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死角からのDOKIDOKI

どっきりどっきりDONDON‼突然彼女ができたらど~しよ?

どうしよ……

STEAMのサマーセール。それは夏を告げる風物詩である。TLはどことなく浮き足立ち、今回のセール商品のプレゼンが行きかう。今年はUNDERTALEが破格の333円らしい。激安だ。UNDERTALEをやろう。目ん玉が”ボーン”と飛び出るような体験を楽しんでほしい。

他にもArkやダンガンロンパなど有名なタイトルもかなりお得な値段で楽しめるようだ。詳しくはSTEAMを覗くなりTwitterで検索をかけるなりしてほしい。正直今年から始めたばかりで僕もよくわかっていないのだ。

そんな情報をルンルンで追いかけていたところ気になる文句がTLに流れた。

”あのドキドキ文芸部が無料!”

ほう。ドキドキ文芸部。タイトルとメインビジュアルくらいの知識しかなかったが、無料なのか。無料か~へぇ~

*ツリーにネタバレあり

かわいい(かわいい)

明るい幼馴染のサヨリ。同じ学年のマドンナであるモニカ。素直になれないナツキ。引っ込み思案なユリ。DOKIDOKI文芸部に入部した僕こと「たろう」は、彼女たちと楽しく刺激に満ちた青春を謳歌する。

……はずだった。




*ネタバレあり。DOKIDOKI文芸部をプレイしてから来てほしい。




一周目が、終わった。

確かに僕は下心をもってこの部に入部した。あわよくばこのかわいい女の子たちとDOKIDOKIな目に遭いたいとは思っていた。確かにそうだ。ゲーム側が提示したDOKIDOKIは、しっかりとそのニーズに応えたものであると言えるだろう。でも僕が考えていたのはもっと、こう、パフェを半分こしたりとか、間接キッスをかましてしまったりとか、そういう類の、一般的に甘酸っぱいとか言われるDOKIDOKIであって、幼馴染の自殺死体を目撃するとかそういう類のDOKIDOKIではない。あと彼女の存在が消えるとかそういう類のDOKIDOKIでもない。

ぬいぐるみに癒されるタイプのDOKIDOKIではない。こいつ、ぬいぐるみに気を取られているうちに死角からバットで殴ってくるタイプのDOKIDOKIだ!そう気づいたところで時すでに遅し。僕は一人の少女を殺してしまったのだ。

友人として彼女と寄り添い、彼女のつらさを分け合って歩いていけるような、そんな人間でありたいと思っていた。彼女とそれ以上の関係を築くのは次でもいいと思っていた。正直に言うとユリルートを行きたかった。我執に囚われた選択をしたその翌日がこれだ。勘弁してくれ。カロリーが高い。寝起きでとんこつラーメンを食べるような暴挙をかましてくるんじゃない。

幼馴染の死体が自殺とも言い切れない(立ち絵の都合かもしれないが自殺にしては部屋と死体が綺麗すぎる)のと、モニカのメタ発言が怖い。怖すぎる。やめてくれ。全然寝られなかった。夜にやるんじゃなかったと心底後悔した。たまたま友人たちと電話を繋いでなかったら死んでいた。

フォロワー同士の巧みな連携により全くネタバレを踏まずにプレイできたわけだが(ありがとう)、それでも彼女を、サヨリを喪った悲しみは大きい。完全にエゴだった。ユリと添い遂げたいと思いながら、それでもサヨリに愛してもらいたいと思ったのは僕の傲慢さが膨らませたエゴだった。そのまま笑っていてほしかったなあ、と思いながらユリに後ろ髪を引かれる自分がいる。彼女が居なくてもやっていけるだろうか。僕は彼女を忘れて歩いていくのだろうか。死という強烈な閃光を放ち続ける彼女から目をそらせないでいる。こんな形で振り向きたくなかった。こんな形で気づきたくなかった。

正直言うともうやりたくない。でも彼女が暮らした世界を、彼女が生きていた世界をもう少し調べてみたい。彼女が”彼女たち”で塗りつぶされてしまった理由を知りたい。何も知らずに逃げるのは彼女の死から逃げることと同じだと思う。僕はこの世界の真実を知るため、DOKIDOKI文芸部の奥地へと飛んだ。




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