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医療のこと。医者人生のこと。

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医療に関する個人的な意見を呟いています。研修医さん向けの記事も時々。
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【合格しました!】2022年心臓血管麻酔専門医試験の振り返りと資料

【合格しました!】2022年心臓血管麻酔専門医試験の振り返りと資料

はじめに

どうも。医師10年目くらいの麻酔科医です。
先日、というかまさに今日、心臓血管麻酔専門医の試験を受けてきました。

というわけで、簡単な振り返りと自作資料を置いておきます。
後述していますが、いろいろと検索不足で大幅にヤマを外したので、失敗談として参考になれば幸いです。みんな、私の屍を乗り越えていってくれ(涙)

ちなみに試験対策ですが、オレンジ本(『心臓手術の麻酔』)を読み込むことで

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仕事に全振りしていた女医が、出産して知った「生活を営む」ということ

仕事に全振りしていた女医が、出産して知った「生活を営む」ということ

出産して、たくさんのことが変わった。

それまでできていたことができなくなったり、必要なかったことが必要になったり。自由な時間はより少なく、できることもまた少なく。誰かの手を借りることが増え、助けを求めることも多くなった。総じて出産前の自分よりも「弱くなった」「できなくなった」と感じる機会が増えた。

それでも、出産することで、子どもを生み育てることで、初めて理解できるようになったことがあった。そ

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週5フルタイムをやめます。

週5フルタイムをやめます。

「体力のない医者選手権」なるものが開催されたら、ぶっちぎりで1位になる自信があります。

医者の仕事は体力勝負。長時間手術や当直など。マラソン選手のように、長時間にわたって一定レベルの仕事をすることが求められます。体調が悪くても、眠たくても、目の前の患者さんには関係ありません。必要があれば食事や睡眠をすっ飛ばしてでも仕事をすることは、少なくありません。

そんな激務にも関わらず、多くの医師は涼しげ

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令和三年三月十二日

令和三年三月十二日

「死んだらダメ」という言葉が、私は苦手だ。

死んではいけない。死ぬのはだめだ。
自死を望む人に対して、投げかけられる言葉たち。ずっと苦手で、耳にするたび耳を塞ぎ、遠ざけてきた。

死んだらダメ、と人は言う。誰かの「死ぬ」という行為に対して、ダメと禁止する。禁止があるなら、その反対もあるわけで。「死んではダメ」の反対は、「死んでもいいよ」となる。

今にも飛び降りようとしている人に対して「ダメ」「

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乳がんのセルフチェックしていますか?

乳がんのセルフチェックしていますか?

こんにちは。女医ワーママのあおです。

突然ですが、乳がんのセルフチェックをご存知ですか?

私は数年前から、1ヶ月に1回、簡単なセルフチェックをしています。
妊娠・授乳中はなぜか自分のバストに触るのが嫌になってしまい、お休みしていましたが、先日、息子が卒乳をしたのを機に、1年半ぶりに再開しました。

今日は簡単にできる乳がんセルフチェックをご紹介したいと思います。

なぜセルフチェックが必要か。

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「誠実な翻訳者」という役目。医師が情報を発信することについて。

「誠実な翻訳者」という役目。医師が情報を発信することについて。

先日、オンライン上でちょっとしたプレゼンをする機会がありました。
参加していただいたのは、同世代の方々。テーマは『予防接種』について。
私が個人的に興味を持って調べたことをシェアする形式でした。

そもそも、私は予防接種の専門ではありません。感染症内科医でもなく、公衆衛生にも携わっていません。医師免許を持った、ただの一般人です。

医師という専門家が「専門外」の医療情報を発信する。

その過程で生

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30代の「ピア・エデュケーション」 妊娠・出産を拗らせた女医は、覚悟を持てない。

30代の「ピア・エデュケーション」 妊娠・出産を拗らせた女医は、覚悟を持てない。

今日は、なんとも言えない、後味の悪い話を書こうと思う。
これは読み手の方のことは一切考えていない、ただ、自分の思考を整理するためだけの文章だ。だから読み終えてもスッキリはしないだろうし、書き手に対する評価が悪い方向に変わるかもしれない。とても自分勝手な文章になっていると思う。

