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はなり亭の料理から8「親子丼」

このコラムは読酌文庫が執筆・発表している小説「はなり亭で会いましょう」に登場する料理を取り上げたコラムです。本編未読でも問題なくお楽しみいただけますし、ネタバレにならないよう配慮した書き方を心がけております。

親子丼

丼ものというと、手軽でしっかり食べられるご飯メニューだ。なかでも鶏肉と鶏卵で作る親子丼は、手に入りやすい食材なので家庭でも簡単に作れる。

まぁ、実際に丼の中で一緒になる鶏肉と鶏卵に、親子関係はない場合がほとんどだけど。

「はなり亭」では通常のお品書きではなく、賄いの一つとして親子丼があるようだ。〆のご飯ものには、鶏だし茶漬けと卵かけご飯があるようなので、恐らく親子丼は通常メニューとしては出てこないだろう。あるとしたら裏メニューかな?

親子丼と聞いて涼花のテンションは上がった。(中略)玉子も毎朝産みたてものを仕入れており、新鮮で濃厚な味だ。絶妙な歯ごたえの鶏肉と、ふわとろ濃厚な卵が、特製出汁と合わさって一つになり、ご飯の上に重なる様子を想像するだけでお腹が空いてしまう。

はなり亭で会いましょう1「淡い気持ちと憧れの人」

手軽で簡単な料理ではあるが、卵のふわとろ具合を調節するのがなかなか難しくもある。固まりすぎても味気ないし、しゃばしゃばになるのも残念だ。出汁はたっぷり、卵は固すぎずゆるすぎず、それでいて鶏肉にはしっかり味が染みているのが美味しい。

きっと、賄いで食べさせてもらえる親子丼は、素材の良さと料理人の手腕も相まって、絶品なのだろう。

鶏肉と鶏卵以外の組み合わせでも成立する親子丼というと、サーモンとイクラの海鮮親子丼だ。

こちらは材料の単価が上がってしまうので、ちょっと奮発したメニューになるだろうか。調理らしい工程はほとんどなく、素材の鮮度が美味しさの決め手になってくるだろう。

あと、イクラはなるべくたっぷりが良いよね。丼の中の割合で子どもが少なすぎると貧相であるし……親子丼も少子化はよろしくない。

委託先情報

「はなり亭で会いましょう」1巻は、委託先「ぽんつく堂」「犬と街灯」「架空ストア」の通販でもお買い求めいただけます。はなり亭での飲み食いを通して、ちょっとだけ交流する関係を主軸に、2人の主人公の視点で物語が展開します。

※委託先により、販売価格・送料等が異なります。また、現在ぽんつく堂さんでお取り扱いいただいているのは、旧装丁版となります。ぽんつく堂さん取り扱い分も新装版となりました。

そのほか、大阪・文の里にある「みつばち古書部」の読酌文庫棚や、奈良・ならまちの無人書店「ふうせんかずら」(有人営業日もあり)の虎月堂さんの棚でも販売しています。お近くの方は是非どうぞ。

果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。