矢田部吉彦

東京国際映画祭で作品選定ディレクターを担当していました。2021年4月よりフリーランス…

矢田部吉彦

東京国際映画祭で作品選定ディレクターを担当していました。2021年4月よりフリーランス。大抵映画のことを考えてますが、ランニングしたり、落語行ったり(自分でやったり)もします。

最近の記事

カンヌ映画祭2024日記 Day12

25日、土曜日。ついに映画祭最終日!本当に、あっという間。6時起床、昨夜書いた日記をアップして、8時に朝食を食べていると、本日10時だと思っていた1本目の開映時刻が9時であることに気付き、大慌てで外に出る。 本日は映画祭の中心部からバスで30分ほど行ったところにある「Cineum」というシネコン会場に行く予定だったのだけど、もうバスを待っていては間に合わない。絶対に逃したくない上映だったこともあり、タクシーに飛び乗って会場へ。なんとか間に合い、安堵。最終日だということで、

    • カンヌ映画祭2024日記 Day11

      24日、金曜日。昨夜は日記ブログを書き切れずに寝落ちしたので、5時半起床でパソコンに向かう。『Bird」の余韻を思い出しながら、本日も重要作が待っており、いそいそと外へ。 本日も晴れ。序盤は天気イマイチだった今年のカンヌ、中盤から回復して良かった! 9時から、コンペで、インドのパヤル・カパディア監督による『All We Imagine As Light』。ムンバイの病院に勤務する看護師の女性を中心にした、3人の女性の物語。 小声のモノローグが連なる形でムンバイの町の

      • カンヌ映画祭2024日記 Day10

        23日、木曜日。6時起床。例年、最終日の土曜日に、コンペの追加再上映が組まれることになっていて、そのスケジュールとチケット予約が今朝7時に解禁になるという情報があり、また7時にパソコンの前に待機する。でも、結局7時を回っても何も出ない。どの作品が上映されるかも分からないので、予定が立たない。まあ、毎年のことなのでしょうがないのだけど、毎年少しずつルールが変わるので、なかなか厄介だ…。 本日も晴れ。快晴とまではいかず、薄曇り。風も強い。気温は昼で20度くらい。 本日のス

        • カンヌ映画祭2024日記 Day9

          5月22日、水曜日。6時20分起床のつもりが、気付くと6時40分。連日4時間睡眠でもアラーム前に目が覚める時差ボケマジックがとうとう薄れてきた?とはいえ、もう朝のチケット予約作業が無いので、余裕で支度して、外へ。本日も朝から快晴。ただ、気温はさほど上がらなそうで、Tシャツにジャケットを羽織る。 8時半から「ある視点」で、フランスのアリアンヌ・ラベド監督による長編第1作『September Says』。舞台はイギリスで全編英語の作品。 セプテンバーとジュライという10か

        カンヌ映画祭2024日記 Day12

          カンヌ映画祭2024日記 Day8

          5月21日、火曜日。6時20分起床。4日先の上映が予約できる7時からのチケット争奪戦も、本日が最後。終わりが近づいてきたことを思い知らされるようで、少し寂しい。とはいえまだまだ中盤戦、黄昏れている場合ではない。気合を入れ直して、外へ。今日は朝から晴れている。 8時半から、コンペでアリ・アッバシ監督新作『The Apprentice』。ドナルド・トランプの若き日々を描く驚きの内容で、早くから話題になっていた作品だ。 父の築いた不動産事業を継ぐ形でホテル事業をまずは手掛け

          カンヌ映画祭2024日記 Day8

          カンヌ映画祭2024日記 Day7

          20日、月曜日。薄曇りで日差しは弱め。雨もあるかも?6時20分起床、ルーティンを経て、8時に「批評家週間」の会場「ミラマール」へ。 8時半から、「批評家週間」のコンペ部門出品作で、中国系米国人女性のコンスタンス・ツァン監督による長編第1作『Blue Sun Palace』。NYのクイーンズ地区を舞台にした中国系の男女の物語。女性は、勤務するマッサージ店でとある悲劇に見舞われ、同様にその悲劇を嘆く男性との距離を探っていく…。という要約は少し不正確なのだけど、孤独な男女の心の

          カンヌ映画祭2024日記 Day7

          カンヌ映画祭2024日記 Day6

          19日、日曜日。5時半起床。まだまだ時差ボケマジックが健在で、意外にすんなり起きられる。昨夜中断した作品をパソコンで最後まで見て、7時のチケット予約をこなし(順調)、外出して朝食、そのまま「監督週間」の会場へ。8時45分開映の作品が8時15分には開場し、すんなりと良き席を確保。 アメリカのカーソン・ランド監督による長編1作目『Eephus』(扉写真/Copyright Omnes Films)。ああ、これはよいなあ。 アメリカのどこであるのかはちょっと分からなかなったの

          カンヌ映画祭2024日記 Day6

          カンヌ映画祭2024日記 Day5

          18日、土曜日。6時起床からの、ルーティンを経て、上映へ。本日も晴れ。気持ちいい。 8時半から、コンペのヨルゴス・ランティモス監督新作『Kind of Kindness』(扉写真/Copyright Searchlight Pictures)。これは、既に『憐みの3章』というタイトルで日本の公開が決まっているのですね。50分ほどの短編3本からなり、2時間45分。しかし全く時間を忘れる面白さで、僕は3本目が終わった時に、4本目無いの?と思ったくらい。3つの異なる物語を、同じ

