見出し画像

ドライとフレッシュのぎりぎりを攻める、名門の復興酒・播州一献|美味しかったお酒

2018年11月、火災により蔵の半分が焼失。
1837年創業の山陽盃酒造にふりかかった悲劇は日本酒関係の域を超え大きなニュースとなり、昨年末にかけて名門復活を応援する多くの声がSNS上で飛び交いました。

イチファンにできる小さな応援の一歩は、とにかく買って飲み、来年以降の酒造りを応援すること。恵比寿の「恵比寿君嶋屋」で、災害から復活したばかりの「生酒」を見つけたので手に取りました。

首かけポップにデカデカとかかれた「感謝」の言葉が胸を打ちます。味の「好み」とかどうでもよくなるほど、この時点でもう好きです。

痛気持ちいい味? 独特のドライさがクセになる日本酒

播州一献は、僕のイメージではどっしり低めのボディと、「これぞ辛口」というはっきりした強さがあるお酒です。通常の火入れを買ったら、熱燗一直線です。

しかし今回は「生酒」。まずは冷めたいままでの印象を挙げます。
・香りは抑えめ、ふわりとアルコール由来の香り
・甘みは限りなく抑えめ
・生酒由来の躍動感のある味
・舌にはしっかりとコクの印象が残る
まるで複数の異なるお酒の感想を並べたようです。
あくまでドライ、そのなかに生酒のフレッシュさがあり、じわじわと舌に残るのは独特のコク。最後は少しの酸と苦味で締める。
わかりやすい甘さ、キレイさ、ではないけれどくせになる。「痛気持ちいい」に近い感覚があります。

異なる2面性の間を綱渡りしているようで、飲む瞬間瞬間やコンディション、おつまみでどちらにも振れる気がします。

チーズと摘むなら熱燗がおすすめ

いろいろな食事と(揚げ物とか出汁系とか)合わせるほどおいしいんだろうなーと思いつつ、とりあえず冷蔵庫にあったチーズを出してみました。
すると冷やの場合はミモレットとぴったりです。
チーズ自体の強いコクと長い長い余韻を、複雑な味のお酒が(この時は甘さはほぼでません)ぐっと持ち上げ、苦味と酸味がジャッと断ち切る。ここちよすぎて永遠に繰り返してしまいそうです。

熱燗にするとよりなめらかに

後半はお燗に。
すると一変、尖っていた舌触りが急にまるく滑らかになります。まるでテンピュール。適度な弾力がありつつも、低反発のここちいい沈み具合で舌を包みます。

味は生酒のフレッシュさ、酸味がよく伸び、コクと一体になってよりはっきり。味がひとつになるぶん、印象はよりはっきりします。

結果、これはうまいです。

播州一献さん、火災からの復活酒、ごちそうさまでした。
これからも飲みながら応援しています。

もちろん、お酒を飲みます。