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「ワインみたいな日本酒」とは? 【たつみ清酒堂】スパークリング日本酒の会で考える

「ワインのような日本酒です!」という売り文句を聞くことがあります。
「ワイングラスで飲む日本酒アワード」というコンペティションがあります。

このような「ワイン風日本酒」を、どう思いますか?

「わかりやすい」という人もいるでしょうし、「ならワイン飲め」という声もあります。僕自身、代替食品のような本末転倒感はうっすらと感じます。

中でも、特に「スパークリング日本酒」は、ワインに「寄せに」いっているように思います。山梨県の「七賢」は、山梨のワイナリーで製法を学んだそうですし、awa酒協会の「水芭蕉」は「伝統的なシャンパーニュ製法(瓶内二次発酵)」を前面に打ち出しています。

では、どれだけ「日本酒=ワイン」なのか? 

たつみ清酒堂(銀座店)で「スパークリング日本酒テイスティング会」が行われると知り、行ってきました。別に検証目的ではなく「暑い日はスパークリング飲みたい」からです。

テイスティングがすごい! たつみ清酒堂

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会場のたつみ清酒堂は東銀座の路地裏にあるちいさな地酒(お店曰く「うまい酒しか置かない」)専門店。取り扱い数は抑えめながら、オーナーが心底ほれた酒蔵を丁寧に推すスタンスのお店です。こういうお店好きです。

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(あべ、田光、せんきん、生粋左馬などが見えます。いい眺め…)

たつみ清酒堂のすごいところは、有料試飲。それも「専用のグラスで飲ませてくれる」ことです。書くと一文ですが、これってなかなか見ません。営業時は常時店内のカウンターで試飲可能なほか、今回のようなテイスティングイベントもよく開催されています。

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イベント前の一杯にいただいたのが「仙禽 無垢」。こちらも「ワイン」と近い存在ですが、それは後述。おいしかった…。

たつみ清酒堂
東京都中央区銀座4-13-5/03-3542-2822
https://tatsumiseisyu-dou.com/

スパークリング日本酒は「ワインみたい」なのか?

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こちらがスパークリングメニュー。いよいよスタートです。
今回の目玉は「あべ 秘密のスパークリング」。なんなら、これを飲みにきたといっても過言ではありません。

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ラベルなし。現時点でわかるのは「どうやら古代米を使っているらしい」ということだけです。
酵母が元気な活性系のようで、抜栓に20分ぐらいかかっていました。(ふたをじわ〜と空気を抜きながらあけないと、勢いよく溢れてしまいます)。

飲んでみると、うん、ワインじゃない。

ドライというか、辛いというか、チリっとした刺激があります。甘みはあるものの、スパークリングワインのような軽やかなそれではなく、舌の上を這うようなザラザラとした細かい泡。

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かなり白濁しており、オリも見えます。多くのスパークリング日本酒がおりをろ過する(シャンパーニュ製法だから?)のに対し、「あべ」はおりを残しており、むしろとろっとした「粘度」が感じられます。

続いては「陸奥八仙 natural sparkling」

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きれいな泡、かるい飲み心地。リンゴのような酸味が心地いいです。
ワインというより、シードルっぽい印象です。

そして「福田 活性うすにごり」(写真なし)は…おいしい日本酒です。

三者三様でどれも夏にぴったりの味わい。そして独自の味わい。そして明らかに日本酒です。

※発泡清酒には厳密にいろいろありますが、今回は「泡の日本酒」として話を進めます。

「ワイン風日本酒」の正体は?

ワインに近いのでは、という印象のあったスパークリング日本酒は、全然ワインじゃありませんでした。では、「ワインのような日本酒」とは何なのでしょう。

3つ、あると考えます。

①ワインのようなスタイルで楽しめるお酒のこと

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・おちょこではなく、「ワイングラス」などで飲むといける。(香り膨らむ)
・白ワインみたいにきゅっと冷やして飲むといい。
・お刺身、煮込みではなく、「ワインバーにあるチーズやオイル」にも合う。

このような「ワインのような飲み方、スタイルで楽しめる日本酒」がいつのまにか省略され「ワイン風の日本酒」という言葉になったのでしょうか。

②言いたいだけワイン風

「本末転倒感」のあるお酒です。「ワイン」に詳しい人からすれば、日本酒ってワインからすると驚くほど甘いらしいですね。(これについては、いろいろ意見をおうかがいしたいです)

なのでこの文句は、ワイン好きにも、日本酒好きにも刺さらないと思います。ではなぜ「言う」のかというと、

「日本酒を知らないけどバーとかレストランとかで甘みのあるものは飲む」くらいのざっくりしたゾーンを「ワイン」というカタカナでばくっとアプローチしているのでは、と思います。

人は「未知なもの」を試そうとは思わないもの(これは「馬入酒っぽい日本酒」ですよ!)。なんとなく一般的な(そして負の印象がない)ワインという言葉を借りることでアピールしているのです。

それによって、日本酒を飲まないひとに「じゃあ飲んでみっか」となる、なってほしい。それはそれでありなのです。「本格ファミレス」みたいなものです。

③ワイン文化を取り込んだ「新しい日本酒」

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(47酒店で見つけた福千歳の「PURE RICE WINE」)

3つめは、「ワインの文化をとりいれた」意欲的な造りをしている日本酒です。

例えば、写真の福千歳さんは「ワイン酵母」を使った新しい日本酒に取り組んでいます。

冒頭で紹介した「仙禽」の蔵元・薄井さんはソムリエ出身で、日本酒の世界に「ドメーヌ」「ナチュール」をいう考えを持ち込みました。「ワイン酵母」という実験も行なっています。

千葉の木戸泉も「ワイン樽発酵」に取り組むことで、従来の日本酒とは異なる味を目指しています。

これらは、「ワインそのもの」では決して違います。お米ですから。ではこの「ワイン日本酒」に何を求めているかというと、「ワインの文化を取り入れることでできる、新しい味わい」です

実際、それがめちゃくちゃ美味いかっていったら、「うん、おもしろいね!」くらいな場合がおおいです。しかし、ワインじゃなくても嗜好品には「おもしろい」視点は価値があると思うし、チャレンジにはお金を払いたいもの。

※ちなみに、飲食店でバッチリあう料理と合わせてもらったりすると、この新しい味の楽しみが一気にひろがります。


と、いうわけで僕は
①のお酒は無邪気にワイングラスくるくる回して飲みます。
②は生温かい目で見つつ、やっぱり飲みます、ワイングラスで。
③は全力で応援します。

特に、今回飲んだ「あべ」は、スパークリングなのに日本酒っぽさを大切にした、新しい味わいで非常に楽しかったです。

日本酒にはスパークリングのほか、「活性生」「ガス残りの火入れ(微炭酸)」というタイプもあり、いずれも軽くさっぱり飲めるものが多く、おすすめです。
お店で「ワインみたい」といってどうなるかはわかりませんが、「ガス感のある日本酒」といえばきっと出会えます。

もちろん、お酒を飲みます。