ラブ・アンド・ピース(短歌20首)

短歌連作

ラブ・アンド・ピース 鈴木龍也



晩春にだけ咲く桜のバージョン みすぼらしい助詞を好んで使う

ポップ・ミュージックの歌詞のように喋って、不安な時は靴を揃えて、

作中の男の子が恋をしてた アニメみたいだとかなり思った

Wikiで(連合赤軍の記事を)見る タイムラインが流れて行く

遠い国で主菜で食べられているらしい果実の切り方が分からない

伝えられなかったことの総和 珍しく都内で雪が積もった

暴力のような会話 届いても見てない時間 必要な会話

遠い町できみと似ている人と会う 揺れるフリルの白を着る

見えなかった景色が見たい 水星とか 来世はパルクールを習いたい

低温にさわれるような関わりのアイスボックスのとけた流体

知った気で言ったことは一度も無い 洗濯の終わりのノイズが聴こえた

散らばったノイズ 親しい友達 大人になって増した重力

I CAN LOVE MYSELF PERFECTLY PERFECTLY BECAUSE OF YOU

ほんとにラブ・アンド・ピース 嘘をつくことが怖くなくなっていく

暗がりのプラグを避雷針にして真剣なほど生きてみたい

地に足を着けて蜂と蜂の交尾を見ている夜の杉並区

嘘みたいな光 目が覚めて人になっても約束守る

森に住む(そうしてぼくらがみなかったことのすべてを町に託して)

ノームコア 激情の液状の八月の夏の見る夢が咲く姿

YouTubeで愛され方の動画を見る 見ると愛されるようになる

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