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同人誌の「小説本が売れる」とはどういう状態か?

先日下記のツイートを拝見し、共感したので筆を取りました。

要するに、文字書きさんが売れる/売れないで悩んでいるのであれば、悩みを分解して解決してみると良いのではというお話です。

上記のツイートをされたねむすけさんのこちらの記事と重なる部分も多分にあるかなと思いつつ、今回は「小説本が売れる」という状態について、個人的な見解を整理していきたいと思います。

※前提としてこの記事は、売れる/売れないで悩んでいる文字書きさん向けの記事です


「売れる」ためには3つの条件が揃っている必要がある

結論から言うと、「小説本が売れる」という状態は、「フォッグ式消費者行動モデル」で説明可能と考えています。

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フォッグ式消費者行動モデルの詳細については、THE GUILDの深津さんの記事がとてもわかりやすいので、気になる方は下記のnoteをご参照ください。

話を戻しますが、「フォッグ式消費者行動モデル」とは、消費者が購入などの消費行動を起こす際の要素を

B = M × A × T

というシンプルな計算式で整理したものです。

内訳としては、

・B = Behavior  →「行動」
・M= Motivation   →「モチベーション」
・A=Ability    →「実行能力/行動障壁」
・T=Trigger     →「トリガー」

となり、

行動(B)=モチベーション(M)×実行能力(A)×トリガー(T)

という非常にわかりやすい整理です。

上述した深津さんの記事では、MATをそれぞれ下記のように整理されています。

・動機(Motivation): 行為を行いたい理由。
・実行能力(Ability): 行為を実行する諸条件。
・きっかけ(Trigger): やろうと想起する瞬間。 

引用:「ユーザーが行動をおこす条件」の話

つまり、なんらかの消費行動を起こすためには、「動機・実行能力・きっかけ」という3つの変数が適切に掛け合わされることが大切になります。

どれか1つでも0が含まれれば、理論上「行動」は起こりません。
よって、3つの変数を適切に組み合わせる必要があります。

逆に言えば、消費行動を起こすためには、この3つの変数が適切に揃っているかどうかを見ていけば良いということです。

ゆえに、「小説本の購入」に関しても個人的には、このモデルで説明可能と考えています。

この前提があった上で、ここから具体的に「小説本が売れる」という状態を分解していきます。


売れないことに悩んだら、MATの各指標を改善していく

フォッグ式消費者行動モデルを「小説本の購入」にあてはめると下記整理となるのではと考えています。

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つまり、結論から言えば「小説本が売れる状態」とは、フォッグ式消費者行動モデルの各指標が適切である状態といえます。

よって、「売れないことに悩んだらどうすればいいか?」という問いに対する回答は、「MATの各指標を見直し、試行錯誤してみる」です。

より具体的に説明すると、

購入=動機(ニーズの強さ)×実行能力(適切なハードル)×きっかけ(適切な想起)

となり、「小説本の購入」の場合、

「動機=ニーズの強さ(Motivation)」の指標としては、

・作家の作品への信頼度
・カテゴリの分母
・ジャンルの勢い

などが考えられます。

たとえば、この方の小説ならまちがいない、と思うことはないでしょうか。
いわゆる「作家さん買い」というやつです。
これは「作品への信頼度」となり、モチベーションの向上に寄与します。

また、「カテゴリの分母」は「ジャンルの勢い」と相関しますが、勢いのあるジャンルはそれだけニーズが高い人が多い確率が高まるので、これもモチベーションの向上に関連します。

次に、「実行能力=適切なハードル(Abillity)」の指標としては、

・価格
・販路
・ボリューム(ページ数)

などが考えられます。

この作家さんの本なら欲しいなと思っても、その「価格」が1億円なら当然買えません。
価格も内容も問題ない状態でも、イベント会場に行けない場合、書店委託という「販路」がなければ買えません。

最後に、「きっかけ=適切な想起(Trigger)」の指標としては、

・認知経路の数
・投稿数
・投稿頻度

などが考えられます。

たとえば、pixivでしか活動していない人と、TwitterでもnoteでもYoutubeでも活動している人がいれば、後者の方が新作告知をした場合に、存在を知ってもらえる可能性が高そうです。

つまり、「認知経路」が多い方がきっかけを起こしてもらえる可能性が高まるということです。

これは、「投稿数」「投稿頻度」も同様で、1年に3作品しか投稿していない人と、3日に1作品投稿している人がいれば、後者の方が接触頻度が高く、購入のきっかけを作れる可能性は高いと予想されます。

と、ここまで具体を説明してきましたが、

つまり、

「売れること=購入してもらうこと」

としたときに、「売れない」と悩んでしまったときは、

**モチベーション(Motivation)
・作家の作品への信頼度
・カテゴリの分母
・ジャンルの勢い …etc..
**適切なハードル(Abillity)
・価格
・販路
・ボリューム(ページ数) …etc..
**適切な想起(Trigger)
・認知経路の数
・投稿数
・投稿頻度 …etc..

これらの各指標のうち、改善できそうな場所から改善にチャレンジしてみるのはどうでしょうか。

たとえば、「きっかけ(Trigger)」の「認知経路の数」に着目し、一次創作であれば、pixivだけでなくnoteにも投稿してみる、などです。

そうすることで、結果的に前よりも見て頂ける機会が増えたのなら嬉しいことですし、もしもそんなに差がでなかったのであれば、指標の動かし方の振り返りをしたり、違う指標に着目してみることもできます。

そして、そんなことを繰り返しているうちに、新しいおもしろさや楽しみに出会っているかもしれません。

よって、どうせ何しても売れないんだ、とか、小説本だから手に取ってもらえないんだ、と筆を置いてしまう前に、この考え方を使って、各指標を増減させてみるなど、小さなチャレンジをする気持ちで試行錯誤してみるのはどうかな、と個人的には思っています。


筆を折る前に、試してほしいこと


ここまで「売れるという状態」について紐解いてきましたが、大前提として、「売れることが正義」だとか、「Bの最大化されるジャンルの小説だけを書け」「常に戦略的に創作活動をするべき」と言っているのではないです。

個人的には、書きたいという想いがある限り、創作をされる方には書きたいものを書き続けて欲しいですし、自分の心の声に従って、素敵な物語を好きな場所で好きなようにかたちにしてほしいと思っています。

ただその上で、もしも「売れる / 売れない」ということがあなたを苦しめるのなら、筆を折るのではなく、届ける「場所」や「方法」を変えることも試してみてほしいなと思い、この記事を書きました。

以上です。

今はまだ、変えられないことも、どうにもならないこともあるのかもしれませんが、それでも私は創作の力を信じているし、良いものがあるべき人たちに届く世界にしたいといつも思っています。
そして、変わりたいと誰かが思った時に、変わることのできる世界にしたいです。

そんなわけで、数カ月以内にその一助となるようなものをリリースできればと考えているので、そのときは覗いてみていただけたら嬉しいなと思います。

最高小説が、これからもたくさん生まれていくことを心から願っています。


さいごに

普段、小説を書きながら文字書きさん向けのコラム雑誌を作っているので、小説本のデザインや特殊装丁に興味のある方は、こちらも見ていただけたら嬉しいです!


最後までお読みくださいましてありがとうございます!