「菊正宗」が気になる。パック酒、生酛造り、そしてイニエスタ?謎に包まれた大手酒造
日本酒の「菊正宗」。スーパーの酒類売り場に並んでいる、あのパック酒です。
これまで菊正宗を意識することは、ほとんどありませんでした。
お酒を飲むようになる前は、もちろんスルー。日本酒を好きになってからは、精米がどうとか、生酛造りがどうとかいった「こだわりの日本酒」を「こだわりの地酒店」で求めるようになりました。
そしていつのまにか、大手メーカーのパック酒は「大量生産で機械的、おいしくない」というイメージになっていました。
しかし最近、この「菊正宗」が気になってきています。実は、とてもすごいお酒なのではないかと。
実は、プロがその味を認める実力酒?
きっかけは、五反田にある地酒のおいしい居酒屋さん「SAKE Story」さんでいただいた菊正宗「嘉宝蔵 雅」。「へー、あのパック酒の菊正宗にちょっといいお酒もあるんだ」くらいの感覚で飲んでみたところ、これが驚くほどおいしい。スムース、繊細、そしてごはんがすすむ。
店主曰く「実は菊正宗はおいしい。出張のときはとりあえずコンビニなどで菊正宗を買っている」とのこと。
こちらは四谷三丁目にある「日がさ雨がさ」でいただいた菊正宗の「樽酒」。樽の香りがほどよくあり、さらに日本酒らしい厚みのある味で、これまたおいしい。言葉は変ですが「全然うまい」のです。
「菊正宗って、本当はすごいやつじゃないのか」
ここからは、私が静かに興奮している菊正宗のすごさを紹介します。
すごいぞキクマサ①日本を代表する老舗蔵の一角
菊正宗酒造は創業360余年の超老舗。「くだらない」の語源とされる「灘のくだり酒」(江戸に船で送っていた)の代表格。現在は日本の清酒メーカーの売上・販売量でトップ10に入る規模を誇っています。
そんなお酒が、普通にサミット(近所のスーパー)でいつでも大量にならんでいます。
「老舗」という言葉が醸しだす「こだわり」「手作り」「匠」なイメージと、
「サミット」の明るい蛍光灯に照らされる紙パックたちがなかなか結びつかないのですが、とにかくそうなのです。
以前、とある酒蔵の人(やや小規模でクラフト的な取り組みをしている蔵)に聞いたのですが、大手メーカーの「品質を一定に保ち大量に流通させる」ことは、中小の酒蔵の「目の前の最高のお酒を造る」とはまた異なる難しさがあり、競技が異なるようにも感じるそうです。
すごいぞキクマサ②「生酛」にこだわっている!
生酛とは、ざっくりいうと江戸時代から続く伝統の製法。手間と時間がかかるので、一部の「生酛にこだわりのある」蔵でしか行われていません。手間がかかる分、当然値段も高くなる傾向があります。
菊正宗の紙パックに「生酛」の文字が…そうだったの?
実は菊正宗は、伝統の「生酛製法」にこだわりを持っていて、一部の蔵(大手になると複数の蔵を保持している)で生酛を続けてきていたそうです。
そして、現在は一部のお酒だけでなく、上撰。本醸造(=リーズナブルなライン)もすべて生酛にしているそう。
つまり、菊正宗のパック酒は、紙パック酒なのに「生酛」なのです。
生酛で造ったお酒が紙パックで安くて、サミットに並ぶ。盲目的に生酛好きな自分としては、小さくない衝撃でした。
すごいぞキクマサ③受賞歴がはんぱない
菊正宗の「フルーティーなパック酒」こと「しぼりたてギンパック」。このお酒、さまざまな賞レースをとりまくっているのです。
なかでも「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」は世界でもっとも影響力があるというワインコンテスト(の、SAKE部門)。
2019年のこの会で、菊正宗は「紙パックとしてはじめて」、普通酒の最優秀賞となる「グレートバリュー・チャンピオンサケ」を獲得しました。
こういう賞にでるのは「最高の一本(タンク?)を目指す賞用のお酒」。それに、「均一な味を大量につくる」ことを目的に誕生したお酒が、勝ってしまったのです。
ファミレスが星付きに勝ったようなもの、と勝手にとらえます。
すごいぞキクマサ④開発力がすごい
こちらは、前述の「日がさ雨がさ」でいただいた「菊正宗 すだち」のフローズン。パック酒です。パック酒ですが、この日飲んだお酒の中でも特に印象に残っています。
菊正宗は、「生酛」にみられる「伝統を守る蔵」であると同時に「変わり種のアイテムをどんどん出す」ユニークな蔵でもあります。
糖質、プリン体、甘味料ゼロ!
本当に、いろいろな商品をリリースしています。
あま酒はもちろん、酒カレー、シャンプー、トリートメント、シャンプー&トリートメントトライアルパックなどなど。とにかく「なんでも出す」感がすごいです。どうなってんだいったい。
すごいぞキクマサ⑤イニエスタがアンバサダー?
目を疑いました。あの天才フットボールプレーヤーであり、ワイン愛好家(ワイナリーのオーナー)であるアンドレス・イニエスタ氏が、菊正宗の肩ラベルに。
なんとイニエスタ選手、菊正宗の公式アンバサダーなのです。
兵庫の「ヴィッセル神戸」に所属しているからか、お酒にも造詣が深いからか。なんかつながりっぽいのは薄く感じますが、よくオファーしたなと驚きました。よく受けたなと。いい意味で。
ちなみに菊正宗の主要商品にはだいたい「ブランドサイト」が存在しています。
そんなに、各アイテムの世界観を大事にしていたのか…。ブランディング?マーケティング?もうなんかわからないですがとにかく「やりきる」感がいいです。
改めて、菊正宗を飲んでみた
結局のところ、菊正宗とはなにか?
それを知りたく、飲んでみることにしました。すべてサミットで揃いました。
まとめ:菊正宗とは?
身近なサミットにたくさんありながら、実は飲食のプロも推す実力酒で、伝統があり、生酛をやっていて、IWCとモンドセレクションを同時にとっていて、イニエスタ選手を起用している…。
わからない。見れば見るほど、菊正宗がわからない。個別の尖った情報はあっても、それらがつながらず、「こういう蔵!」という像が見えてきません。
菊正宗が、ますます気になってきました。
樽酒を飲みながら、これからも菊正宗をチェックしつづけます。
もちろん、お酒を飲みます。