          カンヌ映画祭2024日記 Day5

          カンヌ映画祭2024日記 Day4

          17日、金曜日。本日は朝からスカっと晴れている。でも朝は肌寒い。今日こそ雨は無いかなと期待しながら、Tシャツにジャケットを羽織って外出。 8時半からのコンペの上映のチケットは取れていたのだけれど、少しでも良い席を確保すべく、7時50分には劇場入り。チケットは、エリア指定の自由席。メイン会場の「パレ」は巨大で、1階の「オーケストラ」エリアが取れることは稀で(これは自動的にバッジの効力別で振り分けられるのでどうしもようない)、大体は2階の「バルコン」エリアになる。ここの後ろに

          カンヌ映画祭2024日記 Day4

          カンヌ映画祭2024日記 Day3

          16日、木曜日。6時起床。シャワー、チケット予約、などのルーティン済ませて、外へ。寒い。雨がいつ降ってもおかしくなさそう。本日も気温は20度を超えないみたいで、もう少し辛抱が続く…。 本日の分の上映チケット予約日(つまり4日前)が、カンヌ入り渡航の移動中だったため、1枚も取れていない。なので、チケット無しの人も空席次第で入れる「ラスト・ミニッツ」の列に並ぶ1日になる。昨年の経験だと、それなりの時間をかけて並んでいれば、かなり入れる。なので、楽天的。 9時からのコンペ『

          カンヌ映画祭2024日記 Day3

          カンヌ映画祭2024日記 Day2

          15日、水曜日。6時起床。毎朝ルーティンの7時のチケット予約は、まあまあかな。やはり夜帯の「ソワレ」と呼ばれるコンペの公式上映はなかなか取れない。まあ複数回再上映があるので、それらを狙えば大丈夫。 朝食は現在宿泊しているホテルではなく、近所にあるかつての定宿で頂いているので外に出ると、寒い。また雨。今年のカンヌは寒いのか…。着るものがない…。Tシャツと薄手のパーカーにジャケットを重ね着してパツンパツンになる。仕方がない。 本日は9時半から、「監督週間」のオープニング作

          カンヌ映画祭2024日記 Day2

          カンヌ映画祭2024日記 Day0&1

          今年もカンヌの季節がやってきました。円安で泣きそうというのは、日本からカンヌ入りする人々の挨拶代わりの言葉になっていましたが、当局の介入は間に合わず。こればかりは、しょうがない。行ってきます。今年も日記を出来る限り書いてみます! <5月12日> 12日、日曜日。4時半起床でパッキングして、6時に家を出て新宿からリムジンバス乗って羽田へ。結構混んでいる。9時40分のルフトハンザでミュンヘンへ。機内はほとんど寝られない。最近はめっきり欧州行きの便で寝られなくなったな…。

          カンヌ映画祭2024日記 Day0&1

          カンヌ映画祭2024予習「批評家週間」編

          2024年カンヌ映画祭予習ブログの5回目は、「批評家週間」を予習します。長編2本目までを対象にした若手発掘部門。とはいえ、既に短編で頭角を現した作家が満を持して長編を発表する場であり、実は「発掘」というよりは待望の世界デビューの場、という感じです。近年は公式部門の「ある視点」が若手重視を打ち出してきたことで、「監督週間」を含めた3部門で若手を取り合っている感もありますが、やはり「2本目まで」を看板に掲げ、63回目を数える「批評家週間」の伝統の力は強いものがあります。ここでは短

          カンヌ映画祭2024予習「批評家週間」編

          カンヌ映画祭2024予習「監督週間」編

          2024年のカンヌ映画祭予習の4回目は、「監督週間」部門です。厳密に言うとカンヌの「公式部門」ではないのですが(事務局も異なる)、実質的にはカンヌの一部であって、監督週間に選ばれた作品も堂々たる「カンヌ作品」です。23年からジュリアン・レジさんが新ディレクターに就任し、今年が2年目。レジさんは23年12月に来日して「監督週間 in Tokio」の開幕に立ち会ってくれました。2年目の選定に対して並々ならぬ意欲を示していたのが印象的です。果たしてどのようなラインアップになったのか

          カンヌ映画祭2024予習「監督週間」編

          カンヌ映画祭2024予習「特別上映」編

          カンヌ2024予習の3回目は、「特別上映」などの「その他の公式部門」を予習します。「公式部門=Selection Officielle」には、「コンペティション」と「ある視点」に加え、その他のサブ部門が細分化されて存在します。その他の部門の違いはなかなか分かりにくいのですが、「その他」という呼び方は完全に不適切で、超重要作が入っているので絶対にチェックが必要なのです。 「公式部門」のうち、ここでは「野外上映」と「クラシック」は割愛します(とはいえクラシックは現在とても重要な

          カンヌ映画祭2024予習「特別上映」編

          カンヌ映画祭2024予習「ある視点」編

          2024年カンヌ予習ブログの2回目は、「ある視点」部門を予習します。賞がある「第2コンペ」的位置づけですが、かつてはメインコンペからこぼれた作品が入る(ように見える)ことがしばしばありました。2021年に大幅に方針が刷新され、以降は若手プッシュ部門に切り替えています。よって情報量が少ない作品も多く入りますが、それだけ楽しみな部門でもあります。 【ある視点部門】 〇『Norah』タウフィク・アルザイディ監督/サウジ・アラビア アルザイディ監督は、Internet Mo

          カンヌ映画祭2024予習「ある視点」編