Taro SAITO

大手ゼネコン所属。京都大博士(工学)・一級建築士・一級管工事施工管理技士・二級建設業経…

Taro SAITO

大手ゼネコン所属。京都大博士(工学)・一級建築士・一級管工事施工管理技士・二級建設業経理士。英レディング大学院(コンストラクション・マネジメント)修士コース修了(MSc)。建設、不動産のデジタル化を進めたい。

マガジン

  • 「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」

    本書のタイトルを、あえて「建設・不動産のデジタル化〜FMBIMの活⽤〜」としたのは、建設・不動産の発注、所有、管理、経営の第⼀線にたつ多くの皆さんにBIMの有効性を証明し、BIMの活⽤をすすめるためには、BIMという特殊⽤語をやめ、多くのひとにとってわかりやすい、「不動産・建物のデジタル化」を進めることが必要だと考えたからだ。  ただ、単純に生産者が持つBIMデータが 消費者側にそのまま展開されても、有益なデジタルデータとはなりえない。お同じBIMデータでも「施工BIM」と「FMBIM」の違いを理解したうえで、BIMを都市、社会のデジタル化に活用する必要がある。  本書を通じて、BIMを含む幅広い「建物のデジタルデータ」の活⽤が進むことに期待したい。

  • 次代を創る「スマートビル・スマートシティ」

    スマートビルの概念は、さらにあらゆる信号がネットワークで結ばれ、個々人の端末ともつながり、ワーカーにとっては、スマートフォンや顔認証の生態認証により、個々人にとって働きやすい物理環境を提供する一方、高まるCO2削減やエネルギーコスト削減に対して、AIを活用して徹底的に無駄を削り、最適化するビル管理を行うなど、IT、AIを用いて高次のビル管理システムを構築することをいう。 AI、ITを活用して人の生活を豊かにするだけでなく、より良い社会の構築につながるビルこそ、「スマートビル」だ。ぜひとも、読者のみなさんには、本書(次の記事以降)で得られた知識を大いに活用し、スマートなビルの構築に役立ててほしい。  本書(次の記事以降)では、不動産・建設のデジタル化活用の最先端技術について調査した最新の資料に基づき構成されている。

記事一覧

固定された記事

次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その1

海外で進む不動産のデジタル化「スマートビル」:ミレニアル世代  ミレニアル世代と呼ばれる80年代以降に生まれた10代、20代の若者たち。生まれた時からインターネット…

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未来の建設業を考える:「ホームドクターの確立を目指して」2011年2月21日

維持修繕工事の重みが高まっている  昨年末の国土交通省の建設工事施工統計によれば、日本の建設市場における維持修繕工事の割合は、90年度が14%、98年度が18%、08年度に…

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未来の建設業を考える:「設計にコストと品質の両立を」

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未来の建設業を考える:「利」より「義」へ

社会の基本は  社会の基本は、何であろうか?個人と個人のつながりによって成り立つものであり、独立しては存在し得ない。 日本資本主義の父と呼ばれる渋澤栄一  日本…

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グローバリゼーションのうねりの中で  耐震偽装、介護ビジネス、牛肉偽装、すべてが拝金主義、マネー市場主義、グローバリゼーションのうねりの中で、生じた問題であろう…

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「独占レント」ではなく、パートナー的位置付けとしての「関係レント」が大きく寄与  大手ゼネコンにおける決算が発表された。殆どの会社で、利益が増加しV字回復を予想…

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未来の建設業を考える:「古代の叡智と技術力で国を豊かに」(2024年4月9日)

前方後円墳「仁徳天皇陵(大山陵古墳)」  古墳は、古代日本の繁栄を支え、現代の土木建築技術にも大きな影響を与えている。その代表格が、大阪・堺市にある巨大な前方後…

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未来の建設業を考える:「日本における地下物流網の構築」(2023年11月23日)

日本の物流業界  日本の物流業界は、人手不足や渋滞など、さまざまな課題を抱えている。国土交通省は、10年後を目途に、高速道路上に自動輸送で拠点間輸送を担う物流専用…

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未来の建設業を考える:「式年遷宮に見る保存」

建物保存  建物保存について、法隆寺のように当時の建物をそのまま保存し、現在に伝える方法が一般的な考え方である。 伊勢神宮に見られるような「式年遷宮」  一方で…

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未来の建設業を考える:「復活させよう、現場力」(2024年3月6日)

米ボーイング社の飛行機事故と日本のダイハツ工業の不正行為  最近、他産業で二つの重大な問題に関する報告書が提出された。米ボーイング社の飛行機事故と日本のダイハツ…

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未来の建設業を考える:「ダイナミックな建設企業へ」(2024年02月05日)

車載蓄電池  いま、EV(電気自動車)の車載蓄電池において、世界的に劇的な変化が起こっていることを、みなさんご存じだろうか? 三元系リチウムイオン電池  従来はレ…

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未来の建設業を考える:「水力発電」(2023年11月1日)

機械学習  AI(人工知能)時代を制すためには、膨大な量のデータを活用した機械学習やデータ分析が必要とされる。科学技術振興機構によれば、世界のIPトラフィック(一定…

