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「スポットライトに照らされて」全17話

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【小説】 演劇強豪校へ入学したはずなのに、演劇部がないってどういうこと!? 高校演劇の青春部活小説。 梢は演劇強豪校の高校へ進学する。しかし演劇部は、既に存在していなかった。突然… もっと読む
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記事一覧

「スポットライトに照らされて」 1 (全17話)

プロローグ  降りたばかりの緞帳の向こうから豪雨を思わせる拍手が聞こえている。会場の空気…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 2 (全17話)

第一幕 入学 「演劇部がないって、どういうことですか!」  クラス担任はあっさり「ないよ…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 3 (全17話)

 翌日、私は美香との昼休みミーティングを断った。美香は案外あっさりと「まずはクラスに馴染…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 4 (全17話)

 土曜日。  城東学院の校門は紙の花やキラキラしたモールでとても華やかだ。さすが私立高校…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 5 (全17話)

 駅前の小さな広場には木陰ごとにベンチがある。私たちは改札口から一番遠いベンチに美香を挟…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 6 (全17話)

第二幕 文化祭 「――で? 俺に顧問やれと?」  古賀先生はあからさまに不服そうな声色で…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 7 (全17話)

 昨日一日かけて掃除をした部室は、まるで初めからこの状態だったかのような当たり前の顔をしている。そして、ソファに寝そべる私も、ロッキングチェアでユラユラしている美香も、ずっと前からここにいたかのように居心地良く感じている。  日差しはギラギラと照りつけるけれど、部室は窓を全開にしていれば涼しい風が入ってくる。クーラーも扇風機もなくたってそこそこ快適に過ごせる。  だけど、私の中では名前のないドロドロとした熱をもったものがボコボコ沸騰していた。 「なんでもう少し早く始めな

「スポットライトに照らされて」 8 (全17話)

 新学期、夏休みに会わなかっただけなのに、女子はみんな大人っぽくなっていて驚いた。男子も…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 9 (全17話)

 私はステージに立っている。美香とふたりきりのシーンだ。  地明かりの中、少年の恰好をし…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 10 (全17話)

第三幕 春季発表会 「……どうするのぉ? これ」  美香が一冊の古い台本を差し出してくる…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 11 (全17話)

 ……どうしたもんだろう。  私は部室のロッキングチェアの上で体育座りをしてゆらゆらと揺…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 12 (全17話)

 楽屋にしている教室に戻ると、つい十日ほど前に卒業したばかりの凛先輩とありす先輩が出迎え…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 13 (全17話)

第四幕 地区大会 「新入部員、入った?」  放課後の廊下を歩きながら北山が問いかけてくる…

霜月透子
11か月前
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「スポットライトに照らされて」 14 (全17話)

 演劇部の基礎練習は結構ハードだ。  なんでもそうだろうけど、基礎ができていないとその上にどんな立派なものも乗っからないから。特に、キャストは体力も大事だ。上演時間の後半に息切れして台詞が聞こえない、なんて失態はもってのほか。  だから体力づくりのために、私たちは今日も外周道路を三周ランニングしてきた。当然そのまえにはストレッチと柔軟体操を済ませている。  部室に戻ると筋トレ。これが部外者には一番意外に思われているみたいだけど、全身の筋肉がついていない人の動きほど見苦しいも