見出し画像

神様だけど人間だった。

 11月6日に侍ジャパン対読売ジャイアンツの強化試合を観戦した。ネット裏10列目(事実上5列目くらい)という良席、しかも三塁側ダグアウト上だったため、侍ジャパンの選手もよく見え、ジャイアンツベンチもよく見え、かつ、捕手推しの私にとってはホームが見える満足席だった。

 普段、遠いベンチにいる一流選手も間近に見ることができた。今の注目はやはりこの方、「村神様」こと東京ヤクルトスワローズの、そして日本の主砲、村上宗隆選手だろう。22歳にして56本塁打。55本で足踏みと思いきや、最終戦で打ち込み日本人選手最多本塁打を更新した貴方を神様と呼ばずしてなんと呼ぶ。ご本人はことあるごとに「自分は神様ではなのでそっとしておいて欲しいですね」とインタビューで答えている。この日も格下のピッチャーだったとはいえ、容赦なく2打席連続ホームラン。二発目は私はトイレに行っていたのだが、ホームランの音声が女子トイレにも流れ「は?さっき打ったよね?ハイライト?」と思ったほどだ。

 ただ、村上選手は才能も秀でているのだが、当然のことながらそれだけではなくて、とにかくよく体を動かしているのが印象的だった。テレビ中継だと打席や守備が終わっってベンチに帰るとすぐに大きな声で仲間を鼓舞する「村上監督」の様子がよく流れるが、実際に見ると、とにかく立っている時にぼーっとただ立位になっているわけでもない。例えばピッチャーが代わる時にまずは見るだけ、次に構えてみるという選手もいるが村上選手は「見るし構える」のだ。片時も体が静止していることはない。22歳という若さでも、村上選手にとっては1秒たりとも無駄な時間はないのだ。腰を細かく動かしたり、バットを背中まで回して体が常に柔らかい状態にしている。あの大きくて肉厚に見える体はとてもしなやかで、全ての関節の可動域が広く、かつ、過剰ではない。打席や守備だけでなく、控えの時も惚れ惚れするような身体可動だった。

 この頃に他球団の同世代の選手のあまり良くないプライベートに関する報道があり、良い例として村上選手のことが挙がっていた。彼はトレーニングや体のケアをとても大事にしていて、貪欲にそのやり方を目上の選手に聞きに行くという。畑違いだが、仕事で若手を指導する際に「今の子は自分から聞きにこないから促すような声かけが必要」とよく習ったが、村上選手を見ると「今の子」という言葉で括りを作ることは良くないなとか、彼をただ非凡な存在とするばかりでなく、良いお手本の一例とすることも有益かもしれないと思った。もちろん「今の子」ばかりでなくそのお姉さん世代の私たちも然り。

 さらに驚いたのが、試合後のヒーローインタビューで一緒に壇上に上がった山田哲人選手が話している最中、話を聞きながら少し体が揺れていてよく観察していると、足腰をわずかに動かしていて、これは勝手な想像だが、これもまた直立不動で体を固めないようにするために緩やかに動くようにもう村上選手の体にインプットされてるんだろうと思った。見る人によっては落ち着きがないだけとか思われそうだが、恐らくあれは元々意味づけをした動きなのだろうとひたすらに感心させられていた。

 近くで見たこともあり、多少なりとも村神様フィルターがかかったかもしれないが、そのフィルターを取っても、この人が56本もの大量のホームランを生産したわけが垣間見れたような気がした。
 後日、日本外国特派員協会での記者会見で「王さんの記録を目標としてしまったから55本で足踏みをしてしまった。初めから61本にした方がよかったかもしれない」と話していた。村上選手の目標はまるで青天井。しかし、青天井は才能に驕らず、小鳥の歩幅ほどの努力からの積み重ねであるということをこの若武者に教えていただいたような気がした。

 村上宗隆選手、やっぱり貴方は村神様です。
でも、村神様になるためには人間、積み重ねですね。素晴らしい学びをありがとうございました。

この記事が参加している募集

#野球が好き

11,329件