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はなり亭の料理から4「揚げ銀杏」

このコラムは読酌文庫が執筆・発表している小説「はなり亭で会いましょう」に登場する料理を取り上げたコラムです。本編未読でも問題なくお楽しみいただけますし、ネタバレにならないよう配慮した書き方を心がけております。

揚げ銀杏

小説「はなり亭で会いましょう」に登場する店は、自家製豆腐と鶏料理をメニューの主軸としているが、季節感あるその時々の品も登場する。

1巻は夏の終わりから秋にかけてのエピソードとなっており(最初の話は1年くらい前の時間軸になるが)、ちょっとした季節のメニューとして「揚げ銀杏」が登場している。

団体客向けのコース料理に、箸休めのようなポジションで加えられていたかと思えば、とりあえずつまめる程度のものでと注文されもする。

空腹を感じていたはずだが気持ちの乱れのせいか、いつの間にか食事をしたいという欲求が薄くなっている。(中略)とりあえずお品書きを手に取り、絢子は少しつまむ程度で済みそうなものを探す。揚げ銀杏。鶏皮せんべい。いつものように料理選びがはかどらないが、何とか軽く済みそうなものを選ぶ。

はなり亭で会いましょう1「巡る季節とささやかな何か」

あることによって気落ちしてしまい、いつものように一人飲みを楽しめない心情の主人公だったが、なりゆきで「はなり亭」に招き入れられ、何か注文しなくてはとの思いから揚げ銀杏が選ばれた料理のひとつになっている。

銀杏を素揚げしたシンプルな料理は、独特の風味と食感を楽しむメニュー。モリモリ食べるものではないし(あと銀杏には毒素があるので、食べすぎはよくないらしい)、クセがあるので苦手な人もいるだろう。季節感を楽しみつつ、ちょっと口にするのがちょうどいい料理だ。

しかし、銀杏は食すのに手間のかかるものでもある。固い殻がついているし、その前段階となる実には独特のニオイがあって、処理が大変だ。

一般家庭で料理するなら、実も殻も取り除いて下処理されたものを使った方が楽だろう。ちょっと頑張るとしても、殻付きのものを買ってきて割る程度で勘弁してほしいと思う。拾い集めて実を取り除く作業をして、天日干しして……というのも、オツなものかもしれないけれど、色々と大変だし。

委託先情報

「はなり亭で会いましょう」1巻は、委託先「ぽんつく堂」「犬と街灯」「架空ストア」の通販でもお買い求めいただけます。はなり亭での飲み食いを通して、ちょっとだけ交流する関係を主軸に、2人の主人公の視点で物語が展開します。

※委託先により、販売価格・送料等が異なります。また、現在ぽんつく堂さんでお取り扱いいただいているのは、旧装丁版となります。ぽんつく堂さん取り扱い分も新装版となりました。

そのほか、大阪・文の里にある「みつばち古書部」の読酌文庫棚や、奈良・ならまちの無人書店「ふうせんかずら」(有人営業日もあり)の虎月堂さんの棚でも販売しています。お近くの方は是非どうぞ。

果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。