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はなり亭の料理から6「背肝しぐれ煮」

このコラムは読酌文庫が執筆・発表している小説「はなり亭で会いましょう」に登場する料理を取り上げたコラムです。本編未読でも問題なくお楽しみいただけますし、ネタバレにならないよう配慮した書き方を心がけております。

背肝しぐれ煮

ホルモン系・ゾウモツ系は、人によって好みが分かれる食材だろう。味や風味、食感に独特のくせがある。それを楽しめるかどうか、あるいや嫌味な部分をいかにうまく調理するかでも、答えは変わってくるのだと思う。

焼鳥や唐揚げなどが鶏料理の代表格だと思うが、鶏にも内臓があるわけで……お店によっては料理してくるものだ。

例によって「はなり亭」でも、鶏の肝やら何やらを使った料理も出している。お酒に合うよう、ちょっと濃いめの味付けにして、独特の食感を楽しめるような形で。

日本酒への好奇心が湧いてきたからか、自然と食欲が戻ってきた。つくづく自分は食道楽・飲み道楽なんだなと絢子は実感する。こうなっては、軽いおつまみとして頼んだ二品では満足できるはずがない。立ち去りかけた店員を呼び止めて、絢子は料理の注文を追加する。
「背肝のしぐれ煮と、ささみ梅肉和えをお願いします」
「かしこまりました。それぞれ少なめにしておきますね」

はなり亭で会いましょう1「巡る季節とささやかな何か」

このシーンでは、しぐれ煮にされたものを注文している。きっと臭み消しに生姜もたっぷり使ってあるんだろうな。そして甘辛くて、お酒を誘う味付けで。

この場面は以前取り上げた「揚げ銀杏」などをとりあえず頼んでみた主人公が、ちょっと気持ちが回復したので追加注文しているわけである。(何があったかは本編でご確認ください)

箸休め的につまむものではなく、しっかり味わってお酒の肴になる料理が欲しくなったのだ。もちろん、このあとお酒も追加しようと心に決めている。

ちなみに私自身は、実家両親がホルモン系を全く食べない人であったため、やや食わず嫌いをしていたところがある。成人後、友人知人らとの外食機会も増え、そういった場でレバニラ炒めであるとか、ハツ串であるとかをはじめて食べることになった。

で、まぁ……うん、美味しいかはお店による・モノによるなと。

正直レバー系は苦手な料理だ。元々実家でもあまり食卓に上がることのなかった食材であり、以前口にしたレバー料理がなんとも独特な風味が強く、涼花に食のトラウマを与えていた。

はなり亭で会いましょう1「お試しバイトとお客様」

そんなわけで、もう1人の主人公である涼花には、そんな自分のあれこれをちょっぴり代弁(?)してもらった部分がある。

でもね、美味しいなって思うお店のホルモン系料理もあるんだよね。そこに行ったときは、お酒の肴に注文している。

委託先情報

「はなり亭で会いましょう」1巻は、委託先「ぽんつく堂」「犬と街灯」「架空ストア」の通販でもお買い求めいただけます。はなり亭での飲み食いを通して、ちょっとだけ交流する関係を主軸に、2人の主人公の視点で物語が展開します。

※委託先により、販売価格・送料等が異なります。また、現在ぽんつく堂さんでお取り扱いいただいているのは、旧装丁版となります。ぽんつく堂さん取り扱い分も新装版となりました。

そのほか、大阪・文の里にある「みつばち古書部」の読酌文庫棚や、奈良・ならまちの無人書店「ふうせんかずら」(有人営業日もあり)の虎月堂さんの棚でも販売しています。お近くの方は是非どうぞ。

果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。