回復するとは、自分を発見することなのかもしれない。
なんて、静かな本なんだろう。
たぶん、騒がしいカフェの一角で読んでいたとしても、その本は周りのすべての音を吸い取ってしまうだろう。
闇、という文字が頭に浮かんだ。
あらゆる音を、閉じ込めてしまう門。
『回復する人間』(ハン・ガン 著 斎藤真理子 訳 白水社)
は、そういう意味で闇の本だ。
しかし、その闇は黒ではない。
青だ。青の群れ。
光も音も届かない、群青色の海の底。
『回復する人間』には、7つの短篇が収められているのだが、そのいずれの主人公も傷を抱えている。
ガンの再発