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入社1年目からの老害化対応マニュアル(概念編)

 こんにちは。米川(@yoneshi0320)です。

今回は、企業で老害になりたくない人に向けた内容です。
ぼくなりの概念整理と予防の観点から、まとめました。お時間のない方は、以下の要約だけで大丈夫です。


15秒で読める要約

<結論>
– 老害化する人は、自分への問いが変化したのをキャッチアップできない人

<背景・理由>
– 老化とは、分裂と変化ができなくなること
– ヒトの死の一因は、老化した細胞が”毒”を出すから
– すべてが変化することはない
– 老害の「説教、思い出話、自慢話」は、採用から生まれる
– 変化を織り込んでおくと、47倍成長できる
– 老害化しない具体的なアクションは
実践編


 年齢、ではなく。

 近年、バズワードから日常に定着してきた「老害(ろうがい)」。
超高齢化社会の日本と相性がよいからか、ビジネスシーンでも聞くようになりました。

状況として、「新しい もの/意見 を否定する、妙齢以上の方」に向けて使うことが多い言葉。
一方で、常に斬新な意見を出し、挑戦を繰り返す60代、70代もいます。

この差はいったいどこから来るのか?

老い、ゆえに害?

 まだ新しい言葉。ゆえにWEBからの出典ですが、調べると次の定義が出てきます。

組織や社会で幅を利かせすぎて言動が疎まれる高齢者、
あるいは、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な振る舞いによって若者に必要以上の負担や迷惑をかけている高齢者などを指す表現。

出典:新語時事用語辞典

つまり「害」、ここでは、疎まれる言動や傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な振る舞い の理由を、「老い」に結びつけている概念、といえます。

そして(隠された)前提に「老いにより、ひとは組織や社会における害になりやすい」がある。

では、その「老い」について、日本最高学府から学びます。

分裂不可と放毒

 東京大学 定量生命科学研究所 教授の小林武彦さんは、著書『生物はなぜ死ぬのか』で、ヒトの老化を次のように解説しています。

”失われた細胞を供給する「幹細胞(かんさいぼう)」があります。
(…)
幹細胞は、幹細胞と新しい細胞に分裂します。幹細胞の老化は(血液や骨をつくる)新しい細胞の供給が悪くなるので、全身の機能に影響が出ます。
(…)
もう一つの加齢による組織の機能低下の原因は、老化した体細胞がばらまく”毒”です。(…)(老化した細胞は、毒によって)炎症反応を持続的に引き起こし、その結果臓器の機能を低下させ、糖尿病や動脈硬化、がんなどの原因となることが知られています。”

小林武彦『生物はなぜ死ぬのか』講談社現代新書、2021年

つまり「老い」とは、「分裂と、それによる変化ができなくなること」。
さらに「老害」は前述の概念と合わせ、「組織に毒を放出するか否か」が構成要素です。

逆ロールモデルに学ぶ

 裏を返せば、分裂と変化を繰り返し、毒を放出しなければ(組織において)、老害にはなりえません。
ではなぜ、組織において老害は生まれてしまうのか?

「生き様がかっこいい70歳以上の男性有名人」や「心が広そうな男性有名人」 ランキング上位、俳優の高田純次さん。

彼は2015年、日本テレビ『1分間の深イイ話』で、活躍し続ける上での自らの信条を話しています。
この話はTwitterでも拡散され、「世の老害たちに聞いてほしい」と多くの声を集めました。

”説教、思い出話、自慢話。
この3つは抑えていかないと、自分は伸びていかないなと。”

引用元:日本テレビ系番組『1分間の深イイ話』

納得する一方、じつは組織が新しいメンバーに求める3つでもある。

つまり老害は、個人の資質よりも、環境が生み出している可能性が高い、と仮説が立ちます。

むしろ、聞かせてほしい時代があった。

 採用時、多くの企業が確認するのはおよそ次の3つ。

  1. 前例を疑うなど、論理的に考える力

  2. 大事にしている価値観

  3. 成果を出す行動の再現性

これらをエピソードを通じて確認し、自社が求める人物像にどれだけマッチしているか?が採用基準です。

入社後も、企業側はメンバーがはやく職場に馴染めるように、と、個人にも職場にもこれらを共有するように促します。
ひとは環境の生き物。ゆえに、周りから求められ承認される話は、どんどん繰り返したくなります。

そして10年経ち、年次が若いメンバーが入ってきても、繰り返す。
すると、どうでしょう?

