見出し画像

麻雀プロ試験を受ける前に(プロテストの準備・対策について)

麻雀プロ志望者の急増

前回の記事「麻雀プロとしての生き方」でも少し話したが、Mリーグの発足に端を発して、現在、麻雀プロになりたい人が老若男女問わず急増している。15年前に比べればその志望者数は圧倒的で、人気のある団体では合格率が以前の何倍もあるらしく、それはやる気と年会費さえあれば誰でも簡単になれるものではなくなってきた。

しかし麻雀プロ(業界)に憧れる人が増えてきた一方で、「ほとんど麻雀牌に触ったこともない人」や「雀ゴロのおじさん」風の人でさえも、特に準備もせずにプロ試験を受けるようになっていて、そうなるとやはり残念な結果となることが多くなってしまう。また前回の記事で書いたような麻雀業界の厳しさを理解せずに面接に臨み、合格だったとしても意気消沈して辞退する、というケースもある。そこで今回の記事では、プロ試験を受ける前に何をすべきか、ということを自分の経験も踏まえて具体的に示したい。それは①麻雀業界の現状把握と麻雀プロ団体の比較、②自分の実力把握と実戦慣れ、③自己研鑽・実績作り、④試験対策、⑤プロ活動に集中できる環境づくり、の5点であり、この記事によってプロ団体が求める人材と受験者の思い描いているプロ像が多少でも合致するようになればうれしく思う。

①麻雀業界の現状把握と麻雀プロ団体の比較

まず前項でも書いたが、意外と麻雀プロという存在が一つの職業であるとの認識を持つ人が多少なりとも存在している。しかしはっきり言って、麻雀プロはその肩書きだけでは食えない。多少麻雀が強かったとしても(例えば天鳳位になったり、一度プロのタイトルを取ったとしても)それだけで生活費を十分稼げるほどの仕事が来ることなんて今のところない。ということは麻雀プロとしての生活以外にも、何か生活費を捻出する手段がなければならないのだが、それについては前回の記事を見てほしい。

以上のような厳しい世界だとしても麻雀プロになりたい人が次にすべきこと、それはいくつかの麻雀プロ団体から一つ、所属したい団体を選択することである。麻雀業界には主要5団体というものがあるのだが(日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀連盟、最高位戦日本プロ麻雀協会、麻将連合ーμー、RMU)、それぞれシステムや規模、ルールが異なっているため、最も自分に合った団体を選択する必要がある。(*他にもいくつかの団体があるが、色々な大人の事情があるためここでは割愛する。)

その上で考慮しなければならない点としては、❶場所(東京在住であれば特に問題ない。ただ地方在住なら、必須であるリーグ戦参加のために少なくとも月一回程度はその会場に通う必要があるため、所属できる団体の選択肢は限られる)、❷費用(年会費や登録費、大会参加費などの必要経費は団体によって異なる。また遠方なら交通費なども考える必要がある)、❸時間(団体によってリーグ戦をする日程が平日であったり休日であったりと異なる。それを理由に他の団体に移籍する選手もいる事から、最初から調べておき、自分の勤務日以外にリーグ戦がある団体を選択した方がいい。)、❹ルール(全ての団体で麻雀ルールが異なる。基本的なところは同じだが、オカやウマなどの順位点、偶然役の有無、さらに細かい部分で言うと罰則の内容までがそれぞれ独自のものを採用している。普段打ち慣れているルールと似たものか異なるものかはリーグ戦の成績をも左右するので慎重に選択した方がいい。)❺その他(⑴所属プロへのサポート体制、⑵リーグ戦などでの昇級システム、⑶組織の規模/所属プロ人数、⑷提携している麻雀ゲーム、⑸組織の雰囲気、⑹テストの難しさ、など団体に関するものや、⑺個人的な人脈の有無、⑻尊敬する麻雀プロの所属団体かどうか、など個人的な判断要素もある。)などの判断要素があり、完全に自分の希望に当てはまる団体はないと思うが、5つの団体の中から、最も自分に合った団体を見つけ出すことはできるだろう。

