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酒屋さんが既存メディアを超えた! 江古田 「酒の秋山」のカタログがすごい

先日、練馬区、江古田にある地酒専門店「酒の秋山」にお邪魔してました。

電車を乗り継いでわざわざ訪れた理由は、店長・秋山さんの積年の夢だったという「オリジナル取り扱いカタログ」を入手するためです。

それがこちら

「和酒商品一覧 酒の秋山」

62ページに及ぶ豪華なカタログです。基本的には酒の秋山さんと取引のある飲食店さんに配布しているもの。一般のお客さんにも店頭で無料配布しています。

カタログの域を軽くこえた総合酒ガイド

「ただの商品一覧」と思って開くと、裏切られます。まず巻頭は「情熱地酒」と題した取り扱い酒造マップ。
続いて「日本酒」や「焼酎」といったお酒ごとのページに移るのですが、そこでもまず「主なお米」や、大吟醸〜純米酒といった「特定呼称紹介」。さらにラベルによくみられる「日本酒の主な用語」「BY(醸造年度)」など、よくある「日本酒特集」よりも詳しい情報がぎっしり書かれています。
すごいのが、けれんみをだして目立ちそうなことをやっているのではなく、「買うときに迷うこと、用語」に絞って紹介していること。この冊子片手に店内のラベルを見ていくのだけでも楽しそうです。

既存メディアが真似できない超優秀な商品カタログ

ここからが酒屋さんにとってメインである商品紹介。
東北、関東〜とエリアごとに酒造を掲載し、そのなかで取り扱い商品を数点紹介しています(各酒蔵の紹介部分に蔵の外観や蔵元の写真、横に店主のひとことコメントいり)。
「商品紹介」にはそれぞれの味わいのコメントと、目安となる6つの「アイコン」で表現されているのですが、これが本当にすばらしいです。
味のタイプを表わす「香り」「コク」「キレ」と
商品タイプを表す「人気」「CP」「お燗」の6アイコン。
お酒をざっくり分けると「香り」「コク」「キレ」の3つですし、「人気」「CP(コスパ)」は酒販店だからできる表現方法。「お燗」は目的軸。
これまで目にした数多のメディアの表現よりも参考になります。

よく日本酒関連の雑誌、書籍などで「味・甘さ・酸・苦味の5段階グラフ」みたいに、細かくチャートで表していたりするのですが、商業誌の「外の人」にできる表現は、せいぜい「最低限のタイプ、方向性」「今年の傾向」くらいまでです。

日本酒は同じブランドでも商品、造り(生酒とか火入れとか季節とか)によってずいぶんことなりますし、醸造年や熟成具合によっても結構違います。さらにいうと保存状態でもかわってしまうもの。メディアの出す味の表現(特に数値)は鵜呑みにしてはいけないのです。(コンテンツ内でテイスティングした唎酒師さん感想などは参考になります。ただし、それを参考に買ったお酒がテイスティング時のそれと同じ状態ではないことが多い)

その点、このカタログはすべて「店主の利き酒の結果」という前提があるので、「酒の秋山さんのお酒が好きなら参考になる」という信頼性があります(超ローカルなパーカーポイントみたい)。さらに氷温冷蔵庫を完備するほどの専門店のため、味の変化は最小限。つまり、カタログを読んで気になったお酒を買い、カタログの表現とイコールの状態を味わうことができるということです。これは、どのメディアでも実現できていない、すごいことなのです。
さらにさらに、各商品には「要冷蔵」「冷暗所」「開封後冷」といった保存方法も明記。「本当に役立つ情報」がしっかり入っています。

酒販店ならではの視点、深さの情報をまとめたものを、商業誌と遜色のないクオリティで作れる時代となり、有益な情報をほしがっているコミュニティ(酒の秋山さんの商圏)の人たち届けることでお客さんと蔵をつなぐ。ちょっと違いますが、酒屋さんメイカーズムーブメントがここ江古田で起きているのです。

いただいたお酒は福岡の繁桝。
新酒らしいフレッシュさがよかったです。

とはいえ、これほどの情報量をまとめるのは苦労も多かったと思います。そんな秋山さんの情熱に思いをして馳せながらお酒を飲むと、これがいい肴になります。お酒の参考になるのはもちろん、お酒がすすんでしょうがない「酒の秋山商品カタログ」。気になる方はぜひ江古田へ。お酒愛とこだわりに満ちた素晴らしいお店ですよ。

もちろん、お酒を飲みます。