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未来の建設業を考える:「AI・AGI・ASI時代とは」(2023年10月13日)

AIが人間の10倍の能力を持つ時代  ソフトバンクの孫さんは、「AIが人間の10倍の能力を持つ時代「AGI(Artificial General Intelligence=自ら学習し、応用処理なども行う…

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未来の建設業を考える:「発注者の役割と責任」(2023年10年02日)

日立市役所庁舎が電源喪失  この夏は日本近海で台風が発生するなど、地球温暖化を暑さや大雨で感じる。このような環境変化のなか、9月の台風13号による記録的大雨の影響…

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次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その1

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海外で進む不動産のデジタル化「スマートビル」:ミレニアル世代

 ミレニアル世代と呼ばれる80年代以降に生まれた10代、20代の若者たち。生まれた時からインターネットに接し、デジタルネイティブとも言われる。
 そのミレニアル世代、黒電話を知らないらしい。黒電話を見せたら、電話であることは認識したものの、使い方を聞くと、ダイヤル番号が書かれた数字を押して使う、と回答したそうだ。
 携帯電話に慣れた

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未来の建設業を考える:「ホームドクターの確立を目指して」2011年2月21日

未来の建設業を考える:「ホームドクターの確立を目指して」2011年2月21日

維持修繕工事の重みが高まっている

 昨年末の国土交通省の建設工事施工統計によれば、日本の建設市場における維持修繕工事の割合は、90年度が14%、98年度が18%、08年度には25%と、年々増加し続けている。新設工事の減少が続く中で、維持修繕工事の重みが高まっている。海外の維持修繕市場は、イギリスが43%、フランスが46%、ドイツが53%と、およそ建設市場の半分が、維持修繕工事で占めるまでになって

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未来の建設業を考える:「設計にコストと品質の両立を」

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建築設計と製品(工場生産)設計との違い

 建築設計と製品(工場生産)設計との違いは何であろうか?一品生産と大量生産から生じる設計の違いは、よく指摘される。ここでは、コストに着目して、検討してみたい。

製造物の設計

 製造物の設計においては、最初に市場調査に基づくコスト設定を行ったうえで、そのコストに収まるようにデザインを見直したり、機能を変更したりして、最終的に製品へと作り上げることが求めら

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未来の建設業を考える:「企業価値の創造」

未来の建設業を考える:「企業価値の創造」

マイケル・ポーターのCSV

 マイケル・ポーターは、企業が維持し成長していくためには、単に企業自体の利益を追求するのみでなく、企業活動を社会貢献活動にリンクし、社会に対して価値を生み出すような企業でないと中長期的に成長し得ない、と言っている。これを称して、CSV(Creating Shared Value)がこれからの企業成長のキーワードになると提唱している。

CSVを達成するために

 CS

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未来の建設業を考える:「リスクマネジメント再考」

未来の建設業を考える:「リスクマネジメント再考」

大きなリスク

 この世に大きなリスクが存在するということは、受験や就職、そして結婚(?)と多くの人が経験していることであろう。一方、曰本人は欧米人に比べてリスクをとりたがらない、と良く言われる。

農耕民族の日本人は、狩猟民族の欧米人に比べて、十分なリスクをとる環境に

 しかし、実はそうではないらしい。金融コンサルタントの澁澤健氏は、「元来、農耕民族の日本人は、狩猟民族の欧米人に比べて、十分な

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未来の建設業を考える:「利」より「義」へ

未来の建設業を考える:「利」より「義」へ

社会の基本は

 社会の基本は、何であろうか?個人と個人のつながりによって成り立つものであり、独立しては存在し得ない。

日本資本主義の父と呼ばれる渋澤栄一

 日本資本主義の父と呼ばれる渋澤栄一は、「利を以って利とせず、義を以って利とす」「私利私益の観念を超越して、国家社会に尽す誠意を以って獲得せし利益は、これ真正無垢の利益というを得べし」という言葉を残している。

建設産業における「義」とは、

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未来の建設業を考える:「建設産業に求められる0.1%の良心」

未来の建設業を考える:「建設産業に求められる0.1%の良心」

グローバリゼーションのうねりの中で

 耐震偽装、介護ビジネス、牛肉偽装、すべてが拝金主義、マネー市場主義、グローバリゼーションのうねりの中で、生じた問題であろう。今の円安も、国内の低利の金を借り入れ、海外で運用する流れの中で、生じていると言われる。
 世の中が、否が応でもカネを中心に動いているという状況で、従来の社会システムが崩壊しつつあることを感じる。

NHKドラマ「ハゲタカ」の中で

 以

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未来の建設業を考える:「協調」と「競争」のある産業育成へ

未来の建設業を考える:「協調」と「競争」のある産業育成へ

「独占レント」ではなく、パートナー的位置付けとしての「関係レント」が大きく寄与

 大手ゼネコンにおける決算が発表された。殆どの会社で、利益が増加しV字回復を予想させた。喜ばしいことだ。一方、トヨタ自動車は、最終利益で、日本の製造業で過去最高となる前期比83・6%増の4兆5000億円を更新し、好調さを持続しつづけている。この増益要因について、トヨタ自動車では、原価改善1千1百億円、営業面1百億円と

