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「線スケッチ」の立場で美術展を鑑賞してみた

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訪れた美術展の感想文です。ただし、美術展全体の紹介や感想ではなく、「線スケッチ」の視点で鑑賞した内容に焦点を絞っています。視点としては、モチーフ、構図、線描、筆さばき、配色など技… もっと読む
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記事一覧

「木村伊兵衛 写真に生きる」(東京都写真美術館):白黒スナップショットから街歩き…

(長文になります) はじめに 私のNOTEの記事のテーマは、「線スケッチ」に関連するものです…

「サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展」(千葉市美術館):なぜ国内に優品がないの…

(本記事は長文になります) はじめに 千葉市美術館で今年初めに開催された本展覧会が3月3日…

国宝障壁画展示《楓図》《桜図》(智積院・宝物館):茫々60年、あれは夢・幻だったの…

(長文になりますのでお気を付けください) はじめに このnoteのどこかの記事で、私がいかに…

展示「国宝 松林図屏風」(東京国立博物館)その1:知識、経験が変われば見方も変わ…

はじめに 昨年東京国立博物館で開催された<やまと絵>展を訪れた時に、博物館の広報を読ん…

「江口寿史展 ノット・コンプリーテッド」(世田谷文学館)その2. 漫画・イラスト両…

はじめに 1月21日に投稿した江口寿史展の記事、その1では、「線スケッチ」に役立つ江口氏の…

「北宋書画精華」展(根津美術館):水墨画鑑賞2023年の振り返り、白眉を飾る北宋山水…

はじめに 昨年は、水墨画の勉強に始まり、水墨画の美術展の鑑賞にほぼ注力した年でした。 …

「小村雪岱」展・補遺2:泉鏡花「日本橋」の装幀画は仏画の三部構図だった?

はじめに 本稿は、昨年訪問した清水三年坂美術館の「小村雪岱」展の記事の中の、小村雪岱の遠近表現に対する私の見解に対する二つ目の補足記事です。  1月4日付で投稿した補足1の記事では、小村雪岱が透視図法と日本の伝統的な遠近法をはじめて混在させたのではなく、すでに鈴木春信が西洋の遠近法を知っており、透視図法と日本の遠近表現を混在させて描いた作品があることを紹介しました。  ここでは、引き続き小村雪岱の遠近表現に関する見解の補足をいたします。 泉鏡花『日本橋』装幀における小

「小村雪岱」展・補遺1:春信は知っていた!「線遠近法」とその「ハイブリッド描写」

はじめに 昨年末、12月31日付で「小村雪岱」展(清水三年坂美術館)の訪問記を投稿しました。…

「小村雪岱」展(清水三年坂美術館):白黒挿絵の改革者雪岱。配色は鈴木春信へのオマ…

はじめに 11月2日付の下記の記事の中で、清水三年坂美術館の「小村雪岱」展が開催されている…

東京国立博物館<やまと絵>展:おそるべし雪舟!あなたは桃山障壁画の祖か?なぜ樹木…

はじめに 前回の記事で、東京国立博物館で行われている「やまと絵」展で典型的な「やまと絵…

東京国立博物館<やまと絵>展:「やまと絵」展なのに「水墨山水」の本質を体得したか…

はじめに 先月、国立博物館の「やまと絵」展が始まった次の日に訪問してきました。本格の感…

<発見された日本の風景>日本橋高島屋:やっと出会えた幕末・明治の絵;やはり明るか…

 本記事は感想の前に背景説明をいたします。これまで考えていたことを一つの記事にまとめたの…

<マティス展>東京都美術館:これでよいのか?人生最高傑作のヴァンス礼拝堂;なぜデ…

前回の記事その1から続きます(最終です。長文になります)。 2巡目の最後に予想外の事実が…

<マティス展>東京都美術館:これでよいのか?人生最高傑作のヴァンス礼拝堂;デッサンの日本化、一発描きと抽象化への道(その1)

 今回、東京都美術館で開催されている「マティス展」を訪問しました。その結果、予想外の心の変化が待っていました。以下、展覧会での心の変化に従って書いてみます。 訪問前のマティスに対する思いと訪問の当初の狙い 訪問前に私が考えた目的は単純です。ごく最近、私はヴラマンクに一喝された佐伯祐三の展覧会の記事を投稿しました。その中で、フォービズムの画家達が油彩で描く黒くて幅広の輪郭線と佐伯祐三が油彩で描く輪郭線とは性質が違うことを紹介しました(下記)。  その際、フォービズムの画家達