なゲームである。みんないつもありがとう。ストーリーはざっと以下の通りである。

 人間に擬態し、襲撃を行う未知の生命体「グノーシア」が存在する世界で、主人公は記憶を失って目を覚ます。傍らにいた人物・セツの説明を受けながら、船内に紛れ込んだグノーシアを見つけ出すために議論を行っていく。

 インディーズゲームに手を出したころからよく見かけるタイトルだったが、流し見るだけで今まで手を伸ばすことはなかった。こういった話を聞くゲームは大好きなのだが、地頭で勝負となると、迷宮入り間違いなしポンコツ迷探偵の一面が顔を出すからだ。
 そんな自分でもグノーシアを駆け抜けられたのは、ステータスの成長要素があったことが大きい。各パラメーターを成長させれば、グノーシア(本作における人狼)やバグ(本作における妖狐)だけをコールドスリープ(本作における処刑、吊り)させることも可能である。
 ステータスによって習得できるスキルで盤面を整えたり、怪しいと思った人物を追及したり、逆に疑われたら助けを求めたり……多彩な活躍が行える。とはいえ目立ちすぎれば、コールドスリープや消滅(本作における人狼による襲撃)を受けるリスクも高まる。ステータスをカンストさせても、調子に乗りすぎればやられるバランスがちょうどいい。

 14人の個性的な仲間たちについても紹介しなければなるまい。厳しくも優しいセツ、小悪魔ガールのSQ、ロジック至上主義者のラキオ、誠実なジナ、いつも明るいしげみち、献身的なステラ、猫になりたいシピ、勘の鋭いコメット、可憐なククルシカ、不思議な言動を繰り返すジョナス、ひたむきなオトメ、自分に素直な沙明、どこか陰のあるレムナン、浮世離れした達観と迫力を持つ夕里子……。LOOPを繰り返して、”違う”彼らと出会う度に、寂しいような嬉しいような気持ちになる。

 プレイ時間はおおよそ20時間。推理に自信が無かったり、人狼ゲームが初めてでも安心してプレイできると思う。ぜひ、ネタバレを踏まずにあなたの宇宙を旅してほしい。



ネタバレアリ ”おなじ”宙の下で

 銀の鍵、異星体グノース、狂える神々……ロマンあふれるワードにウキウキしながら旅を楽しんだ。
 LOOPを重ねて、特記事項を埋め、殺し殺され生き延びながら、何度も危機を乗り越えた。終盤では、特記事項を埋める楽しさよりも旅が終わってしまう悲しさの方が勝ってしまうほどだった。この宇宙にいたい。旅を続けたい。セツやみんなと一緒に笑い合える時間が続けばいい。
 しかし、彼らは役者で、フィクションだ。グノーシアなんて嘘っぱちだ。所詮プログラムに乗っ取って行動する、別の宇宙の人物たちに過ぎない。老いも若きも舞台の上で、神々の為に踊り続ける。
 それでも、ここに自分がいて。セツがいて。みんながいて。めちゃくちゃになりながら演じた物語の、何と愛おしいこと! そう思える温かさが、何よりも大切なものだったと思う。
 
 あの時、鍵を手渡されたこと。鍵を手渡したこと。紡がれる輪廻の中で、たくさんの友人たちと出会えたこと。最後に、もう一度あなたの手を取れたこと。確かに、そこに居たあなたと、みんなとしか紡げない終着だったと思う。

 さよなら、俺のイレギュラー達。いつか、”おなじ”宙の下で、また。


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