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絵本の「絵」と「画」の違いは、なに?

読者さんの質問にお答えします。


ブログとは別に発行しているメルマガ読者さんから
質問がありました。


ずーっと疑問だったことお尋ねしたく

絵本の表紙に、作〇〇、絵〇〇、など、
著者の名前が書いてありますよね。

時々、画〇〇、と書いてあるものがあります。
絵と画、何か違いがあるのでしょうか?


かなりマニアックな、いいとこついたご質問!
絵本をじっくりと見ているから
気づいたのだと思います。


大人の本と、絵本の決定的な違い

まず大前提として
大人の本だとたいていは、書き手の名前だけが
表紙に書いてあります。

もし、絵がついていても
「イラスト/○○○○」などと、
小さく表現されることが多い。

書き手がメインで
絵は雰囲気作り
というニュアンスでしょうか。


でも、絵本の場合は違います。

お話の力と、絵の力とが一体化して
初めてひとつの作品として命を吹き込まれます。

つまり、どちらにも作品を作った当事者として
表紙にも、奥付にも
著作権者としても名前が並ぶのです。

以上を抑えたうえで、


絵と画の違いって、なんでしょね!


ここまで読んでいただいて、大変言いにくいのですが

「絵」と「画」

この2つに明確な違いの決まりはありません。


では、なぜ異なるのか。

一般的には、ほとんどの絵本は「絵」と表記されています。
なにせ、絵本ですから。

でも、質問者さんが聞いてこられたように、
「画」と表記されたものも存在します。

『うらしまたろう』時田 史郎 再話 秋野 不矩 画 福音館書店
『よあけ』ユリー・シュルヴィッツ 作・画  瀬田 貞二 訳 福音館書店
『花の童話集』宮沢 賢治 著  岩崎 ちひろ 画 童心社

こちらは、岩崎ちひろが絵を描いています。それならば、岩崎ちひろ作品が、すべて「画」なのかというと、
そうでもありません。
「絵」と表記してある本のほうが圧倒的に多いのです。


『おにたのぼうし』あまん きみこ 文 岩崎 ちひろ 絵  ポプラ社


「画」「絵」に関しては、
明確な決まりがあるわけではなく、
絵を手掛ける絵描きさんご本人の希望や
出版社が「絵」ではなく「画」にしようと
決めるケースがほとんどです。


以下は、あくまで、わたし個人の感覚ですが
日本画もしくは日本画っぽいスタイルのとき
「画」になるケースが多いような気がします。

『よあけ』は、海外の作家ですが、
じゅうぶんに日本画的な世界観がある絵本です。

「画」って、「絵」に比べると、
ちょっと格式高い印象を受けます。
みなさんは、どんな違いを感じますか。


「作」と「文」問題もあります。

ここで気づいた方もいるかと思います。

作者の側も同じように、「作」と「文」の2つの表記があります。
作・文のほうは、絵よりもう少しはっきり違いがあります。

基本的にお話をゼロから作った場合は「作」です。
作った人、作者という意味です。


では、「文」の場合はどうでしょう?

「お話を作った」とまでは言えないけれど
自分の文体として表現した場合。

例えば、
〇昔話は、語り継がれていたもので作ったわけではないので、文。
〇原作者がいて、文を整えたので、文。
〇作というよりは、詩的な要素が強いので、文。

のケースがあります。

具体的には、これらの本がそうです。

『十二支のはじまり 』岩崎 京子 文 二俣 英五郎 画 教育画劇
くすのきしげのり 原作  いもとようこ 文・絵  ‎ 佼成出版社
『つくる』谷川 俊太郎 文  福田 岩緒 絵 復刊ドットコム

‎ 

質問者さん、こんなお答えでいかがでしょうか。
少々曖昧なお答えになりました。

バシッと正解はないと思うのですが、
もし「正解、あります」と言う方は
ぜひご一報ください!


最後に、わたし個人は、編集30年の中で
「画」にしたいとおっしゃった方は
いらっしゃいませんでした。

「絵」「画」「文」「作」の違い。

絵本を見るときの、ひとつの視点として
ご利用いただけたら嬉しいです。


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