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「死ねない死者は夜に生きる」全13話

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【小説】 《生ける屍の孤独と純愛の物語》 “生ける者”が棲むシガン。“死せる者”が棲むヒガン。二つの世界は重なって存在する。そのシガンとヒガンに別れ棲む一組の恋人と、幾星霜も孤独… もっと読む
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記事一覧

「死ねない死者は夜に生きる」第1話(全13話)

♧  今夜は雲が多い。薄雲に覆われた満月が朧げに灯る。その淡い月光は、浜辺をそぞろ歩きす…

霜月透子
1年前
16

「死ねない死者は夜に生きる」第2話(全13話)

♢  雑木林を抜けると、途端に視界が開けた。すかさず身を伏せる。膝を折っただけで十三歳の…

霜月透子
1年前
7

「死ねない死者は夜に生きる」第3話(全13話)

♤  三日経ち、颯は苛立っていた。  咲と連絡がつかない。  電話をかけても電源が入ってい…

霜月透子
1年前
6

「死ねない死者は夜に生きる」第4話(全13話)

♡  浮上していく。全身が脱力したまま浮上していく。  どういうわけだか、どれほど「動け…

霜月透子
11か月前
3

「死ねない死者は夜に生きる」第5話(全13話)

「明日は満月だな」  庭先に立つランコが、夜空を見上げて言った。  サキは窓枠に寄りかか…

霜月透子
11か月前
4

「死ねない死者は夜に生きる」第6話(全13話)

♢ 「調子はどう?」  ランコはサキのベッド脇で腰を屈めた。  狩りの後からサキは躰が重…

霜月透子
11か月前
2

「死ねない死者は夜に生きる」第7話(全13話)

 あれは何年前だろう。先の戦争が終わり、世の中が貧しくも平穏な日々が訪れた頃だった。町中に子供が溢れていた。後に聞いたところによると、町だけではなく、全国的に子供が増えた時代だったようだ。ともかく子供が多かった。そのおかげで獲物には困らなかった。幼い血気はまださらりと淡白で、おいしいとは言えないが、豊富にあるのはよかった。  ただ、子供には死せる者の姿が視えることがあるらしい。ほとんどの者は成長と共に視えなくなり、記憶からも薄れていくようだ。覚えていても、現実だとは思わないら

「死ねない死者は夜に生きる」第8話(全13話)

♧  黒いミニドレスの少女が外へ飛び出していったのを確認すると、要はすぐさま硝子格子戸を…

霜月透子
11か月前
3

「死ねない死者は夜に生きる」第9話(全13話)

♡  サキは恐る恐るカーテンの端をめくった。闇の深い夜だった。  今夜が朔であることは確…

霜月透子
11か月前
1

「死ねない死者は夜に生きる」第10話(全13話)

♡  サキは走った。今しがた飛び出してきたあのマンションから、少しでも遠く離れたかった。…

霜月透子
11か月前
2

「死ねない死者は夜に生きる」第11話(全13話)

♢ 「なあ、サキ。いったい、なにがあったんだ?」  ランコは眠るサキに問いかける。返事が…

霜月透子
11か月前
3

「死ねない死者は夜に生きる」第12話(全13話)

♧  要はコンビニの駐車場の車止めに腰かけて、買ったばかりの肉まんに齧りついた。  暖を…

霜月透子
11か月前
5

「死ねない死者は夜に生きる」第13話(全13話)

♤  颯は鼻をひくつかせた。  体が臭い。化膿した傷口のような、腐臭とも生臭さともつかな…

霜月透子
11か月前
6