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なぜ日本酒蔵を訪れるのか? 酒蔵見学・地酒を楽しむ7の視点

全国各地にある「酒蔵」。その一部では「酒蔵見学」が可能です。僕は、そんな酒蔵見学が好きです。というかそれが旅の主目的になる場合もあります。

なぜ、取引先でもない素人がわざわざ蔵に行きたがるのか?

今回は僕が「酒蔵見学に感じている7の魅力」を紹介します。

酒蔵見学の楽しみ①日本酒と「土地」の関係を知る

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日本酒は「地酒」ともいわれています、つまり「土地の酒」。その土地の地理的要素や文化によりそい、地元の人に飲まれているお酒です。

また、日本酒は「その土地の名物に合う」ともいわます。港の近くだから、魚に合いそうなお酒になった? 山だったら山菜? などなど。酒蔵のある土地に足を運ぶと、そういったお酒の背景が肌で感じられるのです。

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例えば東灘醸造は、外房の温暖なエリア。波音の聞こえてきそうなほど海の近く、と同時に背後は絶壁です。主要銘柄の「鳴海」は、そうか、海の音じゃないか。

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東灘酒造の徒歩圏に港があり、新鮮な魚介を売りにしたお店が多く並びます。写真は港猫。

酒蔵見学の楽しみ②地元のお酒文化に触れる

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こちらは東灘醸造の近くの地酒屋さんの前。下は全国的に有名な新潟の八海山。その上に地元のの2銘柄の樽…このエリアでは当然八海山より上なのです。

町を訪れると、その土地の酒屋さんや飲食店をのぞきます。すると、他の土地ではみられない、地元の銘柄が中心の品揃え。それも都心には出回らない地元向け銘柄も見受けられます。

町で地元の蔵がどのように愛されているかを知るのが、またよいのです。

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偶然入った街の酒屋さん。地元の銘柄が半数。さすがです。

なんならばコンビニでもそういう地元酒をみられることが多いのもポイントです(コンビニは元酒屋さんだったところも多いのです)

酒蔵見学の楽しみ③ここで造ってるんだ!を肌で感じる

ようやく、蔵見学本番です。

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素人がみて何がわかる…と思うのですが、正直あんまりわかりません。勉強すると「何がどうなってるのか」は知識として得られるようになるのですが、それをここで確かめるのは別に重要じゃない。ましてプロに対して素人が手法の質問なんて恐れ多い。

では何をみたいかというと、
この人たちが、この空間・環境で、早朝から実際に造ってるんだ!
というのを、感じたいのです。東京の酒屋さんでラベルをみて買っているのと、別次元の親近感が生まれます。

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「東灘醸造さんは犬派なのか」とか。

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蔵の敷地内の湧水。「これが鳴海の味のもとになってるのか…」とか。

ちなみに「見学」まではいかなくても、蔵で「直売」しているところもあります。それもいいもの。その場で造っているお酒を買って、その土地(夜宿泊先で)味わうのはなかなか楽しいものです。

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(和歌山にて。尾﨑酒造さんの直売所で地元むけ上撰カップを買いました)

酒蔵見学の楽しみ④メディアとのギャップを感じる

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僕は東京に住んでいるのですが、地方の銘柄を知る手立てとなるのはメディアや雑誌、そして酒販店です。となると、知識として入ってくるのは「編集された綺麗な情報」になるわけです。

東灘醸造の「鳴海」を例にすると、代名詞の「直汲み」。でも実際にみてみると、地元向けの普通酒もちゃんと造っていたりする。メディアを通してみていた「着飾った姿」ではない、「地酒として生きていくリアルな側面」も感じられます。

需要や歴史や文化や人などがあるなかの、ごく一部が都会でも得られる情報という、わかっちゃいたけど見えてなかったことが見える、そのギャップが楽しいのです。

酒蔵見学の楽しみ⑤蔵人さんが食べているお店へ

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チャンスがあれば、僕は「近くを観光していくので、おすすめのお店(蔵のお酒の取り扱いがある飲食店)」を聞き、訪れます。

観光用ではない、この地で日本酒を造っている人が実際に行っている店の味は、どんなものだろう?

ちなみに東灘醸造(勝浦)に訪れた時は「杜氏が好きでよく行っているお店」を紹介していただきました。訪れるとイタリアン…日本酒はなし。しかし実はジビエの有名店らしく、本当においしかった。

完全に、ファンの聖地めぐりの楽しみのやつです。

酒蔵見学の楽しみ⑥寄り道も、またいい

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(無人駅に降り、謎の景勝地にたどり着きました)

「酒蔵見学」がメインですので、その他の情報はどうしても疎かになります。さらに酒蔵は観光地にないことの方が多い。

だけど、探してみると、結構あるものです。それも「わざわざいかないけど、行ったら楽しい」的なところが。

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(無人駅の前。海中公園? 理想郷??)

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海の中に「刺した」みたいな公園。この下に行って海の中を見学するというもの。逆水槽です。

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(8mはすごい、ですよね)

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(人少ない)

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(めっちゃ魚いる。うつぼいる!)

酒蔵見学の楽しみ⑦地酒を、その地で味わう

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宿泊先にて、東灘の地元向けのお酒を、雑なつまみで。

見学の様子、お話しを思い出しながら、その場所で造られたお酒を、同じエリアで飲む。これが、しみじみおいしい。

不思議なことに、持ち帰って自宅で飲んでも、違うんですよ。旅情の文脈の上にあるからなのか、旅先でその味を楽しむのは、格別。

僕にとっての「地酒の楽しみ」とは、「その土地で実際に楽しまれているものを、その土地の空気の中で飲む」という最上の贅沢なのです。

酒蔵見学の(個人的な)心得
・事前予約は必須(時間相談も、醸造期間中は早朝作業)
・当日納豆食べちゃダメ(菌の問題)
・蔵は観光施設ではなく現場。見学者は邪魔者だという認識を忘れない
・酒蔵が企業ということを忘れない(石数とか、初対面の企業に売り上げ聞いてるようなもの)
・靴は脱ぎやすいもの(見学中スリッパなどに履きかえるので)

もちろん、お酒を飲みます。