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東京港醸造テイスティングカーで野外飲み。都心の路地裏で「地酒」を感じる

日本酒の楽しみのひとつに、地方を訪れて、その土地の地酒をいただくことがあります。離れた東京で飲むよりも、不思議と造り手と飲み手が「近い」感覚があり、それが全国各地で味わえるというからたまらないのです。

しかし、それと同じような体験が「東京」でも、それも「23区内」できました。

東京港区にある「東京港醸造」。2016年に約100年ぶりに復活した酒蔵です。「東京の水道水」を使い「江戸開城」という銘柄を醸しています。ビルで。

蔵(ビル)の前には「テイスティングカー」が設置されており、造ったお酒をその場で飲めるという、非常に「地酒的魅力」を楽しむことができるのです。

昼間から東京の「地の味」を感じに訪れました。

都心の路地裏、「普通」な一角にある

JR田町、都営地下鉄三田、そのあたり。大小のビルがならぶ完全にオフィス街、大通りから10数メートル入った路地にあります。徒歩10秒でセブンイレブンと、勤める人にとってとても便利です。

多少なりとも「観光感」があるかなと思っていたのですが、皆無です。

東京港醸造テイスティングカー、13:00から営業。1杯350円でいただけます。

先客はひとくみ。休日のオフィス街とあり、少し寂しい印象。
それに、テイスティングカーの中には誰もいない?

先客のグループによると、今日テイスティングカーで働く人の都合がつかなくなったらしく、彼らは「後払いでいいから自由に飲んでくれ」という風になったのだそう。だから無人なのですね。

とりあえず、路地の向かいの販売店にいた方に声をかけてみると、新規で注文も可能とのこと。お酒とおつまみを注文します。

いいです、こういうの。観光地じゃない田舎にあるような「え、これって営業している?大丈夫?」というゆるさが。

(テイスティングスペースは丸テーブルが2脚)

東京港醸造テイスティングカーでは、日本酒「江戸開城」の中でも、お米違い、タンクごとに注文が可能(例:お米は○○で、タンクはこっち、みたいに)。まずは「一番最近しぼったばかりの新酒」という山田錦、そして御町の2杯を注文。つまみは酒粕を使ったという乾き物にしました。

テイスティングカーのある「蔵」側から見て対面、路地をはさんだ場所に「販売店」があります。先程ご対応いただいた方は急いで販売店の方に戻っていきました。

ひとり飲みます。東京の水道水で造ったという「江戸開城」、結構クリアです。洗練されているというか、いい意味でカラッとしてるというか、「コンクリートの道」が合うような気がします。

(こういう景色を見ながら飲みます)

(東京の四角い空)

きっと、この空間を素敵に飾ると、僕は興醒めしてしまいます。そうではなくあくまで「東京のオフィス街っぽさ」の中で、この地の水道水のお酒を飲む。

いいです。これこれ、といった感じ。

土地の中でその土地のお酒を飲むことを求めるなら、これこそ正解。休日のガランとした、日当たりの悪いコンクリートの路地での、寂しさを感じるような味が、僕にとっての「江戸開城」の原体験になるのです。

うん、いいです。

(ビルの窓を見るとラベルかなにかの機械。本当にここで造っているんですね)

現地の東京の人、と一緒に酒を交わす

(隣の席の3人組はつまみ持参。もちこみもOKです)

と、隣の席の3人組が「もしよければたくさん作ったおつまみ食べませんか?」と声をかけてくださりました。ぽつりぽつりと話し、席に招いていただきました。

まるで、旅先でその土地の人と飲むような、そんな気分です。

(お手製の燻製半熟卵、燻製ベーコン、うまいです)

その中のおひとりが、一般社団法人日本合コン協会認定「合コンマスター」でした。今日もこの後戦いに繰り出すそう。なんですかその資格は!と質問攻めにしてしまいました。

若者スタッフ登場でにぎやかな空気に一変!

15時あたり、ここで変化が。テイスティングカーでアルバイトしている大学生のスタッフが到着。さきほどまで別の場所で日本酒イベントをしていたという彼の友人たちも集まり、急ににぎやかに。

(スタッフのちぇけ丸さん、日本酒大好きな大学生です)

「さぁ、どれにします?」「濁りのみました?おすすめですよ」「これはね、結構温めるといいですよ。やりましょうか?」と、テンポのいいやりとりでお酒が次々と提供されます。止まっていた空気が一気に流れ始めたよう。飲み屋における「店員さん」の存在ってすごい大きいと思うのですが、それに近いです。

先程までの郷愁を感じる雰囲気もいいものでしたが、こっちも楽しいものです。

お燗はセルフでできます。チロリと徳利ですることもできますが、グラスのお酒を飲みながら温めていく、というのも楽しいものです。

気がつけばすっかり夕方に。冬はストーブも登場します。

ごちそうさまでした。

東京港醸造テイスティングカーの、静けさと賑やかさの両方を楽しませてもらいました。料理をわけていただき一緒に飲ませていただいたみなさん、また偶然、どこかでご一緒させてください。

テイスティングカーでは、おつまみや料理を提供されている日もあります。公式情報やtwitterをご確認ください。

もちろん、お酒を飲みます。