とりわけ、不妊治療を経験された方には、本当に、本当に申し訳ない内容になっているかもしれない。だからくれぐれも、お気をつけ

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緊急避妊薬がほしかった、24歳の春。

緊急避妊薬がほしかった、24歳の春。

にわかに緊急避妊薬が話題となっている。

緊急避妊薬とは、避妊に失敗した時や性被害にあった時に服用する、避妊のための薬剤だ。アフターピルとも、緊急避妊ピルとも呼ばれている。72時間以内に内服することで、約80%の確率で妊娠を防ぐことができる。

緊急避妊が必要な場面というのは、ある日、突然やってくる。それは誰が悪いとか何が悪いとかでなくて、本当に事故のように訪れる。

だからこそ、緊急避妊薬を知っ

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不同意堕胎致傷について思うこと

不同意堕胎致傷について思うこと

つい先日、飛び込んできたニュースに、私は耳を疑いました。

医師が知人女性に対して、同意を得ないまま堕胎手術を行った、という事件。

この報道を知ったとき、私はとても、やるせない思いをしました。

今日はこのことについて書きたいと思います。

はじめに

この事件では、まだ医師は容疑者にすぎません。

裁判で有罪判決が出ない以上、その医師は有罪ではありません。今後、事実関係が明らかになる過程におい

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エビデンスは、誰かを殴る道具ではない

エビデンスは、誰かを殴る道具ではない

今日は、久しぶりに「女医」らしいことを書こうかと思う。まあ、そんな大それたことは書けないので、ごくごく一般的な医師が、ごくごく一般的に知っている範囲内のことになってしまうのだが。

今回のテーマは「エビデンス」について。

最近、「エビデンス」という言葉をよく耳にするようになった。サイエンスや研究の世界だけではなくて、そうでない方も口にされているのを聞く。新型コロナウイルスの広がりとともに、様々な

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「持たざる女医」の生存戦略

「持たざる女医」の生存戦略

ひと昔の女医は、育休が取れなかったらしい。

40代、50代の出産経験のある女医さんと話をすると、決まって「出産したら仕事は辞めるものって言われていた」「育休なんて取らせてもらえなかった」という言葉が出てくる。ほんの10年ほど前のことだ。

では、彼女たちがどうやってキャリアを継続したかというと、出てくるのは「実家」「じじばば」「開業」「フリーランス」「非常勤」という言葉。産休後はすぐにフルタイム

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性教育ってなんなんだ?

性教育ってなんなんだ?

緊急避妊薬(アフターピル)の薬局販売を、政府が検討し始めたらしい。

緊急避妊薬(アフターピル )、政府が薬局での販売を検討へ。実現求める強い声 / HUFFPOST

報道を知った時、「やっとか」というため息に似た安堵が漏れた。アフターピルの国内認可から10年。道のりはあまりにも長かった。女性性に対する人権というものが極端に蔑ろにされるこの国で、本当に”前進する”とは思っていなかった。心のどこか

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一度でも聞いておけば良かった。私とあの人の、人生会議。

一度でも聞いておけば良かった。私とあの人の、人生会議。

本作を書くにあたり、患者さんが特定できないよう、患者さんに関する情報のほとんどを改変しております。公開後の状況によっては、非公開とする可能性があります。また、本作は「#わたしたちの人生会議」のタグをお借りしていますが、関係各位とはなんら関係ありません。

25歳のとき、私は医学の限界というものを、まざまざと見せつけられた。

あれは医師2年目、初期研修が終わりかけた頃だった。私はある地方病院にて研

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二十年来のオタクが語る。自分軸手帳、装丁のここが凄い!

二十年来のオタクが語る。自分軸手帳、装丁のここが凄い!

自分軸手帳って、ご存知ですか?

『どんなに忙しくても、自分らしく毎日を生きたいあなたへ』という胸を打つフレーズとともに作られた、ワーキングマザー&ワーキングファザーたちによる手帳です。

twittetrやnoteで作り手の熱い思いやメッセージに触れ、手帳初心者にもかかわらず思い切って購入しました。

そして11月上旬。手元に届いた手帳を見て、私は驚愕しました。

「これ……めっちゃやばいやつや

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