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光庵をうーめんの聖地へ。こだわりの味を守り続ける店長の物語

きちみ製麺の工場併設型食堂である、「味見処 光庵」。江戸時代に建てられたかやぶき屋根の古民家を活かしてつくったお店です。当時の太い木の梁などはそのまま残っており、長きにわたりこの地とともに生きてきた様子が感じられます。

光庵の内装

お店の雰囲気はもちろん、味も抜群。ミシュランガイド宮城2017特別版にも掲載されました。きちみ製麺のさまざまな麺のなかでも“手延”白石温麺のみを取り扱っており、手間暇かけてつくられたうーめんをじっくり味わうことができます。

そんな光庵の味を生み出し、守り続けているのが、2014年のオープン当時から店長を務める柴山さん。店長になるまでのご経歴やレシピ開発の裏側、お店への想いを語ります。

節目には必ず家族が。ご縁が重なり店長へ

こんにちは。光庵の柴山と申します。開業当初から店長を務め、今年で丸10年になります。
私の1番の仕事は調理をすることなんですが、材料の仕入れから仕込み、レシピ開発など幅広く担当しています。

もともと料理の道に進むことは考えていませんでした。でも、大学時代に食事付きアルバイトをしたくて。一食分浮くじゃないですか(笑)そこから飲食店で働き始めました。得意料理があったわけではなかったんですが、「こういうのつくって」と言われたものはつくっていたので、大体なんでも対応できるようになりましたね。

その後はホテルで働き始め、主にレストランで洋食を担当していました。でも、飲食業界はどうしても土日に休めなくて。だから結婚して子供が産まれてからは、移動式クレーンの資格をとって、子供たちと土日に遊んでいられるような仕事をしていました。それで現場に15年くらいいたのかな。

そのころ娘が自分が働いていたのと同じホテルで働くことになって、私はちょうどクレーン会社が解散することになり失業してしまったんですよ。
そうしたら、「人足りないから手伝って」って娘から言われて、またそのホテルで働き始めました。おもしろいご縁ですよね。

5〜6年経ったころ、光庵を始めるので人を探しているという話がきたんです。妻と現会長の奥様が学校の同級生だったので、その経由で聞きました。そして会長とお話しすることになり、なんだか気に入っていただけたようで。
うーめんは昔から自分も食べていましたし、子供にも小さいときから食べさせていたので、おもしろそうだなと思ってお受けして今に至ります。

きちみ家が住んでいた古民家が光庵に生まれ変わりました

光庵の味の裏側と、おうちでの楽しみ方

開業当初、コンサルさんが考えてきたメニューが4種類(三味・冷やし・とろ玉・鶏)ありました。
味付けは全部こっちに任せてもらえたので、いろいろな本を見たり協力者からサンプルを持ってきてもらったり、試行錯誤しながら自分でつくりました。

いまは鶏うーめんがお客さんに人気です。基本的にきちみ製麺で売っているつゆを使った味付けのメニューが多いんですが、鶏うーめんは光庵のオリジナルなんですよ。

うーめんは光庵で食べた後、売店で買って帰ることもできます。売店には「金印」や「銀印」などさまざまな商品がありますが、やっぱり1番おすすめしたいのは、こだわりの手延べですね。光庵では手延べしか出していません。

めんつゆ・ごまだれ・くるみだれで食べ比べる「三味うーめん」というメニューがあるんですが、たれも売店に売っています。うーめんと合わせて買っていただくと、自宅でお店の味を再現することもできますよ。

満足して、思わずほっとしすぎてしまう場所?!

お店をやっていておもしろいのはね、お客さんの忘れ物が多いってことなんですよ(笑)満足してほっとするのかわからないけど、食べてそのまま帽子を忘れて帰るとかね。

ほかにも、命と同じくらい大切なものを忘れた人もいるんですよ。普段はすぐ気付くんだろうけど全然気付かなくてね、忘れてあった荷物を開けてみたらインスリンで。他にも名刺がいっぱい入っていたから、1番数が多いものがその人の名刺だろうということで、電話をかけて取りにきてもらったこともありましたね。

光庵には日本全国からお客さんが来てくれます。和歌山や、宮崎や鹿児島とか九州から来る方もいました。仕事の関係のこともあるし、観光で仙台に来て、松島などを回っている方もいるんでしょうけど、そのルートのなかにうーめんが入るのは嬉しいですね。

光庵の味を守り続け、白石とうーめんを広めたい

これから挑戦したいことは、季節ごとに出している限定メニューのバージョンアップと新メニューの作成です。あと、これまでのレシピを公開することなんかもみんなで考えてやってます。

いま開発中なのはたまごを使ったメニューですね。
仕入れ先のたまご屋さんが今までと変わったんですよ。そこの黄身が良いってみなさん言っているので、それを使ってなにかやろうかなと。ひき肉を合わせてみたらおいしいかな、なんて考えています。あとは、わさびも温かくても冷たくてもおもしろい味になるので、試してみたいですね。

私は、野望みたいなものはないけど、来てくれたお客さんにおいしく食べてもらって、年に1回か2回くらいは来ていただけるお店になれば良いなと思います。うーめんの聖地巡礼じゃないですけどね(笑)

あ、でも、野望はないといったけれど、2017年にミシュランのガイドに載ったので、また今度、改訂版が出るときはもう少し上のランクで載りたいですね。

調理をするのは私だけなので、これからも光庵の味を守っていくために、身体を壊さないように健康に気をつけてやっていきたいです。

光庵が頑張ることで白石やうーめんが広がっていって、白石の人たちも喜んでくれたら嬉しいなと思っています。

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