推薦のお店に行く!大塚「HuQu」の日本酒ペアリングコースの満足度がすごい
新しいお店に行くとき、私は高確率で「人のおすすめのお店」に行きます。それもできるかぎり「飲食関係の人」、つまり「食・酒のプロ」が行くお店に。
そんなプロ・口コミでのお店選びの中でも、今回は「飲食店の人」「酒販店の人」「料理研究家」の3方面の方が同時に推薦されていたという、もう絶対に美味しいに決まっているお店に行ってきました。
端正というか、きめ細やかというか、ひとつひとつが「面白さ」に満ちています。多彩な味と味との組み合わせを楽しみたい方、特におすすめです。
大塚駅北口路地裏、ひっそり佇んでいます
店構えは、しゃれています。日本酒の瓶などが見られるため日本酒の扱いがあるお店とわかりますが、バル的な雰囲気。
壁に小さく店名がかかれています。ちなみに夜は酒場「HuQu」で、昼間は「あじるく」という名前のラーメン店として営業しているそう。
もともと日本橋で営業されていたそうなのですが、2020年に大塚に移転されたそうです。(それで、さっそく行ってきた人の感想を集中的に耳にしたのです)
ペアリングコースがすごい!いきなり4杯飲み比べ
(お水のグラスはカップ酒のカップ。お水のカップとか箸置きとか、そういう遊び部分を見るのは面白いです)
この日はペアリングつきのショートコースをお願いしました。最初から日本酒、お任せ。プロの方がお酒を選んでくれる、というのがまずいい。他のお店と同じ銘柄がでてきても、お店によって違う登場の仕方をするので楽しいのです。
「じゃあ、コースの中でいろいろ出しますので多かったら言ってくださいね」
と店長。最初の一杯に選んでくれたのが…
4杯!!
ここから選ぶのではなく、スターターが4杯の飲み比べです。
左から「花陽浴」「田光 ※ファーストロットでHuQuさん専用だそう」「荷札酒」「秀鳳」。甘くフルーティーなタイプのいいお酒たちばかりです。
最初は八寸のような、おつまみの盛り合わせ。こういうちょびちょびいろいろ楽しめるの、好みです。
バカのような感想なのですが、牛蒡とか、ただの牛蒡にしか見えないですしただの牛蒡なのですが、出汁がしっかししみててめちゃくちゃ美味しい。牛蒡ってすごい。(というのがすべての料理にあるのですが割愛)
風の森×生ハムといちじく
続いてはこちら。パリッとした生地の上に生ハムとマスカルポーネといちじくがのったミルフィーユみたいな料理。「手でいっちゃってください」とのことなので、バリバリ食べます。
日本酒は少し発泡のある「風の森」。層になった食感と味の組み合わせに日本酒が加わり、口の中がとても賑やかです。この組み合わせ、楽しい!
貴×茶碗蒸し(麦酒庵監修ペアリング)
後半は熱燗ゾーンに。茶碗蒸し(白子・いくら!)と、「貴」。
この組み合わせは「近くにある麦酒庵(ビールと日本酒のお店)さん監修のペアリングなんですよー」とのこと。そういうお店の横のつながりってあるんですね。(ちなみにおちょこは、熱燗を入れると温度で模様が浮き出るというもの)
じわーっと沁み入ります。「これこれ」と、初めて味わうのに言いたくなります。
そしてここから、おもしろ熱燗が次々やってきます。
土田 99のソーダ熱燗×カニのお刺身
日本酒は「土田 99」という甘酸っぱい系のもの。これを熱燗にするのですが、「ソーダで加水してから温める」のだそう。
なんだそれは? と思いましたが、飲むとこれが楽しい。熱燗なのに少し泡がありとても飲みやすい液体になります。なによりカニ(イカ墨のボールとジュレのせ)と合います!
廣戸川(出汁割)×胡麻豆腐の口内調理
続いては、廣戸川の熱燗。それも「出汁割燗」です。
料理は自家製のかぼちゃ胡麻豆腐を揚げたもの。なかはトロトロです。
料理をひと噛みして、出汁割の熱燗を口に入れると…「揚げ出し豆腐」になります!なにこれ面白い!
揚げたての豆腐が一番熱く、熱燗は少し温度低め。ハフ(豆腐)、トロ(豆腐の中)、ジワ(お酒と合体)と、口のなかで三段階かわっていきます。うめぇです。
フォアグラ×貴醸酒・旭興の飲み比べ
デザートのようなこの料理は「まちがってフォアグラたくさん仕入れちゃって」という理由で出していただいたもの。合わせるお酒は「貴醸酒」の旭興です。
同じ旭興2杯、飲み比べです。お酒を仕込むときに水の一部に日本酒を使って仕込むのが「貴醸酒」というのですが、それが右の「百」。次に「百」を使ってさらに貴醸酒を造ることを10回繰り返したのが左の「千」。
なぜそんな面倒なことを…と思ったのですが、比べるてみるとめちゃくちゃ面白い。「百」は味醂のような甘さがありつつもスルリと飲みやすく、「千」はもう、完全に蜜。
これがフォアグラとすごくよく合う。大人のスイーツです。
豚肉×達磨正宗&伊根満開のブレンド燗
ラストがこちら、チロリから注ぐ赤いお酒は、赤色の古代米を使った「伊根満開」と、熟成酒で知られる「達磨正宗」のブレンド燗!
合わせるのは肉(低温で10時間火入れしたそうでしっとり柔らか)です!
甘酸っぱい「伊根満開」はソースと、どっしり太い熟成感の「達磨正宗」は肉のパンチに合うように考えられているそうです。おもしろいなー、ソースとの絡め具合や、肉の食べる部分とかで、合わせるお酒もどんどん味が変わっていきます。
食事が「楽しい」ってすごい!
写真は暗いですが、こちらがお店の方。多弁ではないものの、丁寧に料理やお酒の説明をしていただきました。
隣の席の方と「なぜ料理の道に行ったか」と会話しているところを耳にしたのですが、「もともと犬の服をつくるのが好きで、それで料理も…」と、飄々とお話されていました。
(五反田・SAKE Storyさんからいただいたという鳥獣戯画パロディおちょこ)
感想、ものすごい満足です。味も金額ももちろん(安い!)ですが、食事の時間が「楽しい」って、外食の醍醐味になると改めてお届きました。
「このお酒がきたか!」「この食感、この組み合わせ不思議!」「ここで熱燗・冷酒を行き来するのか!」「なんかもう意味わからんけど合う!」
口に入れて飲み込むことが、起伏に富んだアトラクションのよう。グルメではないので「おいしさ」は説明できません(こちらは前のプロの推薦が保証すみ)が、とにかく「楽しい」んです。
大塚のHuQu、また行きます。
昼のラーメンもおもしろいですよ
で、こちらが昼にやっている「あじるく」のラーメン。
「もともと出汁にこだわっていて、あと麺を打つのが好きだったので」というラーメンは、出汁がやさしくて上品で、地味深いお酒を飲みたくなる味わいです。
ごちそうさまでした。
もちろん、お酒を飲みます。