いずれ紹介できたらと思うが、これらの団体間における違いは細かい部分も入れると数多くあり、私自身もあまり把握していないため、ここに書き並べることはできない。代わりに私自身が日本プロ麻雀協会を選択した理由だけ参考としてお伝えしたい。まず❶場所に関して、現在私は東京に住んでいるため問題なく、❷費用については正確な数字が公表されていないので具体的な金額はわからなかった。規模の大きい3団体(連盟、協会、最高位戦)は比較的高く、麻将連合とRMUは低いイメージはあったものの、注目度の面で大きい団体の方がいいかなとも思った。

やはり最も重要視したのは❸時間と❹ルールで、リーグ戦などが主に週末に行われていること(平日は仕事なので行けない)とフリー麻雀など打ち慣れている一般的なルールに最も近かったというのが協会を選んだ理由だ。また、❺協会内に知り合いが少しいるということや、団体の規模が大きいということもあったのだが、主な理由は以上の2つだった。
ただ人によって重視するポイントは違うと思うので、皆さんにはできるだけよく考え、後悔しない選択をしてほしい。

②自分の実力把握と実戦慣れ

麻雀プロがどのような存在か、そして自分に合う団体が決まればいよいよプロ試験の申し込み…でもいいのだが、その前に自分は麻雀プロとしての実力が備わっているのか、ということについて少し考えてみてほしい。「フリーに入ったことがないけど、仲間内ではいつも勝ってるし、ゲームでもあまり負けてないと思う」くらいが理由ならもう少し別の場所で自分の雀力を測った方がいいかもしれない。というのもやはりそれぞれのグループによってレベルはまちまちであるため、特定の相手とだけやっていては、自分の実力がどの程度なのかを知ることは非常に難しいからだ。

そこでやはりまずおすすめなのは天鳳や雀魂といった(プロを含めた)不特定多数のプレイヤーが参加するネット麻雀を打ってみることだ。少し時間はかかるかもしれないが、6段や7段くらいまで達成、あるいは特上卓で勝ち越すくらいの実力があれば、プロとしての最低雀力は保持していると考えてもいいと思う(ただ団体によってプロテストの合格率に差があるので一概には言えない)。また、フリー雀荘で腕試しをしてもいい。地方であればフリーでも雀力にもバラツキがあるため不安ではあるものの、仲間内よりは様々なプレイヤーと対戦することができるので自分のレベルを測る目安にはなるはずだ。

画像1

画像2

ただし麻雀がランダム性の高いゲームであることから、ネットでもフリーでもいいので最低でも合計500戦くらいは打つ必要がある。そしてその成績をしっかり残しておき(レベルが高いとは言えないので、天鳳の一般卓や上級卓、雀魂の銅の間、銀の間、金の間での成績は入れない方がいい)、それでも勝ち組に入れるのならばプロになっても戦えると判断してもいい。ただプロとして活躍したいのならばそれ以上、つまり天鳳で9段以上、雀魂なら雀聖・雀天以上相当の実力が求められる。

ネット麻雀で自分の雀力が分かったとしても、もう一つ注意したいことがある。当然の事であるが、麻雀プロであるからにはスムーズな手さばきや素早い点数計算をする必要がある。現代ではネットゲームで麻雀を覚え、フリー雀荘などのリアル麻雀はほとんど経験がないにもかかわらず雀力は高い、という人もいると思う。ただそうなると、実力があるにもかかわらず点数計算が素早く/正しくできなかったり、手つきのおぼつかなさから初心者とみなされる不安がある。麻雀強者を自称するだけならそれでいい。しかし麻雀プロになるのならば「強い」ことだけではなく、一目で「強そうに見える/上手そうに見える」ことや「見た目のスマートさ」も求められることから、そのようなリアル麻雀への「慣れ」は必要不可欠である。