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未来の建設業を考える:「古代の叡智と技術力で国を豊かに」(2024年4月9日)

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前方後円墳「仁徳天皇陵(大山陵古墳)」

 古墳は、古代日本の繁栄を支え、現代の土木建築技術にも大きな影響を与えている。その代表格が、大阪・堺市にある巨大な前方後円墳「仁徳天皇陵(大山陵古墳)」だ。
 東京ドームの約10倍の広さを持つこの巨大な陵墓は、全長480m、高さ約30mにも達する。盛土は、1平方メートルあたり50トン以上の重さに耐えられる地盤を選定する必要があり、これは現代のマンション建設

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未来の建設業を考える:「日本における地下物流網の構築」(2023年11月23日)

未来の建設業を考える:「日本における地下物流網の構築」(2023年11月23日)

日本の物流業界

 日本の物流業界は、人手不足や渋滞など、さまざまな課題を抱えている。国土交通省は、10年後を目途に、高速道路上に自動輸送で拠点間輸送を担う物流専用レーン「自動物流道路(オートフロー・ロード)」の整備を計画している。しかし、それでも都市内部の物流はトラック輸送に頼らざるを得ず、さらなる渋滞増加の懸念がある。

地下トンネルを活用

 そこで、注目すべきは、海外の事例だ。スイスやイギ

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未来の建設業を考える:「式年遷宮に見る保存」

未来の建設業を考える:「式年遷宮に見る保存」

建物保存

 建物保存について、法隆寺のように当時の建物をそのまま保存し、現在に伝える方法が一般的な考え方である。

伊勢神宮に見られるような「式年遷宮」

 一方で、日本人の知恵として、伊勢神宮に見られるような「式年遷宮」により、伝統的な弥生建築の技術や天然資源である木材という材料を伝承することで、「技術」と「材料」の保存を行う方法も、伝統的に保存の手法として実施してきている。どちらが保存にふさ

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未来の建設業を考える:「復活させよう、現場力」(2024年3月6日)

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米ボーイング社の飛行機事故と日本のダイハツ工業の不正行為

 最近、他産業で二つの重大な問題に関する報告書が提出された。米ボーイング社の飛行機事故と日本のダイハツ工業の不正行為だ。
 今年1月初旬、アラスカ航空が運航する米ボーイング小型飛行機「737MAX9」のドアパネルが、飛行中吹き飛ぶ事故が発生した。一部報道によれば、ドアパネルと胴体を固定するはずのボルトが設置されてなかっことが原因とされる。

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未来の建設業を考える:「ダイナミックな建設企業へ」(2024年02月05日)

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車載蓄電池

 いま、EV(電気自動車)の車載蓄電池において、世界的に劇的な変化が起こっていることを、みなさんご存じだろうか?

三元系リチウムイオン電池

 従来はレアメタル(希少金属)と呼ばれる、「ニッケル・マンガン・コバルト」の3つの希少金属を蓄電池の正極に使う「三元系リチウムイオン電池」が主流であった。中国政府もレアメタル独占のため、アフリカなど世界各国の市場を飛び回っている、というニュー

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未来の建設業を考える:「水力発電」(2023年11月1日)

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機械学習

 AI(人工知能)時代を制すためには、膨大な量のデータを活用した機械学習やデータ分析が必要とされる。科学技術振興機構によれば、世界のIPトラフィック(一定時間内のデータ流通量)は2030年には現在の30倍以上、2050年には4,000倍にも達すると予想される。これに比例して、2030年には現在の年間使用電力量の倍近い電力が必要となる。

AI時代に必要な電力量

 大量のデータを処理す

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未来の建設業を考える:「AI・AGI・ASI時代とは」(2023年10月13日)

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AIが人間の10倍の能力を持つ時代

 ソフトバンクの孫さんは、「AIが人間の10倍の能力を持つ時代「AGI(Artificial General Intelligence=自ら学習し、応用処理なども行う人間に近い人工知能)時代」が10年以内に来る」と言う。10倍の知恵の差とは、サルと人間のニューロン(脳の神経細胞)数の差と同じそうだ。さらに10年後、今から20年後には、AIが人間の持つ能力の1万

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未来の建設業を考える:「発注者の役割と責任」(2023年10年02日)

未来の建設業を考える:「発注者の役割と責任」(2023年10年02日)

日立市役所庁舎が電源喪失

 この夏は日本近海で台風が発生するなど、地球温暖化を暑さや大雨で感じる。このような環境変化のなか、9月の台風13号による記録的大雨の影響により、2019年に防災拠点として新築された日立市役所庁舎が電源喪失し、防災拠点としての機能を失う事態が発生した。市役所近くの平沢川と数沢川の合流部となる市役所下部の暗渠が氾濫し、駐車場のスロープから地下階へ流れ、設置した電源機器が浸水

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