相手の前提や言動を疑う話は説教となり、大事な価値観を話すために思い出話をし、過去の成功体験を自慢として語る。
個人としては求められた話をしていただけ。しかし自覚なく、「老いて」しまうのです。

問題は、立場が変わっているのに気づかないこと。

 若手のうちは、鋭い観点とフィードバックも周囲に受け入れられます。しかしそれは、組織の成長を促す、つまり、分裂と変化を生み出すからです。

組織に長年勤めたひとの意見は、むしろ組織側の意見となり、分裂や変化を生み出しにくくなります。
つまり『生物はなぜ死ぬのか』でいえば、生み出される細胞側から、生み出す幹細胞側になった、といえます。

そして組織の老化とは、幹細胞による分裂と変化が減ること。
すなわち、幹細胞側になったメンバーは、組織の成長に向けて、分裂と変化を促す立場に変容しなければなりません。
「組織の幹部になる」とは、まさにこのこと。

「あなたの、過去の変化はなにか?」から
「周りの、未来に向けた変化を起こすには?」に、問いが変わっているのです。

変わらない部分もあるけれど

 とはいえ、手放しに変化を受け入れていいのでしょうか?

ヒトも、脳の神経細胞と心筋細胞(心臓の筋肉の細胞)は、分裂と変化、つまり入れ替えをしません。
脳の神経細胞は、変わると記憶障害が発生してしまい、心筋細胞は変わると停止のリスクがあるからです。

ゆえに企業でも、コアまですべてが変化することはありません。活動に危機を起こすレベルの変化は、むしろ避けるのが普通です。

しかし、よほど法や公序良俗に触れない限り、組織形態や個人がどれだけ変わっても、企業に危機をもたらすレベルの変化は起きません。

むしろ、僕がみてきた100以上の上場企業は、組織や社員の変化を望みさえすれ、現状維持は(コンサルティングや研修を導入するなど、相当な額の)お金を払ってまで、防いできました。

「変化は織り込み済み」が最強

 名著『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』で日本でも有名になった、アメリカの心理学者、アダム・グラント氏。

彼は新著『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す 』のなかで、変化の重要性を示唆しています。
以下は2019年、イタリアのスタートアップ116社を対象に4人の研究者たちが行なったランダム化対照実験の結果です。

実験は、コントロール群と介入群の2グループに分けて、異なる起業家トレーニングを実施。すると一方のグループ(介入群)のピボット率は約2.3倍となったほか、トレーニング後の1年間の売上の平均は約47倍もの差にもなりました。

出典:アダム・グラント『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』楠木健監訳、三笠書房、 2022

ここからいえるのは、「変化は予測できない。ゆえに、対応できるよう織り込んでおく」でしょう。

で、どうすればいいの?

 では、老害にならず、組織で成果を上げて賞賛されるひとになるには?

その具体的なアクションとプランは……実践編で解説します。


15秒で読めるまとめ

<結論>
– 老害化する人は、自分への問いが変化したのをキャッチアップできない人

<背景・理由>
– 老化とは、分裂と変化ができなくなること
– ヒトの死の一因は、老化した細胞が”毒”を出すから
– すべてが変化することはない
– 老害の「説教、思い出話、自慢話」は、採用から生まれる
– 変化を織り込んでおくと、47倍成長できる
– 老害化しない具体的なアクションとプランは
実践編


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