またフリー慣れしている人でも、競技麻雀に慣れてなければ戸惑う場面がいくつかあるので注意してほしい。開局時でのことだが、現在は多くの雀荘で自動配牌卓を使うことが多くなっていて、そうなると自分が親でサイコロを振った後、どこから牌を持ってくるか(ドラをどこで開けるか)が分からなくなることがある。実際のところ、私も最近はずっと自動配牌の卓でばかり麻雀を打っていて、更に実技試験では緊張していることもあってドラの開門場所を間違えてしまった。そのため皆さんには実技試験前に自動配牌卓以外での練習をお勧めしたいと思う。

画像3

また、フリーにはよく行くが競技麻雀の大会には参加したことがない人は一度参加して、競技麻雀の作法を見ておいたほうがいいかもしれない。というのも、実技試験は実際に競技麻雀の対局方式で行われ、受験者は細かい部分までその方式に従わなければならないからだ。場所決め、親決め、対局中の所作など、競技麻雀独自の(更にはその団体独自の)方法・マナーが存在するので、実技ではそれを意識して臨む必要がある。その団体に知り合いがいなければ準備するのは難しいので(私も特に何もしていかなかった)、団体のホームページなどを見て勉強するのもいい。ただ大会に参加していれば多少やり方も覚えるし、実技試験ではトーナメント戦の戦い方も求められるので、少しでも競技麻雀・トーナメント戦に慣れるためにぜひ参加してほしいと思う(正直に言うと私は全く大会には参加したことはなかったが、プロになる前にしておけばよかったと今になって思う)。

③自己研鑽・実績作り

ここまで来ればある程度麻雀プロになる素地はできたと思うが、やはり面接でのアピールやプロ入り後の活躍のきっかけとして、雀力の高さを証明できるもの、そしてプラスαの何かがほしい。つまり受験前に、❶ある程度雀力をあげる努力をし、❷その実力でなんらかの実績を上げ、❸麻雀以外でのアピールポイントを準備しておく必要がある。

❶雀力アップ
まず麻雀の実力をアップさせる方法だが、これは様々な方法があるので自分に合ったやり方で進めてほしい。おすすめとしては、まず座学、つまり勉強することだ。今は昔と違い多くの戦術書が出回っているので、まずは自分に合った本を探して読んでみるといい。私もいずれ書きたいが、麻雀戦術書のレビューの記事がインターネットで見れるので、参考にして自分に合った一冊を選んでいただきたい(私もいくつか記事を書いているので興味があれば読んでほしい)。また、YouTubeやnoteでもそういった戦術や実戦譜が紹介されているのでできる限り目を通し、ノートに整理して脳にインプットすれば、麻雀に関する基礎知識はある程度身につくだろう。あとは動画サイトで実際のプロの対局を見たりすることも効果的だと思うし、勉強した戦術やプロの真似事なんかを実戦対局で試していけば少しずつ麻雀の実力が上がっていくと思う。

画像4

❷実績作り
ある程度実力がついたと思ったら、天鳳や雀魂で最上級レベルの卓で打つことを目標に頑張ったり、何か麻雀の大会に参加して結果を出せれば面接の際のアピールポイントとなる。実際私も面接のとき、「天鳳9段」ということを伝えるとそこにいた多くのプロからお褒めの言葉をいただくことができ、その後は自信を持って実技試験にも臨むことができた。私の場合は幸運にも試験日までにその実績を作ることができたのだが、もし試験が2か月早かったら私は9段にはなっていなかった。つまり、早く始めれば始めるほど実績を作るチャンスは増えるので、実力アップと実績作りは同時並行的に頑張ってほしい。(プロテスト受験時の成績↓ この時がピークで最近はずいぶんポイントを落としてしまった…。)

画像5

❸麻雀以外でのアピール
最後に、麻雀以外でのアピールも意外と大切である。前項で「実績があるといい」と言って不安になった人もいると思うが、具体的な実績を持っている受験者は実際のところあまりいない。とはいえ、団体にとって1日で受験者の実力を筆記テストと実技試験だけで測りきるのは少し難しい。でははっきり実力差がわからない場合どうやって合否の判断基準とするのか。それはその人の印象、礼儀作法、一般常識、卓上での振る舞いなどの人格的な側面、学歴、年齢、性別などの社会的な側面、それに特技、服装、表情などのタレント性など、その人に関する様々な側面を評価対象とするのだ。特に麻雀「プロ」となれば「見られる」ことも意識しなければならないため、ファンや麻雀番組の視聴者に喜ばれるようなキャラクターや態度を意識すると高評価になりやすいと思われる。学歴や特技は急に作ることはできないが、映える服装を準備し、礼儀正しい受け答えを意識しておけば、実績がなくとも十分戦えると考えていい。

