見出し画像

押せッッッッッッッッ!!!!!! 待て押すなッッッッッッッッ!!!!!! やっぱ押せ押せ押せッッッッッッッッ!!!!!!〜パラノマサイト FILE23 本所七不思議感想〜


ネタバレ無し お・か・し・の

 生粋の怖がりには、暑いと怖い話が聞きたくなる心理がいまいち理解できない。季節に関係なく、話を聞いた後はシャンプーの時間が怖くなる。それでも好奇心とは恐ろしいもので、試しにアマプラでホラーを見ては後悔する。でも面白いんだよな。最近見た奴だとこの子は邪悪がたまらなかった。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8TP4QTK/ref=atv_dp_share_cu_r

 しかし、こわいこわいと遠ざけていては、自身の可能性を絞りかねない。思い切ってホラージャンルのゲームを触ってみよう。というわけで今回はパラノマサイト FILE23 本所七不思議を紹介していく。

 パラノマサイトは今年(2023年)の3月に発売されたてホヤホヤのアドベンチャーゲームである。あらすじは以下の通りだ。

 舞台は昭和後期の東京・墨田区。故人を蘇らせる儀式、《蘇りの秘術》を巡り、呪主(かしりぬし)9人の思いが交錯する。

 タイトルはパノラマサイトではなく、パラノマサイトが正しい。ここだけは覚えて帰って頂きたい。恥ずかしながら、未だにどっちがどっちか怪しい瞬間がある。

 ネタバレを避けようと思うと、本当に骨組みの部分しか語れなくなるのが惜しい。地の文(会話ではない状況を説明するための文章)のない、読みやすくも軽快な会話形式でストーリーが展開していく。思わずクスッとするシーンも多く、ホラーが苦手でもサクサク遊べる点が嬉しい。
 公式HPを一見すればホラー味が強い印象を受けると思われるが、ストーリーを読み解き、彼らと一緒に行動していく中で、それだけではない本作の魅力にも迫ることができる。真っ黒な烏をよく観察していると、実は多くの色彩がその黒を創りだしているように、パラノマサイトも一概にホラーゲームとは言い切れない。
 時代は過渡期にあり、今の時代まで残るもの、消えたもの、無くされてしまったもの、多くのものが同時に混在している様にはスクランブル交差点を重ねてしまう。まさに混沌†ケイオス†。だがそれがいい。同じ呪主でも、それぞれ思惑の異なる彼らの織り成す物語は、会話や選択によって変化しうる。

 舞台は昭和ということで、尻込みした平成っ子もさぞ多い事だろう。当時の世相にあまり詳しくなくても大丈夫。本作はゲーム内資料をいつでも参照することができる。授業で配られる資料集を読破していたタイプの自分は夢中になって読み漁った。頻繁に更新されるのも嬉しい。

 そしてとにかく音楽がいい。OSTの試聴動画をご覧(お聞き?)いただければわかるが、まあとにかく良すぎるのである。

 動画のサムネイルでも登場しているが、絵の魅力も素晴らしい。最高。JKから中年男性、果ては老人まで個性的かつ艶やかに描き上げられている。何を食べたらこんな絵が書けるんだ……。おかげで新しい性癖の扉が一つ開いた。関係者各位には感謝申し上げたい。

 さて最後に、呪主の闊歩する本所を歩くにあたって、「おかしも」ならぬ「おかしの」を心に留めておかれたい。これさえ守っていれば、まず襲われることはないだろう。多分。知らんけど。

・お (簡単にZLを)押さない
  呪主に軽率に会わない
 (呪いの発動条件を)喋らない
  呪わない

 ○○(ネタバレのため伏せ)、お前の事だぞ。聞いてるか。

 プレイ時間は10時間程度。謎ときに手間取った自分は12時間程度でクリアした。お値段は1980(スマホ版は1900)円とお求めやすく、セールも頻繁に行われている。まだ暑い日は続く。冷房を効かせながら、在りし日の墨田区で呪殺バトルを繰り広げるのも乙だろう。

マジ?


ネタバレアリ はじまりはMK5

 お分かりの事とは思うが、MajiでKoiする5秒前ではなくMajiでKoroshiた5秒後である。下町で飛び出ていいワードではない。

 後半の怒涛の伏線回収、熱くも切ないすれ違い、とある事実の判明から大団円へとつながっていく様は爽快感すら覚える。構成と筆の力をひしひしと感じ、自分が生きた本所に愛着がわくと共に、他の人がどんな感想を抱いたのか気になってしまう。
 とにかく、シンプルで真っすぐに、文章が面白いのだ。文章自体につい続きが気になってしまうようなとてつもない吸引力があって、何より読みやすく理解もしやすい。これは本当にすごい。同じく文章を書くもの、趣味ながらもエンタメを提供するものとして雷に打たれた気分だった。日々アウトプットを続けていれば少しでも近づけるだろうか。そう願ってやまない。

 しかし、興家とヨーコさんさえどうにかなってしまえば、呪主同士のスタンド呪影で呪殺バトルが起こらなかったのだと思うと少し寂しい。あのオールスター勢ぞろい感というか、「お、お前は! このルートでも出るんかい!」感がたまらなく好きだったので、違う形で出会いながらもその全容を見守ることができないのだと思うと、終わってしまうことへの実感と寂寞、そして早く続編出ないかなという野原に寝っ転がって青空を眺めるような気持ちが頭をもたげてくるのも致し方ない。ということで許されたい。
 二人が舞台から降りるか、或いは生き残ることで物語が進むというのは、二人がそれぞれ晴曼とアシノの末裔であるということを考えるとさらに面白い。晴曼とアシノは七不思議の元になった事件が起こってから出会い争ったが、今回は出会って(興家は無自覚にだが争って)からそれぞれの呪主が動き始めている。奇しくも以前の流れとは逆の流れだ。

 インタビューを見ていると、海外ウケを狙ってメタネタを取り入れたとある。嬉しい。突然ぶつけられるメタネタでしか救われない命がある。興家何人呪殺クイズだけは上手く答えられなかった。というのも、呪い殺せという指示に従順に従った結果、興家より先に全員呪殺してしまったからである。改めて考えると、とんだカシリヌシスレイヤーだ。ドーモ、カシリヌシ=サン。脳裏に浮かんだ指示に従ったのだから、プレイヤー=興家だし全殺しやろ! ガハハ! で見事に不正解し、他の人のプレイを見るまで全然意味が分からなかったという訳なのである。まあ、そんな時もあるだろう。あまり気を落とさずに行こう。

 どんなに被害を最小限に抑えても、1人は亡くなる事実が悲しい。まさに、モスコミュールでも飲みたい気分だ。浴びるほど呑もうじゃないか。6秒後から始まるはずだった楽しい時間に、独り思いを馳せながら……。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?