④テスト対策

さて、麻雀プロとしての覚悟もできて、自分に合う団体も見つけた。プロとしてやっていくだけの雀力にも自信があり、実戦練習もした。実績はまだあまりないが、面接でアピールすることはもう決めた。となればあとは筆記試験対策のみ。最後の追い込みである。が、どのように対策すればいいのだろうか。
それは今まで出されてきた問題を解くことから始まる。親切にも、多くのプロ団体が過去問題をホームページ上に載せているので、まずはそれを解いていってみるといい。団体間で多少問題は異なるものの、基本的な麻雀問題(何待ち、点数計算、テンパイチャンス)は全ての団体の問題に入っていて、その他の麻雀問題(団体の競技規約、麻雀用語、タイトルホルダーの名前、トーナメント戦での点棒計算)なども出題されることが多い。また、一般教養(協会、麻将連合)や論文問題(協会)も出すところがあるので、団体によってそれぞれ対策するといい(ホームページに載っている問題だけではないかもしれないので、一応それ以外の問題にも目を通しておいた方がいいかもしれない。)下にリンクを載せておくので、ぜひ練習してほしい。面白いし、雀力アップにもなるので、プロ志望ではない人も一度やってみるといいと思う。(*すみません、RMUは見つけられませんでした。)

4つの団体の過去問題を合わせれば何度も練習できると思うので、もし自信がない方は出来る限りたくさんの問題をやってみてほしい。最初は時間制限なしでもいいので、少しずつ解答スピードをあげていき、最終的には時間内にすべての問題を解くことを目標に頑張ってほしい。先ほども言及したが、特に基本的な麻雀問題(何待ち、点数計算、テンパイチャンス)は全ての団体のプロテストで出題されるので、集中的にやってもいいかもしれない。いずれお伝えできればいいが、何度かやっていると早解きのコツも感覚としてつかめてくると思うので、最初はとにかく量をこなすことが大切だと思う。

⑤麻雀に集中できる環境づくり

最後に、麻雀プロになったあとで後悔しないように、自身の環境について改めて考えてほしいと思う。今回の記事でも前回の記事「麻雀プロとしての生き方」でも話したが、麻雀プロはまだまだ世間で十分認められていない存在で、自分はそれでよかったとしても親しい人(両親・恋人・配偶者など)にとってはいいとは思わないかもしれない(むしろその可能性の方が高い)。それも当然で、麻雀プロといってもそれだけでお金がもらえるわけでもなく、時間も使う。まだまだ社会的な立場も弱く、麻雀への理解があまりない人にとっては厄介なもの以外の何物でもなく、もしかすると「私と麻雀とどっちが大切なの?」とまで言われるかもしれない。

そうならないためにも、少しずつ周りの人たちを説得する努力はしていかないといけないし、多少妥協もしたほうがいいと思う。大学生であれば麻雀だけに没頭するのではなく授業にも出たほうがいいし、社会人で麻雀プロになって更に雀荘で働きたいと思うのならば後者は少し考え直した方がいい。麻雀は面白すぎるがゆえに人間関係に亀裂を生む可能性が高い。しかし麻雀で勝ち続けたとしても、それだけでは人間関係を作り出すことはできない。麻雀と同じように、人生もバランスを取りながら楽しんでほしいと思う。

最後に

以上、今回は夏休みに書き残していた麻雀プロテストの対策・準備について説明してきました。長かったですが最後までお付き合いいただいた方には感謝したいと思います。これからもプロ活動を行いながら、気づいたことや天鳳での振り返りなどを記事にしていきたいと思います。またフォローや「スキ」をしていただければ励みになりますのでよろしくお願いいたします。それではまた!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?